「水を吹くフグ」の動画が話題

Twitterに投稿された「水を吹くフグ」の動画がほっこりすると話題になっている。

バックヤードからこんにちは。コンゴウフグです!みんな揃って水吹き。威嚇してるのか…?なんにせよ朝からほっこりです。

とのコメントを12月17日に投稿したのは、福岡市の水族館「マリンワールド海の中道」。
あわせて“3匹のコンゴウフグがカメラに向かって水を吹き続ける様子”を捉えた動画を掲載した。

Twitterユーザーからは「かわいい」「ほっこりする」といった感想だけでなく、「威嚇なの?」などと、“水吹き”という行動がどのような意味があるのか、気になっている投稿も見受けられ、8万件のいいねが付くなど大反響。

気になっている人も多い、コンゴウフグの“水吹き”。どのような意味があるのか?
「マリンワールド海の中道」の担当者に話を聞いた。
 

コンゴウフグの生態

――コンゴウフグはどんな生き物?

コンゴウフグは、フグ目ハコフグ科に属し、青森~種子島の太平洋沿岸、新潟~長崎の日本海沿岸、琉球列島やインド・太平洋に分布しています。

外見は、目の上の“一対のトゲ”、腰付近の“一対のトゲ”があるのが特徴的で、30センチほどまで成長します。トゲがあることに加え、体の表面が硬い骨質板で覆われており、身を守るために有効だと考えられています。
 

コンゴウフグ(提供:マリンワールド海の中道)
コンゴウフグ(提供:マリンワールド海の中道)
この記事の画像(5枚)

――毒はある?

「フグ=体内に毒」というイメージがあるかと思いますが、コンゴウフグを含む、ハコフグの仲間には体内に毒はありません。

しかし、外敵から襲われた時など、驚いたり、興奮したりすると、体の表面から粘液毒を出します。

常に毒を出しているわけではないので、他の魚と同じ水槽で飼育することもありますが、何かの拍子に体の表面から毒を出し、水槽内の魚を全滅させることもありますので、飼育には注意しています。

――名前の由来は?

突き出したトゲが、古代インドの法具「金剛杵(こんごうしょ)」に似ているため、コンゴウフグという名前が付いたようです。

英語名は「Longhorn cowfish(長い角の牛魚)」。

来年2021年の干支、丑(ウシ)にかけて展示する予定で、現在、裏側(バックヤード)で飼育しています。

金剛杵(イメージ)
金剛杵(イメージ)

――コンゴウフグのどのようなところに魅力を感じている?

突き出たトゲのある可愛い顔つき、くりくりした大きな目、口をとがらせて何か言いたそうな顔つき、そして、人慣れするため、人が通るたびに「エサください」と顔を上げ、愛嬌をふりまくところです。

エサをねだる時に水を吹く

――”水吹き”はどんな時にする?

エサをねだる時です。

コンゴウフグなどのフグ類は人に慣れていますので、空腹の際には顔を水面の上に上げて、エサをねだります。

ただ、普通に泳いでいても、スタッフが水槽に近づきますと、このような行動を取ります。「スタッフ=エサをくれる」という認識になっているのだと思います。
 

――「水吹き」にはどのような意味がある?

過去にも、同じフグの仲間であるハリセンボンの「水吹き」がバズったことがあります。

フグの仲間に加え、カワハギやモンガラカワハギの仲間は、砂の中に隠れているエサを探して、砂に向かって水を吹く行動が見られます。また、呼吸の際にエラを動かし、ハフハフしているため、顔を水面の上に上げると、水を吹いているように見えるのだと思います。

このような行動は、普段から水中ではしているのですが、水中では水の流れが分からないため、気付かないのだと思います。
 

――簡潔に言うと、「エサをねだりに水面の上に顔を出した際、呼吸のタイミングでエラが動くと、口から水が出る」ということでよい?

はい。そのように考えていただいて大丈夫です。

水を吹くコンゴウフグ(提供:マリンワールド海の中道)
水を吹くコンゴウフグ(提供:マリンワールド海の中道)

専門家にも見解を聞いてみた

コンゴウフグの“水吹き”の意味。フグに詳しい専門家、「日本産フグ類図鑑」の著者で国立科学博物館の名誉研究員、松浦啓一さんにも見解を聞いた。

(提供:マリンワールド海の中道)
(提供:マリンワールド海の中道)

――コンゴウフグの”水吹き”にはどのような意味がある?

ツイッターの映像だけでは判断は難しいですが、恐らく、コンゴウフグの幼魚はエサをもらうことに慣れているので、人が近づくと水を吹いて、エサを要求しているのではないかと思います。

 

Twitter上でバズっている、コンゴウフグの“水吹き”。
水族館、専門家の見解は一致していて、この行動は「エサのおねだり」を意味するのだという。
マリンワールド海の中道では来年2021年にコンゴウフグの展示が始まるということなので、間近で「エサのおねだり」を見ることができるかもしれない。
 

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プライムオンライン編集部
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