東京オリンピックに続き、パラリンピックで活躍したメダリストの限定切手の販売が27日スタートした。この切手は、選手のメダル獲得の2日後に発売されるものだ。作成の舞台裏を特別に取材させてもらった。
普段は誰もいない部屋に明かりが…
26日午後7時、都内のとある郵便局。営業はかなり前に終了し、ふだんなら誰もいない部屋に明かりがついている。ドアに「関係者以外出入禁止」との貼り紙があるこの部屋、実は「切手製造作業場」なのだ。

キーボードをたたく音が響くなか、スタッフの目の先にあるのは、100メートル背泳ぎで日本選手団第1号のメダルを獲得した山田美幸選手(14)の写真だ。

スピード作成のための「特命チーム」
結成されているのは、メダリスト切手作成のための“特命チーム”。
パラリンピックでの作業は25日の山田美幸選手の表彰式からスタートし、翌26日午前にはデザインを決めたうえで、午後にはJPC=国際パラリンピック委員会や日本水泳連盟など、関係団体への確認を済ませた。その日の午後7時頃には画像の最終チェックを行うというスピード作業だ。
「順調なペースで進めています」と話すスタッフ。
確認後OKなら、パソコン画面に「校了」のマークが押されると、画像データが印刷機に送られる。ほどなく、印刷された山田選手の切手シートが次々とでてきた。

通常の切手は、印刷所で作られるが、メダル獲得の2日後に発売となるメダリスト切手は、特殊な印刷機があり、専門のスタッフが集まれるこの郵便局が、作成の場所となっている。切手をデザインし、すでにある84円切手専用の用紙に、選手の写真を印刷するという特殊作業に、約20人が交代で対応している。

この日の作業について「24時すぎまでかかりそうだ」と話す日本郵便切手・葉書室の足立修一課長。「皆さんの感動を切手でお届けできるよう、頑張ります」と力を込めた。

“メダルラッシュ“にも一晩で対応
このメダリスト切手は、2016年のリオデジャネイロ五輪の金メダリストの切手から始まり、2018年平昌五輪からすべてのメダリストを切手にするという現在の形に。

今年の東京オリンピックではすでに58種類の切手が販売されていて、中でも水谷隼選手と伊藤美誠選手(卓球)、阿部一二三選手(柔道)、阿部詩選手、堀米雄斗選手(スケボー)のものが人気だという。1日に何人ものメダリストが出ると仕事も急増し、一晩で最大7パターンの切手を作ったこともあるという。
切手コレクターやファンの手元へ
一夜明けた27日、できたての切手が運ばれ、まずは東京中央郵便局(千代田区)の窓口で販売された。


さっそくやって来た人は…
「オリンピックもパラリンピックも、全部、切手の発売日の消印を押したものを集めている」と語り「買うのが大変だが喜ばしいことだ」と笑顔で買い求めていた。

販売がスタートした東京パラリンピックの第1号メダリスト切手。29日からは、販売窓口はほかの12カ所の中央郵便局にも広がり、切手コレクターやパラリンピックファンたちの手に渡ることになる。
(執筆:フジテレビ経済部 郵政担当 井出光)