空撮用やおもちゃなど、身近な場面でも見るようになった「ドローン」。そんなドローンの、ある飛行映像が「神々しい」と話題になっている。

それがこちら。

「おきあがりドローン仏できました」とのコメントと共に投稿された動画に映るのは、ドローンの上で起き上がる仏像の姿。そして、仏像を乗せたドローンはそのまま上昇し、空中で別の仏像と合流して一緒に浮遊しているのだ。撮影場所は寺の本堂と思われ、その背景も相まって、不思議な雰囲気を感じさせてくれる。

提供:三浦耀山さん
この記事の画像(13枚)
提供:三浦耀山さん

動画を投稿したのは、伝統的技法で仏像を彫ったり、古い仏像を修復している仏師の三浦耀山(@biwazo)さん。

この仏像が浮遊する動画はTwitterで話題となり、投稿には「この発想はなかった」「神々しくて感激しました」などとさまざまなコメントが集まり、3万5000いいねが付いている。(6月15日時点)

提供:三浦耀山さん

シュッと起き上がったと思ったら一瞬で宙に浮く仏像の姿は、なんとも言えない魅力があるが、
そもそもなぜ仏師が仏像を飛ばそうと思ったのだろうか? どのように制作したのかと合わせて、三浦耀山さんに話を伺った。

「仏像を宙に浮かしたい」という仏師の昔からの思い

ーーなぜ「おきあがりドローン仏」を制作した?

ドローン仏のアイデアは「仏像を宙に浮かしたいという仏師の昔からの思い」を現代だったらどう表現できるだろうという考えから生まれました。

ドローン仏を考案したのは2018年ですが、この頃からドローンがamazonなどでも気軽に手に入れられるようになりました。そして、仏像をドローンに乗せてみたらちゃんと飛ぶんだろうかという気持ちから実験を始めました。

提供:三浦耀山さん

ーー仏師の昔からの思いとは何?

仏教の教えに阿弥陀来迎というものがあります。これは人が亡くなるときに阿弥陀如来が多くの菩薩を引き連れて、紫雲に乗って西方極楽浄土からお迎えに来ることを言います。平安時代に盛んに信仰され仏画には多く描かれました。

しかし、昔は実際に仏像を宙に浮かすことはできないため、当時の仏師は仏が宙に浮くさまを色々な表現で見立てる挑戦をしました。その中の代表的な仏像として京都府宇治市にある平等院鳳凰堂の雲中供養菩薩があります。

これは雲に乗った仏像をお堂の壁の高いところに貼り付けることによってあたかも宙に浮いているように見せています(正確には平等院鳳凰堂の雲中供養菩薩については阿弥陀来迎ではなく、極楽浄土の様を再現したモノです)。これを作ったのは定朝という日本を代表する平安時代の仏師です。それ以降も仏像を宙に浮いているように見せる表現はいくつもなされてきました。

二号機阿弥陀如来(撮影:町田益宏さん 提供:三浦耀山さん)

後ろに倒れた映像を逆再生

ーー起き上がる仕組みは?

これにはカラクリがありまして、実際は仏像は起き上がりません。ドローン仏飛行を撮影していて着陸した際、偶然仏像の下の両面テープが剥がれて後ろに倒れてしまいました。

この映像を編集する際に逆回しして再生したところ、仏像が起き上がってから飛び上がったように見える非常に魅力的な映像になったので”おきあがりドローン仏”と名付けてアップしました。

普段は「ドローン仏(ぶつ)」という名前で発表しています。

二号機勢至菩薩(影:町田益宏さん 提供:三浦耀山さん)

ーーどこで飛ばしているの?

お寺のお堂の中で飛ばすことが多いです。


ーーこれまでにいくつ制作した?

現在3個あります。「阿弥陀如来」「観音菩薩」「勢至菩薩」です。

左:勢至菩薩 中:阿弥陀如来 右:観音菩薩(影:町田益宏さん 提供:三浦耀山さん)

思った以上にお迎え感がある

ーーこだわった部分を教えて。

ドローンの上に乗っている仏像は私が自ら木で彫った仏像を3Dスキャンし3Dプリントしたものです。当初は木の仏像をそのまま載せようと思いましたがそれだと私が購入したドローンでは荷重オーバーになることがわかったので3Dプリントして軽量化した仏像にしました。

しかし、その仏像の造形は私が長年の修行の中で身につけた伝統技法で彫り上げたものです。手作りの伝統技法とドローンや3D技術という現代の最新技術の融合が私がこだわった部分です。

試作機(提供:三浦耀山さん)

ーー大変だった部分はある?

