大切なのは「配慮」。障がいの有無にかかわらず分け隔てなく…「インクルーシブ遊具」にこめた公園管理者の思い。
障がいのある人もない人も分け隔てなく暮らす、「インクルーシブ社会」の実現について考える。

「みんな一緒に」遊べる遊具

富山市にある県空港スポーツ緑地。9月に設置された「インクルーシブ遊具」と呼ばれる遊具が、人気を集めている。

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インクルーシブとは、「年齢や障がいの有無に関わらず、みんな一緒に」という意味。この遊具は、自分に合った遊び方でコミュニケーションが生まれるように配慮した設計になっていて、市民の提案を受けて県が設置した。

利用していた子ども:
楽しい

利用していた大人:
いろんな子どもがいるので、それに対応した遊具があることは良いこと

利用していた大人:
障がい者も一緒に遊べるのはすごく良い

このインクルーシブ遊具の設置を県に提案した長谷川暁信さん。空港スポーツ緑地の指定管理者である造園業者、野上緑化に勤めている。

県空港スポーツ緑地・長谷川暁信所長:
インクルーシブ遊具の需要があるということ。見ていると、優しさがあふれるような広場になっている

野上緑化では、2009年から障がい者の就労支援などを行っている。現在も、県内の障がい者福祉サービス事業所に通う人に公園の除草や清掃などの軽作業をお願いするなど、長谷川さんも10年以上、障がい者の社会進出に向けた取り組みに携わってきた。

県空港スポーツ緑地・長谷川暁信所長:
障がい者だからどうこうではなく、「配慮」。遊具もそうだが、障がい者だからこの作業をお願いするではなく、この作業を障がい者ならどうしたらできるか、配慮することが大事

障がいを抱えていても利用しやすい

この日、遊具を利用していた荒城恵良君。重度の知的障がいと自閉症を抱えている。恵良君は、特別支援学校ではなく、地元の小学校の特別支援学級に通っている。

障がいを抱えながらも、住み慣れた地域で生きていってほしいという母・和恵さんの願いから。和恵さんは、恵良君がこの地域で暮らしていることを知ってもらいたいと、小さい頃から近くの公園に何度も足を運んでいた。

恵良君の母・荒城和恵さん:
公園に連れてきては、家に帰ってがっかりみたいな。疲れとがっかり。周りにすごく迷惑をかけた

インクルーシブ遊具は、恵良君のように障がいを抱えている子どもやその親が利用しやすいと話す。

恵良君の母・荒城和恵さん:
障がいのある人もない人も一緒に過ごすことで、お互いを学び合うというと難しくなるが、遊びの場で自然に受け入れるようになると、すごく良いと思う

恵良君の母・荒城和恵さん:
いま、一般的な公園に行くと驚かれたり、迷惑かけてしまうとなると行きにくかったり、人のいる時間を避けて行ったり。
インクルーシブって書いてあることで、ちょっと頑張って順番待ちさせてみようかなって。本当に配慮されている。この遊具が定着してくれたら良い

常設を求める多数の声

インクルーシブ社会の実現へ、遊具がもたらすインクルーシブとは。

富山福祉短期大学・鷹西恒教授:
大事なのは、障がいの子どもが来た場面で、こっちは危ないからこっちに乗ったらどうだと、そこにいる子どもがアドバイスするようになったとき、「初めてインクルーシブ的な考え方が社会に浸透する瞬間」。そういう場面を、あの遊具はつくれる

しかし、この遊具は県が試験的に設置したもので、10月末には撤去される。
長谷川さんは現在、遊具の必要性などについて利用者にアンケートを実施。遊具の常設を求める声が多く寄せられている。

アンケートは1カ月で約300枚に…

アンケート内容
・きょうだいで遊べて、いい思い出が出来ました
・このまま、この遊具を設置してほしい
・周囲の方の目線がとても優しく、見守るこちらも優しい目線でみられました

県空港スポーツ緑地・長谷川暁信所長:
地域共生とか多様性、ノーマライゼーションとかいろんな言葉があふれているが、理想と現実がある

長谷川さんにインタビューしている伊藤アナウンサー

県空港スポーツ緑地・長谷川暁信所長:
強制するべきでもないし、ただどこかの場所でいろんな人が交流したり、共生を体感できる場所があってもいい。それがどの場所かというと、「誰もが平等に利用できる公共施設」だからこそ、インクルーシブは進めるべき

公園には富山市外からも多くの人が訪れ、アンケートによると3割ほどが障がいや特性を抱えた子どもたちやその家族だという。
長谷川さんは今後、この公園全体を子どもだけでなく、誰もが分け隔てなく利用できるインクルーシブパーク化を目指し、取り組んでいきたいとしている。

【取材後記】
当たり前に思っていた“普通”。それが当たり前ではないこと…私が父親になって6年。見る世界は大きく変わりました。

少子化が進む中、医学の進歩などもあり、子どもたちの定期健診で発達に特性を抱えた子どもたちが目立つようになってきていることを目の当たりにしました。

これまで「個性的な子」でいた子どもが、「障がい」という診断を受ける。共生社会、インクルーシブ、多様性、調和・理想像は描けても、障がいや特性を受け入れにくい社会の現実があります。

我が子が見る社会が、取材に応じてくださった子どもたちの未来が、少しでも理解が進んだ社会となるための一助になれば…。
まずは「知る」ことから。
娘と出会い、それが報道に携わる私のライフワークのひとつとなりました。

(富山テレビ・伊藤恵祐アナウンサー)