山口県下関市にある水産加工会社。フグの「身欠き」を得意としているが、新型コロナの影響で売り上げが急減。売れ残った10トンもの在庫を抱える中で、事業者のための支援サイトへの出品をきっかけに新たなサービスを生み出した。

相次ぐ飲食店の休業で売り上げ70%減

「冬の味覚の王様」と言われるトラフグ。

 
 
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淡泊なように見えて実はずっしりとした底味、口の中に広がる上品なうま味が魅力だ。

「冬の味覚の王様」トラフグの刺身
「冬の味覚の王様」トラフグの刺身

下関市にある水産加工会社「ふく衛門」は、フグの「身欠き」を得意とする会社だ。

身欠きはフグの有毒な部分を取り除く作業で、工場では熟練の職人が慣れた手つきで次から次にフグをさばいていく。

熟練の職人がさばく
熟練の職人がさばく

加工したフグは主に料亭に卸しているが、新型コロナの影響が長期化し売り上げは急減した。

「ふく衛門」松井大輔社長:
(パソコン画面を見ながら)ここの赤いところですね、一気に70%減までなってるんですよね。2カ月間ほど70%減が続いて、本当に会社として厳しい状態

 
 

さらに問題は、売れ残った在庫の山。

フグの旬は冬から春。同じ時期に襲ってきた新型コロナの感染拡大で飲食店が相次いで休業し、倉庫には約10トンの身欠きが行き場を失っていた。

「ふく衛門」松井大輔社長:
自分たちが作たものが、全く出ていかなくて冷蔵庫の中に山積みになっている姿を見ると、すごく辛い気持ちというか、しんどい気持ちになりますよね

職人が目利きした旬の魚が、調理レシピつきで届く

そんな中で見つけたのが、在庫を抱える事業者の支援サイトだった。

在庫を抱える事業者の支援サイト「WakeAi」
在庫を抱える事業者の支援サイト「WakeAi」

思いつくまま調理動画付きでフグを出品すると…。

「ふく衛門」松井大輔社長:
たった1日で1トン以上の在庫が売れたんです。私たちはそのことにも驚いたんですけど、それ以上に驚いたのが、お客さんが「トラフグ食べたの初めてです」とか「自分でトラフグの刺身を引いたのが初めてで、すごく感動しました」といった声をSNSにどんどんアップしてくれて

この時、初めて消費者の声を聞いた松井社長は、より分かりやすい形で商品を提供できないかと新たなサービスを生み出した。その名も「サカナDIY」だ。

3~4種類の魚介類が2人分入って5400円(送料込み)
3~4種類の魚介類が2人分入って5400円(送料込み)

「ふく衛門」松井大輔社長:
私たちは普段からずっとフグだったり、魚を見てますから。その目利きをして、よりいい魚の下処理だけをして

「サカナDIY」の特徴は、専門の職人が選んだ旬の魚を味わえるところ。下処理を終えた3~4種類の魚介類が2人分入って、送料込みで5400円。

これが毎月、家庭に届く。

「ふく衛門」松井大輔社長:
何月にはこの魚をこの料理方法で食べてほしい、というのがあって。そういったものを自分たちの中で考えて、調理レシピをつけて、楽しみながら料理できるようなものを作ったら、お客さんが喜んでくれるんじゃないかと思って出来たのが、この「サカナDIY」です

解凍して切るだけ・煮るだけの簡単料理

本当に簡単にできるのか?スタッフが試してみた。

10月の“推し魚”は、ノドグロ、タチウオ、シイラ、キツネガレイ。まずは「タチウオのあぶり刺身」に挑戦。

10月の旬はノドグロ、タチウオ、シイラ、キツネガレイ
10月の旬はノドグロ、タチウオ、シイラ、キツネガレイ

一緒に入ったレシピには、調理法の動画を視聴できるQRコードが付いている。

小川ひとみリポーター:
QRコードを読み込んだので、動画を見ながら調理していきます

まずは、水を溜めたボウルにタチウオを5分浸して解凍。そして、約1cm幅に切って盛り付けるだけ。実に簡単だ。

小川ひとみリポーター:
完成しました~タチウオのあぶり刺身!下処理の段階で先にあぶられているので、切るだけであっという間にできちゃいました

解凍して切って盛り付けただけ!
解凍して切って盛り付けただけ!

続いては「ノドグロの煮つけ」。袋の中に大きなノドグロの身と一緒に入っていたのは…。

小川ひとみリポーター:
調味料が合わさった煮汁が入っています。あとは煮つけるだけ、ということですね

セットの中には無添加の調味料を合わせた煮汁が添えられている。まずは鍋に煮汁と水、ノドグロを入れ点火。

小川ひとみリポーター:
落とし蓋をしてあとは待つだけです。簡単!

12分間煮たあとで魚を取り出す。煮汁を3分間煮詰め、魚にかけたら出来上がり。ふっくらとして、しっかり脂がのったノドグロの煮つけが完成した。

鍋で煮汁と煮るだけ 絶品の煮付けが完成
鍋で煮汁と煮るだけ 絶品の煮付けが完成

小川ひとみリポーター:
しっかりお魚に煮汁の味が染込んでます。短時間で作ったとは思えませんね

続いて、タチウオの炙り刺身のお味の方は…?

さてお味は? 小川ひとみリポーター
さてお味は? 小川ひとみリポーター

小川ひとみリポーター:
プリップリですね!全然、臭みがないんですよ。冷凍してあったとは思えないです

この他にも「キツネガレイの唐揚げ」や「シイラのムニエル」を含め、合わせて4品、全て30分以内で調理ができた。

「ふく衛門」松井大輔社長:
「サカナDIY」は家の料理時間やおうち時間を、サカナを食べて感動してもらったり、ワクワクする時間に変えていく。今、なかなか思い切って外食できない方もたくさんいると思いますので、そういった人たちに食べて頂きたいなと思っています

ネット販売でつながった消費者の声に耳を傾け生まれた新たな事業。コロナ禍の先を見据えた企業の「転換力」が注目されている。

(テレビ西日本)

テレビ西日本
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