人はなぜ「推し活」にハマるのか?

それを探るべくMr.サンデーが密着したのは、経理事務所に務める北村さん、38才。

好きな選手を追いかけてメキシコまで遠征するという北村さんは、いわゆるプロレス業界全体が「推し」。現在の「イチ推し」は、デビューからずっと見守ってきた田村ハヤト選手だという。

北村さん:
このレジェンドたちに混じって、田村ハヤトくんがいるっているのが、またいいですね。

その目は、まるで母親のように成長を喜びつつ…

北村さん:
緊張しますね。やっぱり選手と話すのは緊張しますよ。

まるで少女のような恥じらいも見せる。さらにグッズ販売では…

北村さん:
いろんなグッズがあるので、いっぱい買わなきゃいけないんですよ。買わなきゃいけないんです。

その使命感で、まだ知名度の低い若手のグッズも大量に買い込む。

 熱心なファンとの違い “徳を積む” とは?

北村さん:
国民的スポーツみたいなのとはやっぱり違って、横目で見られてるじゃないですか、プロレスって。でもやっぱり私たちは、もっとプロレス界盛り上げたいから、そのためにいいところを知ってもらわないとファンは増えないわけで…

あくまでも業界全体のためを考え、まずは自分達が模範的な人間にならねばならないと言う。これを「推し活業界」では「徳を積む」というらしく…

北村さん:
グッズを身に付けるんだったらちゃんとしなきゃ、みたいな。コンビニとかで小銭がちょっとだけ余ったら募金箱に入れてみたりとか。

こうして、「推し」のためなら我が身を律することが出来るのが「推し活」。

焼き芋のプロや農家とも交流 サツマイモ推しの女性

今や、推しの対象となるのは人ばかりではない。

朝食から芋は欠かさない「推し活ビト」。その名も“いもりん”さん、26歳。彼女の推しはサツマイモだ。

いもりんさん:
サツマイモを味わう朝ご飯のことを、私は“いもーにんぐ”って呼んでます。ちなみにこれは2日間熟成させた焼き芋です。

焼き芋の作り方をアップしている彼女のYouTubeには、温度設定、焼き時間から焼いた後、さらに甘くする熟成方法まで、最新の研究を踏まえてまとめられている。

「イモ推し」に目覚めたきっかけは、中学生の頃、毎日家の前を通っていた石焼き芋屋さんの売り声。その素朴でほっこりとした味の記憶が、大学生となり東京の一人暮らしに疲れ切った時、ふと蘇ったという。

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いもりんさん:
食べた瞬間にすっごい落ち着いて、ほっとして「あぁ、これだったんだ、今求めていたものは」と思って…

以来、始まったサツマイモ推しの日々。今では、焼き芋のプロさえ唸らせるほどの推しっぷり!

焼き芋師の野村さん:
いもりんさんはもう、サツマイモを広める、サツマイモ愛っていうのは、すごい熱いものがあると思います。

野村さんが焼く焼き芋の美味しさがきっかけで、今ではお店を手伝う仲になっている。さらに、もう1人…

イモ農家の上迫さん:
いもりんちゃんが来ていろんな話をすることで、何かのヒントになるんです、農家が。

実はこの方、今や「ふるさと納税」で垂涎の的となった、幻のイモの生産者。その噂を聞き、すぐに会いに行ったいもりんさん。

いもりんさん:
推し活っていう言葉は素敵ですね。いろんな推し活があったら、またこう世界が広がるなというか。そんな可能性を感じさせてくれる言葉であり、活動であるなぁって思いました。

推し活なればこその行動力が、人との輪を広げていた。

「推し活」は人生を変える!刀剣推しの男性

3人目の「推し活ビト」は、中村圭佑さん、33歳。時間を忘れ、刀を見つめる日々が続いている。

中村さん:
落ち着きますね。イライラしてたりとか、すごく疲れたなって時でも10分くらい刀を見ているだけで、見終わると身体が楽になってたりとか、不思議な効能がありますね。

きっかけは3年前、娘が産まれた時にとった育児休暇だった。当時、中村さんは大手ゲームメーカーの社員。仕事は順調そのものだったが…

中村さん:
30才ぐらいの人って多分、このままここで働いていていいのかなとか、そういう漠然とした悩みを抱えると思うんですよね、自分もその1人で。その時にもっと自分が楽しめることとか、好きなことっていうのを仕事にしてみたいなぁと考える時期がありまして。

面白いのは、「好きなことがあるからそれを仕事にしたい」のではなく、ゼロから好きになれることを見つけようとしたこと。その時、ふと思いついたのが…

中村さん:
小学生くらいの頃、父にデパートに連れて行ってもらった時に、刀の即売会をやっていたんですね。そこで本物の刀を持たせてもらって。それを見た時、子供ながらに「うわっ、すごいきれいだなぁ」って。

あの感動なら、今も忘れていない!とさっそく刀のお手入れ講座に参加した。やがて、一振りの刀に出会うと、貯金をはたいて購入。刀推しの生活が始まった。

毎晩、会社から帰ると何時間も暗い部屋で刀を眺め続ける日々…

ところがある時、疲れ切って帰宅した中村さんは、安全に保管してある刀を取り出す気力さえないことに愕然とする。

中村さん:
いつでも疲れた時でもパッと見えるような美術館みたいな状態になっていたら、なんかもっといいんじゃないかな、みたいな…

そこで中村さんが閃いたのが、“刀を取り出さずに鑑賞できるケース”。

奥さん:
その頃にはすごい熱量を見て。やりたいことが見つかったなら一回挑戦してみるのもいいのかなぁって。

半年後、自分専用の刀ケースが完成。商品化すると、なんと都内のデパートが展示会を開いてくれるほどの評判に。

中村さん:
収入が下がっても別に、それ以上に楽しいこと、他の人とのつながりとか…。すごく充実してるかなと感じますね。

初めは、夫の「刀剣推し」を訝しがっていた奥さん。ところが2年前、韓国アイドルグループの沼にはまり…

奥さん:
結構楽しく生きてきたつもりだったんですけど、もうね、全然違いますよ。楽しい~!みたいな感じ。価値観とかも結構変わるし、自分の常識みたいなものが変わったりとか、そういうのがすごい、人生豊かになったりね。

中村さん:
間違いないね。

毎日に潤いを与え、人生をより楽しく豊かにする「推し活」。

その底知れない魅力にハマる人は、後を絶たない。

(「Mr.サンデー」4月18日放送分より)