日本最大の暴力団・山口組の抗争が、激しくなっている。抗争では、住宅街でマシンガンが乱射されるなど、一般の市民も危険にさらされ、名古屋も抗争の舞台となる恐れが増している。

山口組の年末恒例行事「餅つき」に異変

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年の瀬の12月8日、名古屋市南区にある山口組の傘下組織・「高山組」の事務所。

行われていたのは、年末の恒例行事「餅つき」だ。

全国から山口組の最高幹部らが集結した。

山口組「弘道会」の竹内照明組長
山口組「弘道会」の竹内照明組長

この餅つき、例年と決定的に違う点があった。山口組の最高幹部が集まるこの行事、これまでは総本部を構える神戸市で開かれていた。

しかし「抗争状態」であるとして、警察から総本部などの使用を禁止する命令が出されていたため、名古屋にその舞台が移された。

山口組のトップ・司忍こと篠田建市組長。

名古屋市中村区にある「弘道会」の出身であることから、名古屋が実質的な本拠地となっている。

激化する山口組の対立抗争…引き金は「弘道会」

2015年の山口組分裂も、引き金となったのは「弘道会」だった。

篠田組長が、ナンバー2に弘道会出身の高山清司若頭を就任させるなど、人事を掌握。この「弘道会体制」に不満を持った神戸市が拠点の「山健組」などが分裂し、「神戸山口組」を結成した。

止まぬ銃声…繰り返される報復

分裂以降、衝突を繰り返してきた2つの組織。この数ヶ月で抗争の激しさ、そして頻度が増している。

2019年4月、神戸市で神戸山口組「山健組」の最高幹部が包丁で刺され大けがをし、山口組系の組員2人が逮捕された。

そして、その4か月後の8月には、神戸市内で山口組傘下の組員(51)が拳銃で撃たれ、一時意識不明の重体に。殺人未遂の疑いで山健組の組長が逮捕された。

さらにその2ヵ月後の10月には、山口組側が報復。神戸山口組系の組員を銃撃。2人を殺害したとして逮捕者が出た事件も起きた。

ジャーナリストが語る抗争激化の背景は「高山若頭=六代目山口組」

山口組を長年取材してきた、ジャーナリストの鈴木智彦さん。抗争激化の背景には「1人の男の存在」が大きく影響しているという。

暴力団業界に詳しいジャーナリストの鈴木智彦さん:
高山若頭がイコール山口組なんだという、六代目山口組ですよね

山口組のナンバー2・高山清司若頭(72)。2019年10月、6年の刑期を終え、東京の刑務所を出所した。

暴力団関係者によると、高山若頭は分裂抗争について、かねてから「山口組を一本化する」と話していたという。

高山若頭は出所後、中核組織である「弘道会」のナンバー2に、武闘派として知られる傘下組織の野内正博組長を昇進させるなど、神戸山口組に対して強い姿勢で臨むよう指示しているという。

そして、出所から1か月後の2019年11月、兵庫県尼崎市で、神戸山口組の幹部が銃撃され即死。犯行に使用されたのはアメリカ軍で使われている自動小銃で、30発近くも発射されたとみられている。

現場は住宅街にある中華料理店の目の前で、市民が多く行き交う夕方の犯行だった。

暴力団の抗争に巻き込まれる市民…過去には死者も

山口組の抗争をめぐっては1997年、神戸市で当時の若頭が射殺された事件で、流れ弾が当たり、一般市民の男性が犠牲になった。

かつては名古屋でも対立抗争があった。1985年、守山区のゴルフ場で組員2人が銃撃。

翌1986年には、千種区のファミリーレストランが抗争の舞台となるなど事件が相次ぎ、街は不安に包まれた。

市民が巻き添えとなった対立抗争の舞台が名古屋となる恐れがあるのは、今回も例外ではない。

「餅つき」から3日後にも名古屋に集まった山口組幹部…愛知県警も取り締まりを強化

12月11日にも、名古屋市内の組事務所に集結した高山若頭をはじめ山口組の幹部。神戸山口組側は幹部が訪れる名古屋に偵察部隊を送り、“チャンス”を伺っているという。

ジャーナリストの鈴木智彦さん:
ヒットマンは、偵察だったら何回も名古屋に来ているはずです。名古屋を舞台にしたいんですよ。ヒットマンは走って回ってターゲットを探して、必ずここだという場所を決める。そうなると住宅街にある愛人宅ですよね。若しくは他団体の抗争で多かったのが病院ですね。彼らの独善的な論理では、流れ弾が当たりにくいということだと思いますね

市民への影響が懸念される対立抗争は1月7日、新たな局面を迎えた。

愛知県公安委員会などが、「山口組」と「神戸山口組」を暴力団の活動に強い制約を課すことができる「特定抗争指定暴力団」に指定。

決められた警戒区域内で組員が5人以上で集まったり、組事務所を使ったりすることも禁止され、違反した場合には逮捕される。

特定抗争指定区域となったのは、兵庫県神戸市や名古屋市など関西から東海地方にかけての8か所。

愛知県警 後藤和宏本部長:
弘道会などの取り締まりを一層強化し、暴力団の活動基盤に大打撃を与える

警察の威信をかけた対策「特定抗争指定」は、対立抗争を終結に導くことはできるのだろうか。

ジャーナリストの鈴木智彦さん:
特定抗争指定されたらこんなに大変で、だったら(組が)つぶれるよりはいいよねということで、どこかで折衷案を出してくるのだと思うんですよね。(山口組側は)特定抗争になってからが勝負と思っているはず。特定抗争だろうが最後まで戦うということになれば、これはもう新しいステージに入ったということで、どうなるか分からないです

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