中国で4月、食べ物の浪費を禁止する法律が施行された。

これにより、料理を注文しすぎた客に食べ残しのごみ処理費用を請求できたり、大食いを助長する動画の投稿に罰金が設けられることに。背景には、習近平政権のある危機意識があった。

FNN記者のイチオシのネタを集めた「取材部 ネタプレ」。今回取り上げるのは、北京支局の木村大久記者が伝える「客をもてなす習慣にも変化?法制化に踏み切った背景」

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中国で「反食品浪費法」が試行

FNN北京支局 木村大久記者:
中国で4月、ある法律が施行されました。その名も「反食品浪費法」です。テーブルに食べきれないほど並んだ料理、男性がもくもくと食べていきます。これは2020年、中国のSNS上に投稿されていた映像です。中国では大食いを助長するようなこうした動画が人気を博してきたんですが、今回施行された法律では、悪質だと判断された場合には、最高で約170万円の罰金が科されることになったんです

FNN北京支局 木村大久記者:
この法律、規制するのは大食い動画だけではないのです。客が食べ残した場合には、店側がごみ処理費用を請求できるよう定めたんです。さらにこちらの行為も対象になります。大勢の人たちが座り込んで何やら容器を次々と開け、白い液体をバケツで捨てています。実はこの飲み物のキャップに付いている二次元コードを使って、ネット番組で好きなアイドルに投票できるシステムなんですが、中身は飲まずに捨てられているんです

食料ロスは都市部の飲食店だけで年間1800万トン

FNN北京支局 木村大久記者:
この映像が投稿されると、中国国営メディアは厳しく批判し、5月4日に行われるはずだった番組自体も放送中止に追い込まれました。専門家によると、こうした食品ロスの行為も今回の法律に抵触するそうです。日本でも食品ロスは問題になっていると思います。しかし中国での食品ロスは都市部の飲食店だけでも、1年間で1700万~1800万トンにものぼるんです。これは3000万人~5000万人の1年分の食料に相当するほどの膨大な量です

FNN北京支局 木村大久記者:
中国では食べきれないほど料理を注文することが、もてなし裕福さの表れという考えがありますが、今回法制化に踏み切った背景にはある危機意識があります。習近平国家主席は2020年8月、国内メディアを通じて「食料安全保障については一貫して危機意識を持たなければならない」と国民に呼びかけたんです。

加藤綾子キャスター:
これなんで、そんなことを呼びかけないといけなかったんですか?

新型コロナと米中対立で食料供給に危機感

FNN北京支局 木村大久記者:
背景には「新型コロナ」「米中対立」という2つの要素があります。2020年は新型コロナウイルスの感染拡大が始まった年です。食料生産の減少輸出規制物流網の混乱などで食料供給にも影響が出ることが懸念されました。習主席自身も国民への呼びかけの中で「感染拡大の影響は我々に警鐘を鳴らしている」と指摘しました

FNN北京支局 木村大久記者:
2つ目が米中対立です。中国は穀物の自給率は95%以上で、基本的に自給は達成しているとしています。しかし項目ごとではそうとはいえないのです。大豆アメリカやブラジルなど、海外からの輸入依存度が約85%(2020年)で、海外に頼っているのが現状なんです。アメリカとの対立など国際関係の状況次第では、供給にも影響が出るのではないかという不安もあります

中国共産党の体制維持も見据えている

FNN北京支局 木村大久記者:
今回の法律について中国当局の関係者に話を聞くと、ある言葉を引用しその必要性を強調されました。中国で古くから伝わる「民は食をもって天となす」という言葉です。どういう意味かと言いますと「中国人は食を最も大切なものと考える。安定した政権を維持するには、食料供給が最優先の課題である」ということなんです。14億人もの人口を抱える中国では、食料供給が不安定になれば、中国共産党の統治体制にも影響が出ることは避けられません。2021年7月、中国共産党創立100年を迎える中、食料問題は中国の体制にも直結する問題なんです。こうした点からも中国の食料供給の行方には注目を持って見ていく必要があると思います

加藤綾子キャスター:
木村さんありがとうございました。罰則は別として食べ物を大切にするというのはいいことだと思うんですけど、中国の体制維持。こうした狙いがあったんですね?

ジャーナリスト 柳澤秀夫氏:
軍事だけじゃなくて、実は食料っていうのは、安全保障上非常に大切な分野なんですね。海外との付き合いもあるでしょ。コロナの影響もありましたけど、気候変動で農作物の出来・不出来に影響が出てくるってこともあって。中国だけじゃなくて、隣国の日本、あるいは世界に繋がる危機にもなりかねないっていうこと。決して人ごとじゃないというふうに、我々も受け止めなきゃいけないなと思います

(「イット!」5月20日放送より)

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