沖縄県では、新型コロナウイルスの第5波で自宅療養者がピーク時に3000人を超え、家庭内感染により家族全員が自宅療養や自宅待機となるケースが相次いだ。
第5波が残した課題を取材した。

急増した家庭内感染…困難な食糧調達

沖縄本島南部に住む40代の女性は、2021年8月 夫の感染を発端にして同居する家族7人のうち6人が感染した。たまたま実家に遊びに来ていた長女の感染も判明し、1歳と4歳になる長女の子ども達にも広がるなど、最終的には家族9人の感染が確認された。

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本島南部の40代女性:
インフルエンザとは全然違うなと思って…全員症状が違います。旦那は咳・鼻水からきたんですけど、息子はすぐ高熱。娘もすぐ高熱。熱が出なくて嘔吐の子もいました

唯一陰性だった次女も濃厚接触者としてホテル待機となり、家族全員が隔離を余儀なくされる中、食料の買い出しは次女にお願いせざるを得なかった。

本島南部の40代女性
この子を出して大丈夫かっていう不安もあります。彼女にも、買い物したらすぐ帰ってきてねって。みんなちょうどコロナじゃないですか、なのでどこにもお願いできない感じでした

2021年8月、感染経路が判明した7600人余りのうち家庭内感染は約4500人と全体の6割を占め、家族間でのクラスターも相次いだ。

家庭内感染では家族全員が感染したり、陰性であっても濃厚接触者として自宅で隔離となる場合が多い。
今回の第5波では、こうした世帯が孤立し、食料の調達に苦労する現状が浮き彫りとなった。

善意の提供や寄付金で食料支援の手

急増するSOSの声を受け、多くの市町村が支援に乗り出した。このうち那覇市の社会福祉協議会では、9月16日から自宅療養者や濃厚接触者の食料支援に取り組んでいる。

那覇市社会福祉協議会 職員:
レトルトパックだったり、ラーメンだったり、中にはレンジがないご家庭があったりするので、その場合は簡単にお湯で沸かして作れるようなものですね

母子世帯の母親が感染し、小学校低学年から20歳までの子ども6人が濃厚接触者となった世帯に配達を行った。

那覇市社会福祉協議会 職員:
食料支援に関しては、やっぱり誰もお手伝いできないという制度の狭間の部分で、何か役に立てたらなと。玄関先に置いた後に電話して、必ず取ったかを確認して、見守りも兼ねてやっています

支援に必要な食料は、市民や企業の善意で提供されたものや、これまでに集まった寄付金でまかなっている。那覇市社会福祉協議会には、支援を始めてから約2週間で17件の問合せがあった。

那覇市社会福祉協議会 真栄城孝 課長:
外国から留学している方も2、3件ありました。目の不自由な方で、感染して買い物ができないという人もいました

取り組みが始まったのは、県内の感染状況が改善傾向にあった9月中旬。万が一、第6波が来た場合には、今以上に需要が高まることが予想される。

那覇市社会福祉協議会 真栄城孝 課長:
食事は生活していく上で必要なものですので、困っている方がいれば迅速に対応できるように、市民や企業にも協力のお願いをして食材を確保しながら、第6波が来た時には迅速に対応できるようにしたい

支援求めるも条件満たさず断られる…

自治体の取り組みには、まだまだ課題も残されている。
困窮世帯に食料を届ける活動を行うゴージャス理枝さんが支援する世帯には、自治体のサービスを受けられなかったケースもあった。

沖縄本島中部のある世帯では、8月に生後2か月の赤ちゃんを含む家族8人全員が感染。食料が底をつき、役場に支援のお願いをしたが、一番最初に発症した高校生の娘が隔離解除となっていたため支援対象から外れてしまった。

本島中部に住む母親:
役場から隔離解除がいる家庭にはできません、その子に買いに行かせてくださいって。
車の免許もないし、まだだるいって言っているんですけどって言っても、解除になっている人が一人でもいたら対応はできないと。じゃあ、もう外に出て買いに行っていいですかって言ったらそれはダメですって・・・

母親は隔離期間中だったが、家族の食料を確保するため買い物に行かざるを得なかった。

ゴージャス理枝さん:
支援の対象の狭さというのは、感染者の話を聞くとしみじみこんな場合は使えなかったりとか、家族全員が感染していないと使えなかったりとか、一人でも解除になったら使えないというのも、やっぱりその辺は臨機応変に食料支援ができればなと思います

支援を続けるゴージャス理枝さんのもとにも、家庭内感染で孤立する母親たちからSOSや不安を訴える声が届いている。

ゴージャス理枝さん:
コロナの第5波がすごかったので、行政もそこだけで手いっぱいというのも分からないでもないんですけど、現実にそういうお母さんたちがいるっていう事も分かっていただきたいですね。
第5波まで来たので、対策はとって第6波を迎えて欲しいなと思います

沖縄県内では感染者数が減少し、自宅療養者数も500人を切った。第5波で浮き彫りとなった課題を見つめ直し、第6波に備えていく新たな局面に入っている。

(沖縄テレビ)

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