先週(7/5)コロナワクチンの1回目を港区の集団接種会場で打った。勤務先の職域接種、国の大規模接種、港区の集団接種の3段構えで待ったが、結局港区が一番早かった。天皇陛下(僕より一歳下)はその翌日に打たれたということで、やはり一般国民のペースに合わせてるんだなと感心した。

接種後にスマホに入れているワクチンアプリに登録すると「33%コロナから守られています」というサインが出て、おっと思った。当初1回目で70-80%感染を抑制するということだったが、その後デルタ株に対して1回目では33%という調査結果が出たからその数字なのだろう。

ワクチンアプリには「33%コロナからまもられています」と表示
ワクチンアプリには「33%コロナからまもられています」と表示
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33%とは言えコロナ発生から1年半がたって初めて僕自身の感染のリスクが減ったことがビジュアルにわかった瞬間だった。長いトンネルの出口が見えた。2回目は今月末なのでその後は行動に自由の幅が増えるだろう。

無観客五輪?マジですか

と思っていたのだが実は接種前日の東京都議選の結果を見て嫌な予感がしていた。メディアの事前予想を覆して自民は苦戦し、公明との過半数確保に失敗していた。「敗戦」の理由は、ワクチン供給にブレーキがかかり、陽性者が増える中で菅首相が観客を入れて五輪を開催しようとしていることに都民が怒っているとメディアが解説していた。案の定、菅首相は東京都に緊急事態宣言を出すとともに東京五輪は事実上無観客にすることを決めた。マジですか?

米国のメジャーリーグで大谷選手も参加したホームラン競争を見た人は多かったろう。満員の観客がマスクなしで楽しんでいた。英国でもテニスのウインブルドン選手権、欧州サッカー選手権の決勝、いずれも満員だった。彼らがノーマルに戻している理由は「ワクチン接種が進み、陽性者数が増えても死者数は減っているから」ということだという。

イギリスではスタジアムに6万人の入場が許可され超密集状態となった欧州サッカー選手権
イギリスではスタジアムに6万人の入場が許可され超密集状態となった欧州サッカー選手権

清潔で安全な素晴らしき日本

日本のワクチン接種は欧米に遅れたとは言え今はすごいスピードで進んでいる。供給にブレーキがかかったと言われているが接種そのものは毎日百万回を超えている。死者数ももともと少ないのに加えてワクチン接種が進みさらに減っており、欧米とはひとけた違う少なさだ。

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一体なぜ菅首相は東京に緊急事態宣言を出し、五輪を無観客にしたのか。それは我々国民がそれを望んでいるからなのだ。最新の読売の世論調査では有観客開催17%、無観客開催40%、中止41%で、前回、前々回に比べ、「開催してもいいが無観客で」という「民意」がより明確になっている。

この民意を無視して観客を入れて五輪を開催したら与党内で菅おろしが起きていただろう。都議選の結果を受けた自民や公明の幹部の口ぶりからは明らかにそれが伺えた。菅さんはその圧力に負けてバイデンやジョンソンのようなノーマルへの政治決断ができなかった。

かくして東京五輪は無観客になった。欧米ではスポーツ観戦にワクチン接種や検査による陰性の証明書の提示を求めるという現実的な対応をしているが、日本ではワクチン接種証明書は差別につながるとして政府が消極的だ。いったいこの彼我の差は何なのだ。日本は世界一清潔で安全な国かもしれないが世界は奇異の眼で見ているのではないか。菅さん、今からでも遅くないから五輪に観客を入れてくれ。

【執筆:フジテレビ 解説委員 平井文夫】

平井文夫
平井文夫

言わねばならぬことを言う。神は細部に宿る。
フジテレビ報道局上席解説委員。1959年長崎市生まれ。82年フジテレビ入社。ワシントン特派員、編集長、政治部長、専任局長、「新報道2001」キャスター等を経て現職。