トランプVSニューズウィーク誌

「ニューズウィーク(誌)は廃刊したのかと思った」
トランプ米大統領が29日こうツィートした。

トランプ大統領の公式ツイッターより
トランプ大統領の公式ツイッターより
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そのツィートにはニューズウィーク誌電子版の記事が添付してあったが、その見出しには「トランプは感謝祭休暇をどう過ごすのだろうか?ツイートにゴルフなどだろう」とある。この記事は28日朝(現地時間)に同誌サイトにアップされたものだが、実はこの時トランプ大統領はアフガニスタンで米兵達と一緒に感謝祭を祝っていたのだ。

米兵たちと一緒に感謝祭を祝うトランプ大統領
米兵たちと一緒に感謝祭を祝うトランプ大統領

トランプ大統領は、それを知らなかったニューズウィーク誌をからかったわけだが、逆にこのアフガニスタンへの電撃訪問が、いかに極秘裏に行われたかを裏付ける話だ。

アフガニスタンを極秘訪問

後日各メディアが報じたところによると、トランプ大統領は感謝祭の休日前日の27日はフロリダでゴルフを楽しみ、その夜は別荘で過ごすとホワイトハウスは発表していた。しかし同夜、同大統領は密かに別荘を抜け出し、今だに秘密にされている飛行場へ向かった。

飛行場で待っていたのは大統領専用機「エアフォースワン」ではなかった。専用機はフロリダのパームビーチ国際空港にこれ見よがしに駐機したままだった。トランプ大統領が乗った機種は明らかにされていないが、ただ一人同行したカメラマンの代表取材によると「骨組みがむき出しの機体に、青い革張りの椅子4脚とポータブルトイレが設置されたものだった」とあるので貨物機を代用したものだったと考えられる。

エアフォースワン
エアフォースワン

トランプ大統領はその貨物機でワシントン郊外のアンドリュース空軍基地へ行き、そこで「エアフォースワン」の予備機に乗り換え、新たに12人の同行記者を乗せて離陸した。記者達はどこへ向かうのかは告げられず、スマホなど通信機能のある道具は回収され専用機の所在が分からないように電波を止められた。

13時間後の午後8時半(アフガニスタン時間)「エアフォースワン」はアフガニスタンのバグラム米空軍基地に着陸、トランプ大統領は約1500人の米軍の将兵達と感謝祭の夕食を共にしたが、名物の七面鳥料理は口にすることができなかったらしい。

「そこら中から『一緒に写真を撮ってください』と頼まれてポテトしか食べる暇がなかったよ。七面鳥を食べられなかった感謝祭は初めてだ」と大統領はこぼしたが、必ずしも迷惑そうではなかったという。

「一緒に写真を撮ってください」に応えるトランプ大統領
「一緒に写真を撮ってください」に応えるトランプ大統領

トランプ大統領は基地で、アフガニスタンのアシュラフ・ガニ大統領とも会談して3時間後には再び機上の人となった。専用機はドイツで給油のために着陸したが、そこにはパームビーチで「おとり」のために駐機させていた本来の「エアフォースワン」が飛んできていて、大統領一行は給油の時間を無駄にすることなく飛行機を乗り換えて帰路に着いた。

アフガニスタンのアシュラフ・ガニ大統領と会談するトランプ大統領
アフガニスタンのアシュラフ・ガニ大統領と会談するトランプ大統領

同行記者団が報道を許されたのは専用機がバグラム基地を出発する直前のことで、 この時すでにニューズウィーク誌の記事は電子版のサイトにアップされていたことになる。

フェイクニュースを書いた記者は解雇

同誌では直ちに記事の見出しに「・・・と驚きのアフガニスタンへの将兵慰問」と書き加えてお茶を濁したが、保守系のメディアに「またフェイクニュースだ」と批判され、筆者のジェシカ・ウォング記者は解雇されたとワシントン・エグザミナー紙は伝えた。

ウォング記者は、トランプ大統領ならばゴルフやツィッターに明け暮れるだろうという推測と、過去には24皿の豪華な食事をしたこともあることをまとめて記事にしたが最終的な確認はしなかったとワシントン・エグザミナー紙に告白している。

げに誤報おそるべしか。

【執筆:ジャーナリスト 木村太郎】

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木村太郎
木村太郎

理屈は後から考える。それは、やはり民主主義とは思惟の多様性だと思うからです。考え方はいっぱいあった方がいい。違う見方を提示する役割、それが僕がやってきたことで、まだまだ世の中には必要なことなんじゃないかとは思っています。
アメリカ合衆国カリフォルニア州バークレー出身。慶応義塾大学法学部卒業。
NHK記者を経験した後、フリージャーナリストに転身。フジテレビ系ニュース番組「ニュースJAPAN」や「FNNスーパーニュース」のコメンテーターを経て、現在は、フジテレビ系「Mr.サンデー」のコメンテーターを務める。