「若い世代にも和菓子を愛してもらいたい」と考案

愛知県瀬戸市にSNSで話題のかわいい和菓子がある。クリクリとした大きな目のパンダにコアラ…。思わず笑顔になるこの和菓子を生み出すのは、伝統を守りつつ新たな作風で和菓子業界を引っ張る若き3代目の職人だ。

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瀬戸市にある創業50年の和菓子店「和菓子処 三好屋老泉(みよしやおいずみ)」。店頭には季節の上生菓子や土産に最適な焼き菓子などが並び、地元のお客さんを中心に長年愛されてきた。

この店で今話題の和菓子が、見ているだけで愛おしくなる「アニマル生菓子」(480円 要予約)。

女性客A:
和菓子だと思えないくらい可愛くて、目が合った瞬間ハートを奪われました

女性客B:
和菓子というとちょっと固い感じイメージですけど、可愛いな、キュンってなるなと思いました

かわいらしい見た目は、若い人たちを中心にSNSでも話題になっている。この菓子を作るのは、店の3代目、老泉翔太さん(30)だ。

史上最年少で「優秀和菓子職」に認定され、国家資格である一級技能士の資格を持つなど、和菓子業界で期待のホープとして注目されている。

老泉翔太さん:
幼い頃から和菓子が身近にあったので、お菓子でたくさんの人に喜んでもらいたいと思って

若い世代にも和菓子を愛してもらいたい。翔太さんは、和菓子を単なる商品でなく個性光る“作品”として、アニマル生菓子を考案した。

寒天で動物たちの目をキラキラに…可愛らしさを強調

繊細なアニマル生菓子。ベースには、生菓子の基本といわれる白あんやイモ、砂糖を混ぜた“練り切り”を使用する。

そこに、ようかんを煮溶かしたもので目や顔のラインを入れていく。より可愛らしくするために、赤いほっぺを強調。さらに…。

老泉翔太さん:
金玉(きんぎょく)という、寒天に砂糖を加えて煮詰めたもの。これを羊かんの目に塗ってあげて、目のキラキラ感が生まれる…

寒天を塗り目に輝きを…。このひと手間が、かわいらしさを際立たせる技だ。

作った人の顔が見える和菓子を作りたい。老舗店で修業後26歳で家業を継ぐ

この「アニマル生菓子」について、2代目の父はどう思っているのか。

2代目・老泉弘さん:
僕たちの時とは違った感性とか、修業先で習ってきたことも取り入れて、新しいことをやろうとするのはよくわかる。なかなか理解できないときもあるけども…

和菓子店の長男として1991年に生まれた翔太さんは、製菓学校を卒業後に広島・滋賀を代表する老舗「たねや」で修業。26歳で実家に戻り、現在は祖母、父と3世代で和菓子を作っている。作った人の顔が見える和菓子が作りたいという翔太さんに、初代の祖父は…。

初代・老泉恵さん:
私たちとは全然時代が違うもんでね。私は何で始めたか、和菓子が好きとかじゃなくて、生活をせにゃいかんということで必死でやってきたもので…

この夏、翔太さんは約10年交際していた、修業先の広島で出会った彼女と結婚。8月から瀬戸で同居を始めたばかり。奥さまの実家も、7代続く老舗の造り酒屋ということで…。

妻・老泉沙央里さん:
ずっと父が頑張っている姿や弟が実家を継ぐ姿を見てきて、すごく尊敬できるし私も支えていきたいなと思ったので、愛知に来ました

学校などで和菓子作り教室を開催「魅力を知ってほしい」

この日、翔太さんは和菓子作り教室のために名古屋市内の老人ホームを訪れていた。翔太さんは、学校や地域の集まりなどに積極的に足を運び、和菓子の魅力を伝える活動を行っている。

参加者の女性A:
おいしかったです。改めて和菓子のおいしさが分かりました

参加者の女性B:
頑張ってちょうだいね。大変な仕事。本当に、食べるのがもったいないぐらい

老泉翔太さん:
和菓子をより多くの方に楽しんでいただけたら…。こういう活動から徐々に広がっていったらなと思います

和菓子職人を憧れの職業に…オリジナル作品を作り続ける

翔太さんは、ハロウィーンに向けての新作を開発していた。

2020年のハロウィーンでは、カボチャ型のクマが大好評を得た。2021年はそれを超えるような可愛い商品を構想中…。完成図もなく作り始めた。

老泉翔太さん:
最初の頃はイラストに書いていたけど、書いているうちにアイデアが逃げてしまうような気がして…。作りながら形にしていく方がいいんじゃないかなと思ったので

練り切りを円柱型にしたら、もう1つ別に薄い丸型を作ってその上に被せる。ローブをかぶったお化けのクマさんだ。しかし、まだ満足できる仕上がりではないようで…。

老泉翔太さん:
布をもっとヒラヒラとさせるか、あとはハロウィーンなので魔女の帽子みたいなものを付けたりとか…

あっと言わせるような作品を…。納得いくまで翔太さんの試行錯誤は続いた。

老泉翔太さん:
どうしても和菓子は、洋菓子に比べると地味な感じになってしまうので…。和菓子職人ってすごいな、かっこいいなという風にしていきたい

「和菓子職人を、若者が憧れるような職業に」。翔太さんは、自分にしか作れないオリジナルの和菓子で業界を引っ張っている。

(東海テレビ)

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