夏の風物詩である風鈴。ガラス製に色鮮やかな模様を思い浮かべる人が多いだろうが、“鬼瓦”で作られた風鈴があるのをご存知だろうか。

その名も「静かな音の【鬼瓦風鈴】」。

提供:株式会社鬼福
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過去に編集部で紹介した「鬼瓦テイッシュケース」を製作する、愛知県の株式会社鬼福(鬼福製鬼瓦所)が新たに発売した。

(参考記事:重さ1.6キロ…“鬼師”が本気で作る「鬼瓦ティッシュケース」がインパクト大! 製作者に聞いてみた

鬼瓦は、「厄除けや魔除けなど人々の幸せを願う守り神として屋根に飾られる」瓦の一種。この風鈴も、「鬼師」と呼ばれる鬼瓦職人が“睨んだ顔”をデザインし、小さくても魔除けの意味を持つという。音は鬼瓦の中にある小型風鈴から鳴る仕様となっている。

またマンションでも飾りやすい、現代のライフスタイルに合った「静かな音の風鈴」に仕上げたというが、動画で見ると、風鈴にぶらさがっている「舌(ぜつ)」が風になびく様子と“睨んだ顔”の鬼瓦のコントラストは何とも言えない味わいがある。

提供:株式会社鬼福

7月7日に一般販売を開始し、公式オンラインショップなどで2970円(税込み)で購入することができる。

「テイッシュケース」もユニークな商品だったが、なぜ鬼瓦で風鈴を作ったのだろうか?また、鬼師の技術はどういかされ、「静かな音」とはどういうことなのか?

鬼福製鬼瓦所の担当者に詳しく聞いてみた。

現代のライフスタイルに合わせ企画

ーー「鬼瓦風鈴」を発売した経緯を教えて

2020年夏に、愛知県碧南市にある中山神明社の宮司様から「地場の特産品で町おこしのようなことをしたい。鬼瓦で風鈴を作れないか?」とのお話を頂いたのがきっかけです。その時に100個を神社に納め、一般の方から販売してないのか?とのお問い合わせがあったことから、神社様の許可を得て2021年夏に商品化しました。

この経緯に加えて、屋根瓦の需要の激減から、弊社では「お守りとしての鬼瓦」を現代のライフスタイルに合わせたカタチで提案しようと、様々な商品の企画を進めています。生活に取り入れやすい鬼瓦を考えていたことが根底にあります。

中山神明社での様子(提供:株式会社鬼福)

ーーどうやって作っているの?

鬼瓦部分は屋根に乗る鬼瓦と同じ素材、同じ製法で作っています。成形工程では、型を使って粘土を成形し、職人が手作業で仕上げを行います。

提供:株式会社鬼福

その後、乾燥を経て窯で焼成します。焼成工程は、最高温度は1120℃、焼成時間は28時間です。

焼成前(提供:株式会社鬼福)

色については、いぶし瓦は、焼成の最終工程で燻化(くんか。英語ではスモーク。「燻す」は訓読みで「いぶす」)を行うことにより、表面に炭素被膜を形成して銀色に発色します。「燻して発色する銀色」なので、この瓦の色を「いぶし銀色」と呼びます。

釉薬(ゆうやく)の撥水作用がないので、革製品の経年変化のように素手で撫でた部分が徐々に黒く変色していきます。撫でれば撫でるほど風合いが増していく点は、釉薬を塗った陶磁器にはない素材の魅力です。

提供:株式会社鬼福

ーー「静かな音」とはどういうこと?

本商品は鉄製小型風鈴を球状の鬼瓦で覆う仕様となっており、鬼瓦がカバーとなり音の反響を抑えています。そのため、風鈴の音は風の強い日でもかすかに鳴る程度です。

提供:株式会社鬼福

ーー「鬼瓦風鈴」の良さはどこ?

夏を連想する風鈴ですが、魔除けの縁起物として季節を問わず飾って頂けるかと思います。お家の小さな守り神として、軒先やベランダなどに鬼瓦が寄り添います。

当初は鬼瓦自体を鳴らそうと考えたが全く音が鳴らなかった

ーーこだわった部分はどこ?

屋根に乗せる鬼瓦ではないので、「重さ」には気を付けました。大きくなると重くなってしまい、風鈴としてぶら下げて危険になっては困りますから。本商品の総重量は100g(生卵2個分)です。なお、鬼瓦部分50g、鉄製風鈴部分50gです。

提供:株式会社鬼福

参考までに、添付の鬼瓦ティッシュケースは1.6kg(ケース部分を桐箱にして軽量化して1.6kg)、大型鬼瓦(屋根材としてお寺の屋根に乗ります)は概算ですが150kgくらいです。

鬼瓦ティッシュケース(提供:株式会社鬼福)
大型鬼瓦(提供:株式会社鬼福)

ーー大変だったことは?

当初は鬼瓦自体を鳴らそうと考えたのですが全く音が鳴らず、鉄製小型風鈴を球状の鬼瓦で覆う仕様にしました。

それでも響き渡る澄んだ音色にはならず、逆に「夜通し鳴り続ける風鈴の音が、一部では近所迷惑と言われることもある」という点に着目し、集合住宅でも飾りやすい静かな音の風鈴としました。


ーー完成したときどう思った?

サイズ感、丸いフォルム、表情も含めて、女性社員の第一印象は「かわいい」でした。

提供:株式会社鬼福

「鬼師は日本に70人~100人程」

ーー「鬼瓦職人」は何人いるの?

弊社では私を含めて3人の鬼師が在籍しています。あまり正確ではないですが、日本全体では70人~100人程と聞いております。


ーー職人数は減少している?

最盛期に比べれば確実に減少しています。職人数はわかりませんが、三州(愛知県西三河地方にある日本最大の瓦の産地)の鬼瓦組合所属企業数は最盛期の1/4程度です。

「鬼瓦風鈴」製作の様子(提供:株式会社鬼福)

ーーその後、販売状況はどう?

現在当サイトの7月の人気トップ100に先頭表示されております。


ーーどんな人に勧めたい?

伝統的な物に興味はあるけれど、自分のライフスタイルには取り入れづらいなぁと感じている方です。

提供:株式会社鬼福

ーー今後、他にも考えているの?

「鬼瓦は魔除けのお守りである」と考えれば、活躍の場は屋根以外にも広がると考えています。今後も様々な鬼瓦商品を通して、それぞれのライフスタイルに合った鬼瓦をご提案していきます。


たしかに伝統技術を感じさせつつも現在のライフスタイルを意識したデザインで、いろんな部屋に合いそうだ。少しでも気になった人は、この機会に鬼師が作り上げる静かな音が鳴る鬼瓦風鈴を、魔除けのお守りとして飾ってみてはいかがだろうか。
 

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