コロナ禍の今、さまざまな業種で苦境が続いている。そんな中、愛媛県松山市の老舗写真館が低迷の打開策として飲食業を始めた。“二足のわらじ”で奮闘している。
撮影依頼が激減…写真館の3代目がカレー屋さんに
ビーチで見つけた緑色のキッチンカーからは、何やらおいしそうな匂いが漂っていた。

高橋耕治さん:
インド料理のお店になります
9月にオープンしたキッチンカー、その名も「オイC-KITCHEN」では、スパイスたっぷりのカレーに焼きたてのナンといった、本格的なインド料理がテイクアウトで楽しめる。

蝶ネクタイ姿の男性は、オーナーの高橋耕治さん(62)だ。

高橋耕治さん:
インド料理店は副業です。本業はカメラマンです
実は、高橋さんの本業はカメラマンで、松山市の中心部で大正時代から続く写真館の3代目だ。

撮影のプロフェッショナルが、なぜキッチンカーを始めたのか?ある日、高橋さんが撮影の仕事で訪れたのは、松山市内の銀行だった。
高橋耕治さん:
定年退職の方の表彰式のお写真を撮らせていただきます
3密を避ける感染対策のため、結婚式や入学式など大勢の人が集まるイベントが相次いで中止になり、高橋さんの仕事は激減。撮影の依頼は、例年の3割程度しかないという。

高橋耕治さん:
半年もすれば収まると思っていましたけど、どんどん深刻化していく。ちょっと普通じゃないなと
キッチンカーにはソーラーパネルを搭載
先行きが見えないカメラマンの仕事。そこで目を付けたのは、飲食業だった。
高橋耕治さん:
写真は撮影しなくても生きていけるけど、食べることは何か口に入れないと生きていけない。一番の基本に戻ろうと飲食にチャレンジしました
高橋さんは2021年に入り、伊予市の道の駅にカフェをオープンさせ、コロナ禍に「カメラマン」と「飲食業」の二足のわらじで立ち向かおうと考えた。

そんな高橋さんの新しいチャレンジが、9月にスタートした「オイC-KITCHEN」だ。軽トラックがベースのキッチンカーで、荷台を調理スペースに改造した。

高橋耕治さん:
ソーラーパネルを屋根に置いて、エネルギーをまかなっています
ソーラーパネルでフル充電すると、車内の冷蔵庫や照明の約3日分の電力をカバーできるという。出張先で電気が確保できない場合も想定したエコな仕様となっている。

高橋耕治さん:
キッチンカーを持つということは、どこでも出張ができる。できたての一番おいしいものを提供できると考えています。皆さん、いろんなことをキッチンカーでなさってるんですけど、ほかの方がしていないことにチャレンジしようと思い、インド料理を考えました
プロが作る本格的な味 「ナンバーガー」も登場
高橋さんのこだわりは、ほかにもある。
高橋耕治さん:
これはタンドール、ナンを焼く窯です
素焼きの窯の「タンドール」。炭を燃やして窯を熱し、その余熱でナンや肉を焼き上げる仕組みで、インドで作られたものを取り寄せた。

高橋耕治さん:
タンドリーチキンやナンを焼くキランです。ネパール出身のインド料理の職人です

タンドールを扱うのは、インド料理のプロ。キッチンカーでも店と同じように、本格的な味を楽しんでもらおうというわけだ。
炭焼きのナンと一緒に味わいたいのがチキンカレー。ターメリックやクミンなどのスパイスが入り、ほどよい辛さが食欲を刺激する。もちもち食感のナンと相性抜群だ。

キッチンカーの客:
すごく歯ごたえが良いです。あまりカレーも辛くないので食べやすい
「ナンバーガー」は、タンドリーで焼き上げたチキンとシャキシャキのレタスをナンで包んだ一品。

キッチンカーの客:
おいしいです。温かいので
キッチンカーの客:
食べやすくておいしい
キャリア20年超のカメラマンも調理に挑戦
キッチンカーの運営には、写真館のスタッフも関わっている。
中戸晴美さん:
高橋写真館の中戸と申します。普段はカメラマンもやっております
中戸晴美さんも、本業はキャリア20年を超えるカメラマンだ。

中戸晴美さん:
率直な感想は、すごく楽しいです
中戸さんが調理を担当するのは「チャオミン」だ。酢やケチャップなどで味付けした焼きそばで、ネパールやインドなどではポピュラーな料理だという。

キッチンカーの客:
おいしい。ピリ辛で、ナポリタンに近いですね
中戸晴美さん:
カメラもそうなんですけど、飲食業もお客さまと接することができる。実際に作ったものを食べていただいて、おいしいと思ってもらえるのがうれしいです

カメラマンと飲食業、職種は違っても原点にあるのはお客さんの喜び。コロナ禍をきっかけに履いた新しい“わらじ”は、これからも増えそうな勢いだ。

高橋耕治さん:
まだまだチャレンジしていないことが、山ほどあります。それをひとつひとつ見つけていって、チャレンジしていきたい
(テレビ愛媛)