異例の“台風8号” 福島に初「5段階の警戒レベル」
2021年7月の台風8号。
宮城県への上陸は、1951年の統計開始以来初めてという“異例”の台風だった。
台風が日本に上陸するのは、福島県内に大きな被害をもたらした「令和元年の東日本台風」以来、約1年9カ月ぶりだった。
幸いにも福島県内では目立った被害はなかったが、今シーズンから変更された「5段階の警戒レベル」が初めて出された。
南相馬市・伊達市・浪江町・広野町の4市町で、「レベル3」の「高齢者等避難」が発令。
また、自治体による避難情報は出されなかったが、このほか18市町村が自主的な避難所を開設。最大で82世帯106人が避難したが、このうち4割以上の37世帯45人は自主的な避難だった。
福島県の担当者は「東日本台風の被害もあり、早めの避難所開設が浸透しつつあるのではないか」と話す。
このような動きを、防災のプロはどのように考えているのか？
東京大学大学院客員教授・防災マイスター 松尾一郎さん：
皆さん雨風が強い中で、やはり心配なんですよ。危険なところにいらっしゃる方は、「いつ避難すればいいんだろう」「呼びかけはまだなんだろうか」という不安な状態ですよね。自主的に避難されたというのは、心配であるということです。
早めに避難されたとしても、自治体が避難所を開設しないと避難できないんですよ。2年前の災害（令和元年東日本台風）のときに、危険な時間帯に避難されて巻き込まれた方もいらっしゃるわけですから、早めの避難というのは重要。これはぜひ根づかせてほしいと思います
避難所とコロナワクチン集団接種…両立の難しさも
一方で、新型コロナウイルスの影響により、避難所を開設する自治体にとっては新たな課題もあった。
7月28日未明、福島県内に最接近した台風8号。
降り始めからの雨量は、南相馬市で136.5mm、浪江町で134.5mm、富岡町で122.5mmなどと100mmを超えた。
早めの避難が徐々に浸透する中、新型コロナウイルスの影響で自治体が追われていたのは感染症対策に配慮した避難所の開設だけではない。
相馬市で進められていたのは、中学生を対象にした集団接種。
ファイザー製ワクチンの対象年齢が16歳以上から12歳以上に引き下げられたことから実施された。
相馬市はこれまで、「スポーツアリーナそうま」の第一体育館が避難所として優先的に使われていたが、集団接種の会場になっているため、第二体育館が自主避難所として開設された。
そのうえで、検温の実施や避難者同士の間隔を空けるテントを設置するなどして受け入れ態勢を整えた。
相馬市健康福祉課・佐藤崇課長：
ワクチン接種ももちろん、皆さんの希望を聞いて調整をして来ていただいてますので、できるだけスケジュール通りに進めたいという思いもありますし、その中で台風災害がきてますので、やはり両立することの難しさというのは感じてはおりますね
本格化するワクチン接種と重なった2021年の「台風シーズン」。
災害時に備え、避難所の再確認が改めて求められる。
東京大学大学院客員教授・防災マイスター松尾一郎さん：
自治体も大変だと思います。ですけど、ワクチンというのはコロナに対して命を守る。避難というのは災害から命を守る。同じことじゃないですか。
そういう意味では、自治体の運営の中で接種会場と避難所っていうのが重なったとしても、間取りなどさまざまな考え方があると思うので、そこは自治体に頑張ってほしいと思いますね
台風通過後に“猛烈な雨” いかなる場合も警戒を
台風8号は、福島県を通過したあとも「異例の雨」を降らせた。
日本海に抜けた台風は温帯低気圧に変わっていたが、気象庁は、福島・須賀川市に1時間に110mmの猛烈な雨が降ったとみられるとして、「記録的短時間大雨情報」を発表。
須賀川市で床上浸水で1件、郡山市でも床下浸水が5件確認された。
台風が通過したあとも警戒が必要なケースもあるのか？
東京大学大学院客員教授・防災マイスター松尾一郎さん：
2年前の東日本台風のときも、台風本体が抜けても回り込んだ雨雲で、あとから遅れて雨をもた
ということもあったわけですから、これはいかなる場合も起こり得るということを考える。今後は遅れてくる大雨には注意ということです
（福島テレビ）
