「感謝の言葉は、自粛しないでください」

菓子メーカーのカンロが、コロナ禍などを受けて打ち出したメッセージが心に響くと話題になっている。

まずは、そのメッセージを読んでほしい。

出典:カンロ
出典:カンロ
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感謝の言葉は
自粛しないでください。

世の中が変わり在宅時間が増えたことで、
家族の絆が深まったという人がいます。
一方で、逆に家族の間に壁が
できてしまったという人もいます。
家族もずっと一緒にいたら、
イライラしたり煩わしいと思うのは当然。
そんなストレスを最も解消してくれるもの、
それは「ありがとう」という名の糖分です。
もし緊急事態宣言が解除されたとしても、
まだしばらくは、家で過ごす日々が続くでしょう。
けれど、長い人生の中でこれほど
家族と同じ空間、同じ時を共有できる機会は
もうないかもしれない。
だからこの非常時を、ぜひ有意義に使ってください。
一言のありがとうと、一粒のキャンディで、
家族の間に生まれそうになる壁を
静かに溶かしながら。

カンロは昨年から続く新型コロナウイルスの感染拡大や、九州・中部・東北など広範囲に被害をもたらした令和2年7月豪雨などを受け、2020年8月から「キャンディエール」プロジェクトを始めている。

キャンディを通じて「お客様」「社会」「カンロ社員」にエールを送るというもので、メッセージが書ける缶入りキャンディの発売や中高生への寄贈、グミキャンディの売り上げの中から100万円を動物園に寄付するなどの活動に取り組んできた。

さらに今年3月9日からは同プロジェクトの一環として、新たに「家族へ“ありがとう”を伝えよう」キャンペーンを打ち出し、同日に新聞広告を掲載。そこに書かれたメッセージに、ネットから「心に響く」などの声が寄せられていたのだ。
 

新聞広告   出典:プレスリリース
新聞広告   出典:プレスリリース

このキャンペーンは、カンロのTwitterアカウントをフォローして公式のツイートを引用RTすると共に、家族への感謝のメッセージを投稿するというもの。

その中から抽選でオリジナルキャンディをプレゼントする応募期間は既に終了しているのだが、その後も家族への感謝の言葉が次々に投稿されているのだ。さらに4月からは毎月1つの商品ブランドごとに、様々なエールの施策を公開してくという。

キャンペーン後の現在も「ありがとう」の投稿が続いていることから、多くの人の心に響いたことは間違いないだろう。

では、そもそもどのような思いから「感謝の言葉は 自粛しないでください」というメッセージを考えたのだろうか? この言葉に込めた思いを、博報堂クリエイティブセンター統合プラニング局コピーライターの野澤幸司さんに聞いてみた。
 

今の時代「ありがとう」が魔法の言葉になる

――「感謝の言葉は 自粛しないでください。」このメッセージを作ったきっかけは?

コロナ禍で在宅勤務の時間が増えた頃から、離婚や自殺が増えた、という悲しいニュースを頻繁に目にするようになりました。自分自身もまた、今までに味わったことのないストレスのせいなのか、甘いものを食べたいと思うことが増えました。

ひょとしたら今、ストレスを緩和する「糖」が果たす役割はとても大きいのではないか…そんな気づきからメッセージを開発しました。


――家族への「ありがとう」に注目した理由を教えて。

「人と人の距離感」がコロナ以前とは明らかに変わると、必要とされる言葉やコミュニケーションも変わると考えました。

そんな中で、「ありがとう」の価値と必要性は確実に高まったと思います。

なかなか会えない人とのつながりを再自覚し、身近にいる家族とのギクシャクを緩和してくれる。さりげないこの一言が、魔法の言葉になる時代だと思います。


――コロナ禍でイライラが増えていると感じている?

コロナで失った大切なものの一つが「逃げ場」だと思います。

友人に会う時間や、家から出て1人になる時間、行き詰まったときの選択肢が激減したことで、表面上はあまり変わっていないように見えても、少しずつ追い込まれていると思います。先が見えない苦しみだから、でしょうか。
 

感謝の言葉と一粒のキャンディで家族の絆をより深めてほしい

メッセージに込められた思いは分かったが、なぜ菓子や食品のメーカーであるカンロがこのようなプロジェクト・キャンペーンを打ち出すのだろうか?

また「家族へ“ありがとう”を伝えよう」キャンペーンの反響は? カンロの担当者にも聞いてみた。


――今回のキャンペーンの反響は?

好評です。Twitterで応募できるという手軽さもあってか、とても多くの方からありがとうメッセージをいただきました!キャンディをきっかけに穏やかで優しい気持ちでいていただきたいという意図が伝わったのだと思い、関係者一同嬉しく思っています。


――なぜ菓子メーカーのカンロがこれらのキャンペーンをするの?

弊社では日頃から、人々の幸せや優しい気持ちに貢献できる商品として、自信をもってキャンディを開発しています。感謝の言葉とともに一粒のキャンディを召し上がっていただくことで、家族の絆をより深めてほしいと思っています。

また、弊社では日頃から糖に対する正しい理解の啓蒙活動を行っており、コロナ禍における健康維持のためにもキャンディなどで必要な量の糖分を摂っていただきたいとも考えています。
 

カンロでは現在、大切な人を想う気持ちを応援する「金のミルクで小さな春を届けよう」というTwitterキャンペーンを開始している。

感謝の気持ちや、ありがとうの言葉を伝えるのが大切なのは誰もが知っているが、みなさんは日ごろから実行しているだろうか? このような一粒の飴に思いを込めてプレゼントするのもいいかもしれない。

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プライムオンライン編集部
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