聞くことで、心地良さやゾクゾクといった反応を感じさせてくれる「ASMR」
代表的なものの一つがそしゃく音だが、ある動物園が動物のそしゃく音の配信サービスを始めた。

取り組みを始めたのは、120種類・1200頭の動物を飼育している、東武動物公園(埼玉・宮代町)。

2021年3月28日に迎えた開園40周年の記念企画として、音楽配信サービス「LINE MUSIC」での配信を始めたのだ。担当者によると、世界初の試みだという。

東武動物公園のウェブサイトより
東武動物公園のウェブサイトより
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バキ、シャク…実際に聞いてみた

今回配信されたのは、実際に飼育されている7種類の動物(ラクダ、アフリカゾウ、ホワイトタイガー、カバ、キリン、ポニー、アメリカビーバー)のそしゃく音で、聞くとこれが面白い。

LINE MUSICの配信画面にアクセスすると、動物の姿と食べている餌が学習帳のようなサムネイルで確認できるのだが、想像するイメージと実際の音に違いがあったりするのだ。

LINE MUSICの配信画面
LINE MUSICの配信画面

例えば、ホワイトタイガーの餌は鶏肉とあるが、再生すると「バキバキ」という、肉を食べているとは思えない音が聞こえてくる。合間に「グオォ」といううなり声も飛び込んできて、そばに猛獣がいるかのような迫力を感じられる。

ラクダ、キリン、ポニーの餌は同じニンジンだが、聞こえる音は若干違う。ラクダのそしゃく音が「ザクッ」という音なのに対し、キリンは「シャク」とやや控え目な印象。ポニーは餌を飲み込んでいるのか「ゴクッ」という音が特徴的だ。

今回配信される7種の動物。サムネイルはどこかで見た学習帳風(画像提供:東武動物公園)
今回配信される7種の動物。サムネイルはどこかで見た学習帳風(画像提供:東武動物公園)

動物の違いが感じられて興味深く、このそしゃく音にはいつでも聞いていられそうな不思議な魅力がある。

そもそもなぜ、動物のそしゃく音をASMRとして配信したのだろう。音声収録はどのように行われたのだろうか。東武動物公園の担当者に聞いてみた。
 

「動物でもいい音が出せるのでは」

ーー動物のそしゃく音をASMRとして配信したのはなぜ?

Youtubeで動物の食事風景は配信していたのですが、音楽配信などを手掛ける「株式会社つばさレコーズ」さんから、LINE MUSICでも音声を配信できるという話を聞いたのがきっかけです。動物を知ってもらうきっかけになればと思いました。

ASMRを選んだのは、動画配信サイトでも野菜を食べる音などの動画が流行していたためです。動物でもいい音が出せるのでは…と思い、2020年秋から準備してきました。社内にはASMRとは何ぞやというところから説明して、「それ誰が聞くの」とも言われましたが(笑)
 

ーー7種の動物はどのように選んだの?

皆さんが名前を知っていて、肉食動物、草食動物、大型草食動物など、種類もバラエティが出るように選びました。食べている餌もできる限り、違うものになるようにしています。

過去にYoutubeで動物の食事風景は配信した(画像提供:東武動物公園)
過去にYoutubeで動物の食事風景は配信した(画像提供:東武動物公園)

お勧めはホワイトタイガーとアメリカビーバー

ーー収録はどのように行われた?苦労はあった?

飼育担当を交え、ホワイトタイガーなどの猛獣は檻の外から、事故の危険性がない動物は近場で、餌をあげながら収録しました。収録機材はつばさレコーズさんに手配してもらい、テレビロケなどで使う大きな「ガンマイク」を使用しました。

こうした食事中の音をガンマイクで収録したという(画像提供:東武動物公園)
こうした食事中の音をガンマイクで収録したという(画像提供:東武動物公園)

苦労した点は、配信向けに一定の秒数を録音することですね。そしゃくもすぐに終わることがあるので、もぐもぐと食べ続けるときを狙いました。トラなどは餌を長い時間かじるのですが、ウシ科の動物などは反すう(飲み込んだ餌を戻してまた噛むこと)もするので、そこは流石に収録できませんでした。


ーー収録でのこだわりは?餌は特別に用意した?

餌をかみ砕く瞬間が一番いい音がすると考えていたので、そこの収録を重視しました
。アフリカゾウのタケはおやつ、キリンのニンジンはトレーニングのご褒美であげているものですが、その他は基本的に普段から食べているものとなります。

ホワイトタイガーの餌は骨付きの鶏肉!「バキバキ」という音はこれだった(画像提供:東武動物公園)
ホワイトタイガーの餌は骨付きの鶏肉!「バキバキ」という音はこれだった(画像提供:東武動物公園)

ーーこれは聞いてほしいという音はある?

お勧めはホワイトタイガーとアメリカビーバーですね。ホワイトタイガーの餌は骨付きの鶏肉なので、骨をかみ砕く「バキバキ」音が心地良いです。アメリカビーバーは歯が強いので、餌の堅いペレットをかじる「カリカリ」という音が聞こえます。

アメリカビーバーはペレットを「カリカリ」と食べる(画像提供:東武動物公園)
アメリカビーバーはペレットを「カリカリ」と食べる(画像提供:東武動物公園)

音から想像した姿と実物を見比べて

ーー今回のASMRはどのように楽しんでほしい?

動物は体や顎の形状がそれぞれ違うので、そしゃく音から姿を想像してほしいですね。できれば聞いたあと、動物園で実物を見て「こんな風に食べていたんだ」「だからこんな音が出たんだ」などと、動物への興味につなげてもらえればうれしく思います。


ーー今後の目標は?第2弾は考えている?

当園に訪れるお客さまはファミリー層がメインですが、多くの世代に来場していただくきっかけになればと思います。ASMRの第2弾はまだ予定していませんが、もしあるのなら、今度はマニアックな動物のそしゃく音を配信してみたいですね。

動物園で実際の食事風景と見比べても面白いはず(画像提供:東武動物公園)
動物園で実際の食事風景と見比べても面白いはず(画像提供:東武動物公園)

そしゃく音の配信は、動物に興味を持つきっかけになればと行われたものだった。LINE MUSICはサブスクリプションサービスだが、未登録の状態でも冒頭30秒を試聴でき、今回のASMRを聞けるので、体験してみてはどうだろう。
 

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プライムオンライン編集部
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FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。