森林に囲まれた街で減少する林業の担い手…国産材の活用をもっと進めたい
「林業や木材業に対するイメージってどんなものですか?」社長は取材でこう聞いてきた。
岐阜・中津川市の丸山大知さん、41歳。創業104年になる「丸山木材工業」の社長だ。
「林業や木材業のイメージを変えたい」との思いが、次から次へと言葉で飛び出す。
今、ヒノキの葉から抽出した成分を活用したシャンプーを開発し、業界に対する印象を変えようとしている。

「物心ついた時から家業を継ぐ気でいた」と話すが、子供の頃はガソリンスタンドや保育園の運営など、「木材業」という印象はあまりなかったという。
東京の大学を卒業し、2002年に大手の「住友林業」に就職。5年目にカナダのバンクーバー事務所で1年勤務したあと、2007年に丸山木材工業に入社した。

会社のある中津川市は、全体の約8割を森林が占める木に囲まれた街。ここで育つ「東濃ヒノキ」は淡いピンク色が特徴で香り高く、20年に一度行われる伊勢神宮の式年遷宮で、御用材としても使われている質の高い木だ。

質の高いヒノキがありながらも、街は林業の「後継者不足」に不安を抱えている。市内の林業従事者や、製材・販売等の木材関連事業者数は、この10年ほど横ばいだ。
そこで、衰退しないように、まずは東濃ヒノキを使ってもらおうと、市で生産されたヒノキを使って建てた住宅には補助金を、若い担い手を育てるよう資格を取る人に助成金を、県運営の林業など森林や木材について学ぶ「森林アカデミー」の授業料は減免を…と補助金を前面に出す施策が多い。
2021年度には東京・港区と協定を結び、東濃ヒノキを売り込もうと計画中だが、後継者不足の不安は尽きない。
10年前に比べると「東濃ヒノキの魅力を知ってもらおう」「たくさん使ってもらおう」という動きや、利用するすそ野も広がっているが、丸山さんは「まだまだ足りない」と話す。
ヒノキを活用したシャンプーやコンディショナーで「木を使う」

丸山さんは丸山木材工業に入社後、営業や不採算事業の閉鎖をする傍ら、グループ企業の把握に努めてきたが、減り続ける林業の担い手を増やすために、地元にある立派な国産材の利用をもっと国内で進めたいと、新しい事業に次々と着手してきた。
2016年には、製材に力をいれようと工場を新設。

そして今、新会社「meettree(ミート・トゥリー)」を立ち上げ注力しているのが、ヒノキのシャンプーやコンディショナーの製造・販売だ。
建材としては使えないヒノキの葉や枝から抽出した精油を配合し、香り高い製品に仕上げた。
商品にシャンプーやコンディショナーといったものを選んだのには、林業とかけ離れた商品を開発することで、今まで関心がなかった人たちのイメージを変えたいという思いがあった。
「社会から必要とされる企業に」…事業化の資金を「Makuake」で募集

開発・事業化の費用は、「Makuake」で50万円を目標に、11月28日から2月27日の期間で募っているが、12月23日現在、すでに250万円が集まっている。(meettreeのプロジェクト)

4,488円から支援でき、meettreeのシャンプーやコンディショナーがリターン商品となっていて、集まった資金の一部で、植林や、地元の子供たちに木の魅力を知ってもらう活動に充てる。
また、中津川駅近くにカフェも建設中で、店ではこうしたトイレタリー商品の販売の他、中津川名産の栗きんとんを使ったモンブランなど、地元のものを楽しめるようにするという。
今は2月の正式オープンに向けて、建設が進められている。

「今はものづくりの楽しさを味わっている」と笑顔を見せる丸山さん。林業を担う企業として活動を続けていくことで「社会や地域から必要とされる企業でありたい」と目を輝かせた。
【中津川市内の林業就業者数と木材関連事業者数の推移】
・林業就業者数
2015年76人、 2016年75人、 2017年70人、 2018年74人、 2019年76人
・木材関連事業者数
2016年51社、 2017年54社、 2018年53社、 2019年52社、 2020年49社
(東海テレビ)