静岡の温泉・サウナ紹介を始めて3年目

伊豆半島や熱海を始め、魅力ある温泉地が多くある静岡県。
テレビ静岡の夕方の情報番組では様々な温泉やサウナを紹介しているが、私はコーナーを担当するまで、温泉に入ることはあってもサウナとは無縁の生活だった。
それが多いときには週に3~4日サウナに通うサウナ好きの1人になった。

近年のブームでサウナ愛好家=サウナ―が増えているが、アナウンサーの私が“アナサウナ―”になったきっかけは聖地との出会いだった。

サウナの“聖地”で強烈な洗礼

2017年1月。アナウンサーになってから初めての冬。
番組のロケで静岡市駿河区にある「サウナしきじ」に初めて伺った。

サウナ界の「聖地」と呼ばれる静岡市駿河区の「しきじ」 
サウナ界の「聖地」と呼ばれる静岡市駿河区の「しきじ」 
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しきじはサウナ界で「聖地」と呼ばれていて、全国に多くのファンがいる。
高温の「フィンランドサウナ」と、薬草の香りが楽しめる「薬草サウナ」の2種類があり、私は室温が110℃ほどのフィンランドサウナを体験した。

約110℃のフィンランドサウナの高温に打ちのめされる
約110℃のフィンランドサウナの高温に打ちのめされる

初めて入ったときは「この熱さに耐えるのか...」と思ってしまったほど。
感じたことのない温度に、水風呂へダイブした。

水風呂には“滝”も ※撮影のため許可をもらいタオルを使用しています
水風呂には“滝”も ※撮影のため許可をもらいタオルを使用しています

ところが水風呂もほとんど経験がなかったので、水温18℃の冷たさに慣れず、「これが聖地...熱すぎるし冷たすぎる...」というのが初めての感想だった。

慣れたらもっと気持ちよくなれるのだろうか。

聖地の魅力に溺れたい…2回目の挑戦

今度こそ「聖地」の魅力を感じたいと思い、2回目はサウナが大好きな友人と2人で訪れた。さっそく110℃のフィンランドサウナへ。

「変わらず熱い。なんて熱さだ...ケロッとしている皆さんは一体何者なんだ」

そんなことを思いながら8分間。全身からは大量の汗が噴き出して、体が“水”を求めている。
前回は味わえなかった感覚だ。

「とにかく少しでも早く水風呂に入って体を冷やしたい」

しきじの水風呂は”奇跡の水”
しきじの水風呂は”奇跡の水”

前回は冷たすぎると感じた水風呂へ。待っていたのは初めての感覚だった。

「程よく冷たい水に全身が包まれて格別に心地いい。まるで水と体が1つになっているような感覚だ。ゆっくり呼吸をすると、冷たい空気が肺の奥まで入っていく。体の外側も内側もゆっくりと冷やされる。これがしきじの水風呂...なんて気持ちよさだ...」

2度目の水風呂で水と体が一体になる感覚を味わう ※撮影のためタオルを使用しています
2度目の水風呂で水と体が一体になる感覚を味わう ※撮影のためタオルを使用しています

“奇跡の水”たるゆえんは水質にあり

私をサウナのとりこにした「水」。
聖地しきじでは、施設内でくみ上げた安倍川水系の天然水を使用している。
少しでも場所が変わると水質が変化するため、1987年に「高松サウナ」として創業した当時から同じ場所で営業している。

まず注目したいのは「PH値」と「液性」。
しきじの水は健康な人の体と同じ弱アルカリ性で、温泉で言うと刺激が少なく肌に優しい「美肌の湯」だ。PH値は人の体に近い7.7。

つまりしきじの水は人肌と、とても相性がいい。

さらにミネラル分がバランスよく含まれ、中でも豊富なのがカルシウム。
市販のミネラルウォーターの約2.5~4倍の数値だ。
18℃という絶妙な水温に加えて、肌触りがやわらかい要因の1つではないかといわれている。

さらに、ぜいたくにかけ流していて、常にきれいな水を堪能できるのも大きい。
まさに、しきじにしかない“奇跡の水”だ。

サウナと水風呂を満喫した後は、天然水を使用した料理も堪能できる
サウナと水風呂を満喫した後は、天然水を使用した料理も堪能できる

日本屈指の恵みここにあり “富士山の伏流水”

富士山を仰ぎ見る、静岡・富士宮市。

静岡・富士宮市から眺める富士山
静岡・富士宮市から眺める富士山

高知・四万十川、岐阜・長良川と共に、日本三大清流と呼ばれている静岡県・柿田川の水源は、“富士山の湧水”だ。
富士宮市にある「富嶽温泉・花の湯」は、まさに富士山の伏流水を全身で感じられる施設。

静岡・富士宮市にある「富嶽温泉・花の湯」
静岡・富士宮市にある「富嶽温泉・花の湯」

花の湯には麦飯石のサウナとフィンランドサウナがある。フィンランドサウナは100℃オーバーの高温で、体感温度がかなり高い。
熱したサウナストーンに水をかけて蒸気を発生させる“ロウリュ”もできる。

