夏場に旬を迎える福岡の海の味覚「岩ガキ」。
しかし生産者が頭を悩ませるのが、栄養を奪うムール貝の存在だ。

そんな「厄介物」が今、肉厚の食感とうま味の強さを生かし、地元の料理店で「第2のブランド」として提供され始めている。

”厄介者”ムール貝が新たな名産に

坂本奈都美リポーター:
糸島市の新町漁港です。これから岩ガキの養殖場に案内してもらいます

漁港を出発して約5分。養殖イカダに到着し、水揚げの様子を見せてもらうことに。

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ーーこれはカキですよね?

アクアグローバルフーズ・岡﨑哲也工場長:
こちらはカキなんですけど、これがムール貝ですね。20個とか10個とかついてるのもありますね

カキにくっついているムール貝
カキにくっついているムール貝

ムール貝とは、ヨーロッパ・地中海原産で、大型船の船底に付着するなどして世界中に広がった貝。パエリアやパスタ料理の具材になるなど、普通なら喜ばれるはずのムール貝だが、カキの生産者にとっては生育を妨げる厄介者。

アクアグローバルフーズ・岡﨑哲也工場長:
カキの栄養をとっちゃうので、どちらかといえば厄介者ですね。今までは、やっぱり製品としては使ってなかったですね

 
 

出荷までの処理に手間がかかることもあり、これまでは殆ど廃棄されていた。以前、少量だけ出荷した経験もあるとのことだが、見向きもされなかった。

ムール貝を新しい食の文化に

そんな捨てられるだけのムール貝に目をつけたのが、糸島市の洋食レストラン「アムール」。
糸島漁協から仕入れるルートを作り、2020年からムール貝を使った料理を提供している。

糸島市の洋食レストラン「アムール」
糸島市の洋食レストラン「アムール」

アムール・高野広大シェフ:
地中海産、外国のムール貝で調理をやっていたんですけど、糸島でも獲れるよという話を聞いて。コロナになって、売上げとかも落ちてきたので、何か策を練らないとということで始めました

冷凍の輸入モノに比べ、肉厚の食感でうま味が強い糸島産ムール貝がこんな料理に。

糸島で育ったムール貝は肉厚でうま味が強いという
糸島で育ったムール貝は肉厚でうま味が強いという

アムール・高野広大シェフ:
こちら糸島産ムール貝の白ワイン蒸しでございます

坂本奈都美リポーター:
すごくいい香りですね

夏限定の人気メニュー、糸島産のムール貝を使った白ワイン蒸し。

糸島産ムール貝の白ワイン蒸し
糸島産ムール貝の白ワイン蒸し

坂本奈都美リポーター:
いただきます。身がふわっふわです、貝の旨味が詰まっていて、口の中いっぱいに広がります

一方こちらは、パエリア。もちろん糸島産のムール貝を使用。
糸島産のムール貝を使用したメニューは、8月下旬頃まで提供されるという。

新型コロナの影響で客足が5分の1以下に落ち込む中、店もムール貝の料理を売り上げ回復のきっかけにしたいと考えている。

アムール・碓井裕之オーナー:
少しずつ取り扱っている料理店さんも出てきたので、ムール貝そのものを食べる新しい文化を、カキと第2のブランドになればいい

糸島産のムール貝を使用する料理店も出てきた
糸島産のムール貝を使用する料理店も出てきた

アクアグローバルフーズ・岡﨑哲也工場長:
コロナの影響があって、カキ自体の売り上げが下がっている中、こうした副産物がお金に代わることはありがたいこと

糸島の豊かな海で育つ黒い宝石。今後、地域を救う新たな名物になるかもしれない。

(テレビ西日本)

テレビ西日本
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