連日、新型コロナウイルスの報道が続いているが、県内で発生した3つのクラスターの現場にカメラを向け、関係者から色々な話を聞かせて頂いた。
今回は、鹿児島・姶良市の病院で起きたクラスターから見えた教訓などを伝える。

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加治木記念病院・上津原甲一院長:
本当に苦悩の1カ月でした。いかに感染を抑えるか、職員の気持ちが萎えないか。暮れも正月もありませんでしたからね

姶良市にある加治木記念病院の上津原甲一院長。
”これまで体験したことのない、1カ月”…それは2020年12月15日、職員1人の感染が判明したことから始まった。

病院ではこの日から外来を休診し、翌日には全ての職員と入院患者の合わせて316人がPCR検査を受けた。この時は全員、陰性だった。
しかし2日後、別の職員が体調不良を訴え、再度検査をしたところ、「陽性」が判明。病院内はパニックに陥った。

加治木記念病院・上津原甲一院長:
PCR検査でマイナス(陰性)でも(新型コロナウイルスを)持っている人がいた。3回マイナスでも、4回目に出た(陽性になった)人もいた。1回マイナスだったからと安心はできない。それが一番やっかいなところ

結局、病院では累計で1,288回ものPCR検査を繰り返し、最終的には1月4日にかけて、職員7人と患者6人の合わせて13人の感染が確認された。

最初に感染が発覚した職員が働いていた認知症病棟。
職員は県外からきた人との接触もあった。実は、全ての感染者がこの認知症病棟から出ていた。

病院では入館制限や消毒、パーティションを設置するなど、できる対策はとっていたという。
しかし、一度 病院内にウイルスが持ち込まれると、感染は広がり、職員自体が接触者になって、看護にあたる人員が不足。
その中での患者のケアと、医療体制は崩壊寸前だった。

近隣の店に風評被害も

病院がさらに頭を悩ませた問題があった。

加治木記念病院・上津原甲一院長:
(近くの)クリーニング屋さんのところに電話がきて、「病院の衣類を扱っていないか」と。「もし扱っていたらクリニーニングには出さない」というような

「心ない声」職員の中には「家族にも感染するのではないか」と自宅にも帰らず、病院が借り上げた宿泊施設から通ったり、人との接触機会を減らすため、食事や休憩を車の中で済ませる職員もいた。
精神的に追い込まれた1カ月。病院では、「患者のために」を合い言葉に踏ん張ってきたといいう。

幸い、感染した人たちは全員、別の病院に移って治療を受け、快方に向かっている。
加治木記念病院では最後の患者が発症してから4週間が経過した1月末、クラスターが収束と判断。
これを受けて休診していた外来も2月1日から再開していて、病院では「今回の経験を生かしながら引き続き、地域医療を支えていきたい」と話している。

上津原院長は最後に、こんな思いを語ってくれた。

加治木記念病院・上津原甲一院長:
今回は職員の頑張りを見ていて、いわゆる連携・絆ができてきた。人が心を持つ限りは、コロナに勝つんだというのを感じた。感染を起こしたことにいろいろ言われるかも知れないけれど、これだけ医療に立ち向かっていることを知って頂ければありがたい

(鹿児島テレビ)

鹿児島テレビ
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