現在、大ヒット上映中の映画「いのちの停車場」の魅力に、映画大好き・衣笠梨代アナウンサーが迫る。

【映画「いのちの停車場」あらすじ】
東京の救命救急センターで、命を救うことを最優先して働いていた吉永小百合さん演じる医師・咲和子。
ある事件をきっかけに、故郷の金沢で在宅医として再出発する。「いのち」との向き合い方に戸惑う咲和子だった、最後までその人らしい生き方ができるよう、ともに考え、成長していく。

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映画の公開を前に、主演の吉永さんが見どころを語ってくれた。

吉永小百合さん:
昨年の9月10月に撮影をしまして。コロナ禍の中で、みんなで力を合わせた作品です。
今までの医師や医療モノの作品とまた少し違った角度から、医療というものを見直した作品になったのではないかという風に自負しております

吉永小百合さん:
全く初めてドクターの役をやったんですけれども、その寄り添ってあげるっていうことの大切さを在宅医療の指導してくださった先生から教わって、なるべくそういう気持ちをこう寄り添ってあげる、あたかい思いで見つめてあげる、というところを自分では志した

"成長"することを怠らない吉永さん

この映画の成島出監督は、吉永さんが主演する医療モノの原作を探し続けていた。「いのちの停車場」は、10年越しでようやく巡り合った作品。

衣笠梨代アナウンサー:
原作「いのちの停車場」の小説があると思うんですけれども、そこに出会って小説を読まれた時、どんな感想を持ったのでしょうか

成島出監督:
トップの救急センター、大学病院でやっていた咲和子という吉永小百合さんが演じる主人公が、故郷に戻って在宅医療っていうの始めて、右も左も分かんない。その中で、20代のすずちゃんなんかに教えを請いながら、成長してくって話なんです。60代の設定で成長、まだまだ成長していくって物語って、なかなかないんですよ。日本では。珍しいんです

成島出監督:
南先生は、もう本当に実際OLになってから、子どもができてから、医学部に行きなおして、お医者さんになったっていう凄いチャレンジャーで、色んな人生に可能性あるという、その根っこの部分っていうのかな。それがものすごい吉永さんに合ってる。
本当に吉永さんってあれだけもう、天下の吉永小百合なんですけど、未だに努力を怠らないし、やっぱり本当にラッシュを見たりすると悔しがるんですよね。「まだまだ、まだまだ」って。
医療器具の使い方から、「そこまでやらなくても十分できてるから」って、周りは見てて思うんだけど、それでも「まだまだ。まだまだ」って、練習するんですよ。だからこの原作が本当にそこにぴったりはまった感じでした

衣笠梨代アナウンサー:
撮影の現場においては、吉永さんはどういった存在だったんでしょうか?

成島出監督:
今回はコロナの中での撮影でした。ですので普段はテストを何回かやって、本番やって。本番も、もう1回・もう1回と、わりと僕は多い方なんですけど。
やはり俳優はマスクができませんでしょ。その危険回避のためにも、一発を狙うっていう風にしたんですけど。やっぱり、また吉永さんの話になっちゃうんだけど、もうテストの1回目から完璧なんですよ。それを見るとやっぱり、松坂桃李くんや広瀬すずちゃんの若い人たちも、やっぱりその背中を見て。
吉永さん、「ああしなさい。こうしなさい」と決して言う人じゃないけど、若い連中も手を抜くわけにいかないじゃないですか。だから全員で本当に一丸となって、一発OKを目指すっていう感じで

衣笠梨代アナウンサー:
吉永さんがお医者様の役が初めてということですけど、監督の方から何か要望されたことというのはあったんですか?

成島出監督:
田中泯さんとの、やっぱ父親との。父親に「俺を殺してくれ。安楽死させてくれ」という風に追い詰められてくんですけど。
今回、本当に追い詰められて、本当に犯罪と言われてしまうものに手を染めてしまうのかどうかっていうところまで、すごく追い詰めたかったっていうのがあって、それと田中泯さんのある意味、人間離れした凄さみたいなものの掛け算が、クランクインする前から楽しみでしたし、やっぱり映画のそこが見どころになってくれたかなという風に思ってます

吉永さんと田中泯さんは、作品中で親子を演じるが、実は同い年。

吉永小百合さん:
本当に同じ年の3日後に私が生まれただけなんですね。ですからそれを、「お父さん」という風に私が呼んで、田中さんとお芝居するのはなんか申し訳なく。「こんな素敵なダンディな方がね」と思っていたんですけれども。
私は東京の渋谷区というとこで生まれたんですけど、田中さんはその3日前に中野区でお生まれになった。中野区と渋谷区は隣り合わせなんですね。そういうことからも、すごく親しみが沸いてます

田中泯さん:
お父さんになるのは意外に簡単でした。それは吉永さんが目の前で娘になるんですね。なんかとっても自然な感じで、最初からそれがやれたような気がしてます

"死"をタブーにしない…最後まであたたかく

劇中、何人もの患者が人生を全うし、命の終わりについて考えさせられる、映画「いのちの停車場」。
メガホンをとった成島監督自身もガンを患った経験があり、それが映画にも投影されているという。

成島出監督:
僕は病気したのは2017年だったんですけど、肺がんの小細胞癌っていう割と厄介なガンで。
その時は「もうあと1年か2年。だとするともう一本撮れるか撮れないか。どうするか」っていうことを考えた時に、吉永さんは本当に自ら神社に詣でてくれて。癌封じのお守りと、「必ず治して、またご一緒しましょう」という、お手紙頂いて。それは本当にどんな抗がん剤よりも効いた感じで。
その後に、助かるかもしれないっていう風に診断が出て。もう1回カメラの前で吉永さんとご一緒できて、それで映画が撮れるというだけで、「こんなに幸せなのか」って、すごく感じた

成島出監督:
それまで映画をとるということは、普通の日常だったのですけれど、映画を撮れるっていう事がやっぱりこんなに幸せなんだ。仲間に囲まれて、仕事をするってことだけでどれだけ素晴らしいのかっていうのはすごく思いましたね。公開を迎えるところまで来れたっていうのは本当に感慨深いですね

衣笠梨代アナウンサー:
観終わって印象に残ったのが”いのちのしまい方”という言葉、とても心に残った。改めてこの作品を通して監督が一番伝えたい事っていうのは?

成島出監督:
死ぬということを、映画の世界ではハッピーエンドっていますけど。必ず100%人間は死ぬじゃないですか。
その時にやっぱり、そこまでどういう風に生きるか。だから死ぬということを、ただひたすら悲しいとか、恐れるだけではなくて。その日まで最後にどういう、あたたかい最後を自分なりのハッピーエンドを迎えられるかっていうのが、これから一つの大きなテーマだなと。超高齢化社会になった時にね

成島出監督:
いろんな人生の選択があるように、色んな死の選択があっていいと思うし、そういう話をタブーにしないで、安楽死の問題もね。オープンに大事な家族とかパートナーで、それを語ることが、どこかでハッピーエンドに向かうことになるっていう意味で、大事かなと思いました

限りある時間をどう過ごすか。一日一日を精一杯生き切ることの大切さを改めて感じることができる映画だ。

(テレビ新広島)