元々は食品向けの冷凍庫

新型コロナウイルスのワクチン接種に向け、全国各地で受け入れ態勢の準備が進んでいるが、ワクチン輸送の際に重要となってくるのが”超低温での保管“だ。
最初に使用されるファイザー社のワクチンの場合には、マイナス75度での保管が必要だ。

こうした中、神奈川県相模原市の冷凍庫メーカー、カノウ冷気では、ワクチンを低温保管する超低温冷凍庫の検品を進めている。

超低温冷凍庫(画像提供:カノウ冷機)
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超低温冷凍庫は、カノウ冷気がデンマークの企業に発注し製造したもの。
政府に供給する超低温冷凍庫は、LAB8SCというタイプのもので容量は90リットルタイプ。
マイナス80度まで低温保存でき、ファイザー社のワクチンのマイナス75度の保管も可能だ。

(画像提供:カノウ冷機)

検品の内容は外観のキズチェック・通電検査・冷却テスト最高到達点の確認など各機器類の正常な動作確認で、最大で1日50台の検品をしているという。

超低温冷凍庫の製造経緯について、カノウ冷機の叶伸一社長は、
「デンマークに製造を依頼している経緯は、2003年ころにさかのぼります、元々は食品向けの冷凍庫の製造から始まり、徐々に医療向けの製造も依頼するようになりました。この度コロナワクチンの保存庫として利用される事にビックリしています。」と話す。

元々は、新型コロナワクチンの保管を見越してのものではなかったようだが、国家をあげての大プロジェクトに携わることについて聞くと、「ワクチンの有効性を守る為に、品質の徹底した管理が必要なので非常に責任感を感じております。安心してワクチンの保管ができるように医療機関に届くまでが私たちの責任だと認識しています。一人でも多くの人にワクチンが行きわたるように社員一丸となって頑張ります。」と語った。

輸送用の保冷ボックスを開発

一方、ワクチンの輸送に向けて、パナソニックではマイナス70度の保冷ボックスを開発した。

真空断熱保冷ボックス「VIXELL(ビクセル)」(画像提供:パナソニック)

「VIXELL(ビクセル)」という名の真空断熱保冷ボックスでドライアイスなどの保冷剤を用いてマイナス70度以下の環境を最長18日間保持できる。電源も必要ない。
 

マイナス70度の環境を最長18日間保持(画像提供:パナソニック)

タイプは2種類あり、大きいボックスは120リットル、小さいボックスは57リットル。
ボックス内に収納する蓄熱ユニットや保冷剤を交換することにより、マイナス70度、マイナス20度、2度~8度など様々な温度帯に対応することが出来る。
3月末までにサンプルの提供を開始し、早ければ4月頃の商品化を目標にしているという。

この保冷ボックス、国内外からすでに多くの問い合わせがあり、今後、ワクチンの輸送に使用されそうだ。では、保冷ボックスの生産体制はどうなっているのか?また、どういった仕組みなのか?パナソニックの担当者に詳しく話を聞いた。

抗がん剤など医薬品輸送用として開発

――保冷ボックスを開発したきっかけは?

新型コロナワクチンの保冷用に開発したのではなく、2018年に抗がん剤など医薬品輸送用の保冷ボックスとして開発をスタートしました。
昨年末に、社内外からコロナワクチンの輸送に使用できないのか?というお問い合わせを頂き、マイナス70度以下の温度帯に対応するボックスの開発を昨年12月にスタートしました。


――保冷の仕組みは?

一般的な保冷ボックスは板状の真空断熱パネルを組み合わせて使用していますが、その場合パネルの継ぎ目から冷気が漏れるという課題がありました。VIXELLは新たに開発した真空断熱材を箱型に一体成型することにより、継ぎ目からの冷気漏れの課題を克服し、保冷性能を高めております。これにより、ドライアイスの消費量が抑えられ、最長18日間マイナス70度以下を維持することができました。

温度の比較(画像提供:パナソニック)

――夏の暑さにも耐えられる?

保冷時間は多少短くなりますが、技術的には40度の外気温までなら耐えることができます。
※ドライアイスが急に気化する恐れがあるので、直射日光のあたる場所や高温となる車の中などで保管はしないでください。

生産体制などの整備はこれから

――医療機関や自治体から問い合わせは?

国内外から非常に多くのお問い合わせを頂いています。

――全国に行き渡りそう?

生産体制等の整備はこれからですが、できるだけ多くのボックスを届けられるようにしたいと思っています。


――国家をあげての大プロジェクトに携わることについては?

先に申し上げました通り、新型コロナワクチンの輸送に特化して開発したのではありません。
ただ、もしワクチン輸送の際のお役立ちになるようであれば、嬉しいです。

 

厚生労働省によると、2月1日の時点で、ほぼすべての都道府県から、超低温冷凍庫の設置場所の調整が済んだとの報告を受けているという。
パナソニックの保冷ボックスの供給については、早ければ2月下旬と言われる医療従事者の接種には間に合わないことになるが、課題とされるファイザー社のワクチンの超低温保管に向けての準備は進められている。