日々の生活に彩りを与えてくれる花だが、中には100年に1度しか咲かないといわれる植物があるのを知っているだろうか?
東京・渋谷区在住の河村さんの自宅の庭で、その植物が開花したのだという。それがこちら。

アロエのように1つの株からロゼット状に伸びる、いくつもの細長く先のとがった葉。その葉たちの中心から頭上に真っすぐ伸びる太くしっかりした茎。
そして、枝分かれした茎の先に咲いているのが花だという。通常ならば花びらに覆い隠されているはずのめしべやおしべがむき出しになった、黄色の鮮やかな“花びらのない花”が確認できる。

この植物の姿を初めて見る人も多いだろうが、これが100年に一度開花するという「アガベ・ベネズエラニシキ」という多肉植物なのだそう。開花が珍しいとされる植物が自宅の庭で咲き誇っているのは、なかなか貴重な瞬間に思えるが、特別な手入れによるものなのだろうか?
4月末または5月の頭に咲き始めたばかりだそうで、この植物を育て始めた経緯や、開花に至るまでの流れを河村さんに聞いてみた。
きっかけは建築家との軽いやりとり…何の植物かは知らなかった
ーーどういった経緯でこの植物を育て始めたの?
2年程前(2019年)に僕の家を建てる時に、庭を作るということで植物を色々と選定していたんです。この植物を直接見たのではなく、たまたまどっかのお店の写真を建築家の人に見せてもらって、「この植物かっこいいですね」って話をしたら「じゃあこれ(庭に)入れましょうか?」みたいな軽い感じで、庭に入れました。

5月14日時点で、約2メートルの高さがあるという河村さん宅の「アガベ・ベネズエラニシキ」。庭を作る際に偶然仲間入りを果たすことになった植物だそうだが、元々は茎すら生えていないアロエのような植物だったという。
しかし2020年の冬頃、中心部から茎が生え、伸びていることに気付いたんだそう。
道の通りに面し分かりやすい所に植えてあるものの、家の出口と反対側でもあり、河村さんはあまり行かない場所だったためか、気付いた時には身長172センチの河村さんの胸元まで茎が成長していたという。
そして「何これ?」と思う河村さんの心境をよそに、茎はさらにグングンと成長を続け、蕾のようなものまで生やし始めた。

隣人も初めての植物の様子を不思議に思っているようで、「これ何なんですか?」といった会話をしたという。しかし、その時はまだ河村さん自身も良く分かっておらず「僕も分からないですね」と答えるしかできなかった。
そしてついに、2021年4月末か5月に入る頃に、開花を確認したのだという。
ーーどうやって100年に一度開花するという植物だということを知ったの?
花が咲いてきた時に調べている中で、妻がTwitterで「何の花ですか?」という内容を投稿したんです。そうしたら友達が「それ、アガベ・ベネズエラだよ」って教えてくれました。そこでネットで調べてみたら100年に一度開花するという植物で「え!?」みたいな…。
この植物を庭に入れてくれた建築家の人に「アガベ・ベネズエラですか?」って確認したら、「そうですよ」と軽く言われました。建築家の人も「僕も咲いているの初めて見ました」って言ってました。

「ええ!?100年に一度なの?」
ーー100年に一度開花するという植物だと知ってどう思った?
本当に知らなかったんですよ。100年に一度開花するという植物だと知って、めっちゃビックリしました。本当に「ええ!?100年に一度なの?」みたいな感じです。建築家の人もそんな開花が珍しい植物だったら入れる際に言ってよと思いました。
ーー開花した花は匂いとかするの?
あんまり匂いはしないです。もちろんクンクンって嗅げば、多少は花粉っぽい匂いはしますけど、でもバラみたいに近くを通ると匂いがするとかみたいなのはないですね。花の匂いともちょっと違います。そもそも花びらもないんで…。