ドローン仏を実現する上で一番難しかったのが重量とバランスです。私が使っているドローンはtelloというトイドローンです。寺のお堂内でドローンを飛ばすには一般的なドローンですと大きくて危険です。しかし、トイドローンは軽くて小さい代わりにモノを載せるのには適していません。いかに軽い仏像を載せられるかが大きな壁でした。

最初は自分で彫った木の仏像を載せてみたのですが重くてうまく飛ばせませんでした。そこで目をつけたのが3Dプリンタです。その頃知り合いになった3D技術を扱うキャステム京都LiQの石井さんにこのアイデアを相談したところ、私の彫った仏像を3Dスキャンし、中を空洞化して非常に軽い仏像を3Dプリントするのに協力してくれました。

手作りの仏像(提供:三浦耀山さん)

色々調べましたが積載重量が20gを超えると操作に支障が出ることがわかったので、3Dプリントした仏像と発泡スチロールを彫って作った雲を合わせて約16gくらいまで抑えることによって安定飛行が可能となりました。

3Dプリントした仏像(提供:三浦耀山さん)

ーー他にも大変だったことはある?

どこで発表するかという問題がありました。私としてはドローン仏はお寺で飛ばさないと意味がないと思っていました。しかし、お堂の中でドローンを飛ばすのを理解しているお寺があるのか。

ちょうどその頃、知り合いの池口さんが住職を務める龍岸寺さんで、池口さん自身が当時プロデュースしていたアイドルとテクノ法要で有名な福井県昭恩寺の朝倉住職がコラボパフォーマンスする法要があると聞き、ドローン仏を提案したところ、そのオープニングアクトとして発表する機会をいただきました。それ以降、現在まで試行錯誤しながら改良を続けています。(現在二号機)


ーー完成したとき、どう思った?

自分が思った以上にお迎え感があると思いました。

二号機観音菩薩(撮影:町田益宏さん 提供:三浦耀山さん)

目標は「阿弥陀二十五菩薩来迎図」をドローン仏で表現

ーードローン仏の魅力は?

昔から絵画の世界では表現されてきた阿弥陀来迎の世界が、立体となって、しかも仏像自体が動いてこちらにやってくる(お迎えに来る)ライブ感が1番の魅力だと思います。


ーー今後、他に作る予定はある?

阿弥陀来迎はたくさんのほとけさまがお迎えに降りてくる様が描かれることが多く、一番有名なのは阿弥陀二十五菩薩来迎図です。

そしてドローン仏の最終目的はこの阿弥陀二十五菩薩来迎図をドローン仏で表現することです。現在阿弥陀如来と脇の観音菩薩、勢至菩薩の合計3体まで完成していますので、あと23体のドローン仏を製作しお寺で群体飛行させるのが目標です。

ただドローン26機の群体飛行をプログラミングする技術が私にはないので、それに技術提供してくれる専門家の方を探しています。この実現にはクラウドファンディングも使おうと思っているのでこの記事を見てドローン仏を群体飛行できるよ!という方がいたらぜひ声をかけていただきたいです。

二号機仏三尊敬(撮影:町田益宏さん 提供:三浦耀山さん)

ーー話題になったけど、どう感じている?

今回の投稿で約850件のコメントをいただきましたが、否定的なコメント(罰当たりとか)はほんの数件でした。これは嬉しい予想外でした。

実はこのドローン仏は2018年に龍岸寺さんで初披露した際もそれを撮影した方のツイートがバズった経緯があります。その時は結構ご批判の声もありました。2018年の初号機と現在の二号機ではだいぶ進化しているのでその辺りも理由としてあるのかもしれません。


「仏像を宙に浮かしたい」という仏師の昔からの思いを、現代の技術で実現させている三浦さん。目標となる26体のドローン仏が宙に浮く光景は、想像するだけでも圧巻だ。

【関連記事】
仏具の「チーン!」が自転車のベルに…京都のおりん職人が作り出す“こだわりの音色”が心地いい
こんな使い方もあったのか…ドローンが牧場での“牛追い”で目から鱗の大活躍