社会課題をIT活用して解決

皆さんは「シビックテック」という言葉をご存じだろうか。
これは「市民」と「テクノロジー」を掛け合わせた造語だが、様々な社会の課題を市民がITを活用して解決していこうというのものだ。
例えば、沖縄県の新型コロナ感染者数や警戒レベルの判断指標などの情報を知りたいという人のために、県内の有志がコロナ対策サイトを2020年に立ち上げた。

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そして今 このシビックテックを、市民がより政治を身近に感じることが出来るよう実践する動きもある。

自らアプリ制作して議会の情報発信

沖縄・南風原町に住む玉城陽平さんが、あるアプリを制作した。

玉城陽平さん:
南風原町の議会に関するアプリなんですけど、そもそもどういう人たちがいるのかとか、それから議会でどういった議論がされているか

アプリでは、南風原町議会での質問内容やその回数を元に、それぞれの議員がどの分野に力を入れているのか一目で分かるようになっていて、議会での具体的なやりとりも確認することができる。

普段は予備校の講師として働く玉城さん。教育に関連する行政の働きについて調べ始めたところ、ある課題に気付いた。

左)予備校で教える玉城陽平さん

玉城陽平さん
色んな所に情報が散らばっていて、探しにくかった、せっかく自分が調べていくんだったら、まとめて分かりやすい形で住民に共有することができたらと思いました

玉城さんは役場の議会広報とホームページに点在する情報を、より分かりやすい形で情報発信できると思い、プログラミングの専門知識が無くても、アプリを制作できるツールを使って自ら実践した。

南風原町に住む方に実際に試してもらうと…

沖縄テレビ・稲嶺羊輔アナウンサー:
関心があるのは?

南風原町民:
やっぱり学校教育かな

沖縄テレビ・稲嶺羊輔アナウンサー:
使いやすさは?

南風原町民:
スマホで何でもチェックしますし、病院の予約とかも済ませるので、こっちの方が便利で見やすいかなと思います

玉城陽平さん:
あまり普段関心が無い人でも、このアプリを見れば、だいたい自分がどういう議員と考えが近くて、どういう人を応援すれば良いのか、とにかくすぐ分かるというのが一番の目標です。
今後、他の市町村の有志に呼びかけて、この取り組みを全県的なものへと繋げたい

選挙ポスターの詳細位置のマップ公開

次に、沖縄県内のIT企業に務める大田小波さん(26)。

2021年7月に行われた那覇市議会議員選挙の際に、選挙ポスターの掲示板の詳細な位置を記したマップを公開して話題になった。

大田小波さん:
陣営の方々自らがポスターを張りに行くと聞いて、新人の人たちは経験不足で、それをするのにものすごい時間がかかるので、市民と多く対話をする時間を設けたり、有意義なことに時間を使ってもらった方が良いんじゃないかと思いました

実際にマップを活用するのは選挙対策の関係者などに限られるが、候補者が有権者に考えを伝える機会が増えれば、結果的に有権者にメリットがあると考えたのだ。

大田小波さん:
始める前は全然政治とかも固そうなので興味も無かったんですけど、地域の課題事体を市民が考えるということで、より政治が身近に感じるのではないかなと思っています

課題解決の取り組みには行政のオープンデータ必要

続いては、県内で様々なシビックテックの活動に関わる石垣綾音さん。

市民がより能動的に課題解決に取り組むために必要なのが、行政機関による情報の公開だ。

石垣綾音さん:
オープンデータですね。行政がデータをオープンにしていない限りは非常に動きづらいので

オープンデータとは、行政機関が保有し広く利用が許可されているデータのことで、玉城さんと大田さんもこのオープンデータを利用している。

そのほかの分野でも、観光では公衆無線LANの位置、防災ではAEDが設置されたコンビニの住所など、その内容は多岐に渡る。

政府が2021年9月にデジタル庁を新設したのに合わせ、沖縄県もデジタル技術の活用を推し進めるDX推進本部を発足させていて、行政サービスが大きく変化する可能性もある。

2021年9月6日 沖縄県・玉城知事

石垣綾音さん:
行政の役割とか市民の役割とか区切るのではなくて、一緒にやればもっと色んなことが出来るよねという一つのツールとしてシビックテックとか、テクノロジーを一緒に使っていければと思います

行政が提供するサービスを享受するだけでなく、シビックテックによって生まれる「ともに考え、ともにつくる」という新たな関係性が、今後社会をどう変えていくのか注目される。

取材後記:
シビックテックは、今回ご紹介したような市民の政治参加に繋がるものだけでなく、2021年7月に静岡・熱海市伊豆山で土石流が発生した際、有志が地形のオープンデータを活用して、その日のうちに被害状況の把握が行われるなど、活用の幅は多岐にわたります。
取材を通して感じたことは、「より良い街づくりのために自らのスキルを活かしたい」と考えている人が多くいるということです。

プログラミングの知識が無くてもアプリを制作できるツールなども登場している今、誰もが地域の課題解決に向けたキーパーソンになり得るという点で、シビックテックには大きな可能性を感じます。
那覇市では今後、シビックテックに関心のある市民向けのワークショップを開催したり、実際にアイデアを募って市政運営に生かそうとする動きも出てきています。このように行政と市民が地域の課題について共に考え、解決していこうという開かれた環境づくりが、今後重要になってくるのではないでしょうか。

(沖縄テレビアナウンサー 稲嶺羊輔)