ーー今後どうなるのか知っている?
分からないです。ネットなどで調べても花が咲くのは珍しいという事しか書いていないから、「その後どうなるのか?」というのが本当に知りたくて、不安が大きいです。
現在(5月14日時点)は茎の下方の蕾から咲き始めていて、まだまだ開花が続きそうという期待もありますが、実は現在茎が伸びている親株の下に子株が生えてきていて…。大きくなった親株が咲ききった後どうなっちゃうのか、子株は無事に成長するのかといった心配や不安があります。
また、植えている所が道路に面していて人通りも多く、通行人が「何これ?」という感じで見ているので、もし枯れてしまったらショックだなとも思います。

最初は何の植物かも知らなかったが、100年に一度しか咲かない花と知って、この後どうなるのか心配になってきた河村さん。
どうして100年に一度しか咲かないのか?開花後はどうなるのか?
現在も「アガベ・ベネズエラニシキ」を育てている手柄山温室植物園(兵庫・姫路市)の山田宏樹さんに教えてもらった。
開花した親株は枯れます
ーー「アガベ・ベネズエラニシキ」はどういった植物なの?
アガベ属キジカクシ科の植物です。アガベ属は270種以上種類があります。主に北、南アメリカ大陸の乾燥地帯が生息域です。
先端や縁に鋭いトゲを持つ多肉質の葉を密生し、短い茎はそれに隠れて見えないです。花を咲かせるときだけ、頂から長い花径がまっすぐ伸びます。ひもやたわしの材料として利用され、性質は強健で陽光を好みます。暑さに強く温暖な地域では屋外でも栽培できます。
根際からよく子を出し、ランナーで増えます(親株からつるを伸ばして子株を作る。このつるをランナーと言う)。花が咲きだすと株自体が萎れた感じにはなり、開花した親株は枯れます。
ーーどれくらいの大きさに成長するの?
生育地、個体差にもよりますが、当園で大きいもので直径1.6メートルぐらいです。

ーー育てることは簡単にできるの?
広く栽培されており、気温0℃以下にならなければ比較的容易です。
「100年は大げさかと思います」
ーー100年に1度開花というのは本当なの?
センチュリー・フラワーと言われるようにめったに花が咲かないです。しかし、発芽してから開花まで100年は大げさかと思います。生育地の環境(降水量、温度等)にもよりますが、ある程度株が大きくならないと開花しないため、年数がかかるのだと思われます。20~30年かかることは稀ではないです。

ーー開花させるのは難しい?
ある程度年数が経ち、株が大きくなり、温度、日照時間がそろえば開花すると思われます。アガベ・ベネズエラニシキは比較的開花し易い品種です。
ーー花の寿命はどれくらい?
下から順番に開花し全て終わるまで1~3カ月程度かかります。

ーー開花後はどうなるの?
開花後数カ月で親株は枯れます。株全体(トゲがある多肉質の葉の部分も全て)が茶色く変色して枯れてしまいます。茎が折れるまでにはかなり日数が必要で、当園では花が全て終わる前に株ごと処分しています。
ーー子株が生えてきている状態だと、どうするのが良いの?
親株は茶色く変色してしまえば、株ごと抜いてしまうことになると思います。また、子株の生育に邪魔になるようでしたら、茶色く変色する前にのこぎり等で切除してください。親株は枯れてしまうので、子株を優先してください。

ちなみに、手柄山温室植物園では、4月に2株開花し、今年はもう開花しそうな株はないという。
最後にもう一度、自宅の庭で開花したという河村さんに、今後どうするのかを聞いてみた。
ーー今後この植物をどうしていく予定?
子株が生えてきているので、だったら咲かしてみたいなと思っています。でも100年後は生きていないので、代々河村家に引き継がれていくみたいなのはどうでしょう。「お願いします」って娘たちに言おうかと思ってますけど、そういうのはどうでしょうか?僕の生きた証としてみたいな。

なお、河村さん宅のアガベ・ベネズエラニシキは、地植えのため水や肥料をあげたりといったことはせずに、勝手に育っていき、勝手に開花したのだという。
「きっと環境がいいのだろうということで、下手に環境を変えるよりも同じように育てた方がいいのかな」と、次育てる場合も特に何もすることは考えていないと河村さんは話している。
100年に1度とまではいかなくても、開花まで20年でも十分貴重な瞬間だ。開花が終わるまでに1~3カ月かかるそうなので、まずはこの幸運な時間を楽しんで愛でてほしい。
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