ログハウス風のフィンランドサウナ ロウリュもできる
ログハウス風のフィンランドサウナ ロウリュもできる

そしてしっかり温まった後、花の湯で待っている水風呂がこちら。

花の湯の水風呂は富士山の伏流水かけ流し(静岡・富士宮市)
花の湯の水風呂は富士山の伏流水かけ流し(静岡・富士宮市)

富士山の伏流水のかけ流しだ。
そんな水風呂は、一言でいうと爽快!
屋外と屋内に1つずつあり、私が行ったときは14℃前後だったが、冬には12℃ほどになるらしい。

熱された体が一瞬で引き締まる。
ただ冷たいだけでなく、肌当たりのやわらかさもある。

14~12℃の爽快な水風呂(静岡・富士宮市)
14~12℃の爽快な水風呂(静岡・富士宮市)

PHは8.6と弱アルカリ性に近く、冷たさの中にも優しさがある。
富士山の伏流水は、美味しい米や酒造りにも欠かせない静岡県にとって重要な水でもある。
日本の象徴、富士山の恵みを全身で感じられるのが、花の湯の大きな魅力だ。

山の恵みは富士山だけじゃない “南アルプスの伏流水”

長野県、山梨県、静岡県にまたがる南アルプス。
雄大な自然は美しく、多様な生態系を育んでいる。
静岡・島田市を流れる大井川の源流も、南アルプスにある。

静岡・島田市を流れる大井川の清流 
静岡・島田市を流れる大井川の清流 

その南アルプスの恵みを感じられるのが「島田蓬莱の湯」だ。
サウナは約80℃ほどで心地良い。しっかり体を温めていざ水風呂へ。
待っているのは“南アルプスの伏流水”かけ流し。
温度は17~18℃前後と入りやすく、きめ細かい泡が体を包んでくれる。

島田蓬莱の湯の水風呂は細かい泡が体を包む(静岡・島田市)
島田蓬莱の湯の水風呂は細かい泡が体を包む(静岡・島田市)

プチプチと優しくマッサージをしてくれるような感覚で、冷たすぎないので天然水のやわらかさを堪能でき、ついつい長く入っていたくなる水風呂だ。

蓬莱の湯の水は、PH6.9と中性。
また肌に優しい軟水でありながら、しきじと同じくカルシウムが多いなどミネラルが豊富だ。

水風呂に入った後は、島田市のきれいな空気で外気浴ができる。

蓬莱の湯 外気浴ができるスペース(静岡・島田市)
蓬莱の湯 外気浴ができるスペース(静岡・島田市)

静岡の水風呂が素晴らしい理由は“山”にあり

ここまで3つの施設を紹介したが、静岡にはまだまだ素晴らしいサウナと水風呂がたくさんある。

なぜ全国的にも評価が高いのか、国内外10以上の温浴施設を手掛ける温浴施設運営のプロフェッショナル、新宅亘さんに聞いた。

アクアテックジャパンの新宅亘さん 国内をはじめベトナムの日本風温浴施設オープンにも携わる
アクアテックジャパンの新宅亘さん 国内をはじめベトナムの日本風温浴施設オープンにも携わる

アクアテックジャパン・新宅亘さん:
これまで少なくても全国各地300カ所の水風呂に入ってきましたが、静岡の水は全国でもトップクラスだと感じます。とにかくどこに行っても水質がいいんです
(Q.その理由は)
一番は“山が近い”ということですね。山は降った雨や雪をきれいにしてくれるんです。いわば“天然のろ過機”。長年にわたって降った雨や雪が山でろ過され、きれいになった水を伏流水などとして私たちが頂くことができるわけです。
静岡は山が多く、各地で近くに山があるので、良質な水がいろいろなところで使えるんです

富士山を囲むように広がる市街地
富士山を囲むように広がる市街地

(Q.静岡県の水風呂は、どこも質が高いか)
そうですね。あとはその水を新鮮に保てるかがすごく大事です。水風呂の気持ちよさは、入れ替えをしっかりするなど水を新鮮に保つことで大きく変わりますから

“山が近い”からこそ、美しい水風呂に出会える。
奇跡の水は、静岡の深く高い山々の恵みだった。

【編集後記】
最初こそ慣れなかったが、水風呂が大好きになった私。温浴施設管理者向けの資格「サウナ・スパ管理士」を始め、3つの資格を取るなど、少しずつ勉強も重ねている。
今回は水に注目したが、サウナは自然の恵みを体で感じられる究極のぜいたくだと思う。
美しい天然水の水風呂、季節の風を感じながらの外気浴。その土地の水と空気を全身で満喫できるのはサウナ、水風呂ならではの喜びだ。
場所によって空気や気温が違うように、水も水質や温度はそれぞれ。その土地の個性を全身で味わえる喜びを、これからも伝えていきたい。

(テレビ静岡・松下翔太郎アナウンサー)

松下翔太郎
松下翔太郎

テレビ静岡アナウンサー