“異例中の異例” 佐賀県警本部長が交代
2月25日、佐賀県警に松下徹新本部長(51)が着任した。この時期の本部長交代は、異例中の異例となる。
佐賀県警・松下徹新本部長:
この度、急遽着任することになりましたが、県民の安全安心を守る警察活動にいささかな間隙(かんげき)もあってはならず、身の引き締まる思いがしております

背景にあるのは、2月22日に急きょ発表された前本部長・杉内由美子氏(51)の異動だった。
2019年10月、佐賀県の主婦・高畑瑠美さん(当時36)が、山本美幸被告(42)らから木刀などで暴行を受け死亡したとされる、いわゆる“太宰府事件”。

事件前、佐賀県警鳥栖警察署が、遺族から十数回にわたり相談を受けながらも事件を防げなかったことから、警察の対応に批判が集まった。
これに対して、杉内前本部長は…
佐賀県警・杉内由美子本部長(当時):
ご遺族からの鳥栖警察署への一連の申し出の趣旨は、被害者の身の危険を訴えるものではなく、被害者の女性をめぐる金銭貸借トラブルをどうにかしてほしいというものであり…
杉内前本部長は、県警の内部調査の結果に間違いはなく、遺族からの相談内容は「家族間の金銭トラブル」、「警察の対応に不備はなかった」と主張したのだ。

ところがその後、警察の相談記録に遺族が、「山本被告からの脅迫」など金銭トラブル以外の相談もしていたことが判明。杉内前本部長は、内部調査との矛盾を指摘され、批判を受けた。

共産党・井上祐輔県議:
この事実確認結果は、本部長の責任で確認をされたということでよろしいですか?
佐賀県警・杉内由美子本部長(当時):
県警察において確認させていただいた

共産党・井上祐輔県議:
ですから県警察ということは、杉内本部長の責任で確認されたのですか?
佐賀県警・杉内由美子本部長(当時)
県警察において確認させていただいた
共産党・井上祐輔県議:
じゃあ誰の責任でこれを確認した? 誰が責任者ですか?
同じ答弁を繰り返し、かたくなにみえた杉内前本部長の対応。
しかし、複数の関係者は、これは本心ではなかったのでは?と証言した。
内情を知る関係者:
杉内さんは、せめてもっと丁寧に遺族に説明できないかと考えていたようだ

「組織」と「遺族」で揺れていた?
杉内氏が佐賀県警本部長に着任したのは、瑠美さんが亡くなる2カ月前。
佐賀県警・杉内由美子本部長(当時)
皆さんはじめまして、本日付で佐賀県警本部長を拝命した杉内と申します
大阪府警初の女性部長に抜てきされるなど、輝かしいキャリアを重ねてきた杉内氏が特に力を入れていたのが、「犯罪の被害者や遺族への支援拡大」だった。

それだけに、太宰府事件の遺族への対応は苦慮していたという。
内情を知る関係者:
遺族に対しても、ちゃんと対応したいのにと悩んでた。杉内さんは、体力的にも精神的にも参っていた
「組織としての結論」と「遺族に寄り添う気持ち」の狭間(はざま)で揺れていたとみられる杉内前本部長。

佐賀県警は、今回の異動について「杉内氏の体調不良」としている。
遺族は「トップがいくら変わろうと…」
急きょ着任した松下新本部長は…
佐賀県警・松下徹新本部長:
福岡県太宰府市における傷害致死事件。本件は、最も重要な案件であります

松下新本部長は、太宰府事件を最重要案件と発言した。しかし…
佐賀県警・松下徹新本部長:
一連の申し出の状況を総括的に見てみますと、被害者の女性をめぐる金銭貸借トラブルをどうにかしてほしいという趣旨で、被害者の身の危険を訴えるものではなく、当時、鳥栖警察署としては、遺族からの申し出に応じた対応を行ったところではあります
松下新本部長も、これまでの佐賀県警の主張を繰り返すだけだった。

松下新本部長の会見を受けて遺族は、「トップがいくら変わろうと何も変わらない」とコメントしている。

(テレビ西日本)
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