コロナ禍で5人に1人が「睡眠の質が低下」

新型コロナウイルスの感染拡大で生活に変化が生じる中、5人に1人が“睡眠の質の低下”を感じていることが「ウーマンウェルネス研究会」の調査で分かった。

女性の健康力向上を通した社会の活性化への貢献を目指す「ウーマンウェルネス研究会」が今年7月(22日~29日)、コロナ禍の睡眠に関する意識について、首都圏在住の男女882人(20歳〜59歳)を対象にインターネット調査を行ったところ、感染拡大後に「睡眠の質がとても悪くなった」(4.4%)と「やや悪くなった」(17.9%)と、悪くなったと回答した人が合わせて22.3%に上ったのだ。

また、「以前と変わらず悪い」と回答した人は40.9%で、合わせると63.2%。“睡眠の質の低下”を感じているのは全体の6割を超える結果となった。
 

画像提供:ウーマンウェルネス研究会
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この“睡眠の質が悪い”と感じている人の悩みとしては、「眠りが浅い」(49.2%)をはじめ、「夜中に何度も起きる」(43.3%)、「寝ても疲れが取れない」(41.7%)、「起床時、熟眠感がない」(40.6%)といった回答が上位を占め、深い睡眠がとれていない傾向がうかがえるという。

画像提供:ウーマンウェルネス研究会
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睡眠の質が低下した原因については、「不安やストレス等で考えごとが続く」という回答が50.3%で最も多く、次いで「遅寝遅起きの習慣化」(37.4%)や「生活リズムの乱れ」(33.2%)など、新型コロナウイルス感染拡大以降の生活リズムの変化に起因する回答が目立った。

画像提供:ウーマンウェルネス研究会
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また、外出自粛や在宅時間の増加による運動不足の影響か、睡眠の質が低下した人の約8割(78.1%)が、「血行不良を実感」していることも判明した。

画像提供:ウーマンウェルネス研究会
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コロナ禍のこの1年は生活の変化が大きく、その影響もあってか5人に1人が感じている「睡眠の質の低下」。具体的にはどのような原因が考えられるのか?また、どのような対策をとればよいのか? 

今回の調査の監修医師で、「国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所」睡眠・覚醒障害研究部の部長、栗山健一さんに話を聞いた。

コロナ禍で睡眠の質が低下した“3つの原因”

――コロナ禍で5人に1人が「睡眠の質の低下」を感じている。どのような原因が考えられる?

新型コロナウイルス感染拡大後に見受けられた睡眠状況の変化として、睡眠時間は確保されているにもかかわらず、睡眠の質に不満足な人が多い傾向が見られます。在宅時間の増加に伴い、ベッドで過ごす時間が長くなると、睡眠の質が悪くなる傾向があります。 

その原因としては以下の3つが挙げられます。

<1>新型コロナウイルス感染不安やストレスで考え事が続く 
<2>外出自粛・在宅勤務による遅寝遅起き化・血行不良
<3>季節変化に伴う睡眠への影響

 

――1つめの「新型コロナウイルス感染不安やストレスで考え事が続く」。これはどういうこと?

感染者の増加など、暗い情報に触れることで生じる不安・ストレスは睡眠に悪影響を及ぼします。

不安やストレスで寝る前まで考え事が続くと、交感神経が活発な状態が続き心身が睡眠モードへ切り替わりにくくなり、なかなか寝付けない、ぐっすり眠れない、といった睡眠不調が生じます。

また、生活の変化によって、「自分の時間が減った」「在宅勤務で仕事とプライベートのメリハリがつかない」「家事分担や育児など家庭の悩みごとが増えた」など、従来のルーティンが守れないという生活様式変化のストレスも要因のひとつになっています。 

――2つめの「外出自粛・在宅勤務による遅寝遅起き化・血行不良」。これは?

コロナ禍の外出自粛・在宅勤務は生活リズムを大きく変えました。それに伴い、睡眠に充てる時間にも変化が生じたことで、多く見受けられるようになったのが、「床上(ベッド)時間の延長」と「遅寝遅起き化」です。

ベッドにいる時間が長くなると、睡眠が浅くなるだけでなく、ベッド上で考え事をする機会が増えるため、睡眠の悩みが生じやすくなります。

また、遅寝遅起きは、眠りが浅くなることを助長するのに加えて、身体の睡眠モードへの切り替えにも作用します。

人は、疲れた脳を休ませようとして深部体温が低下すると、眠気が訪れる仕組みになっているのですが、睡眠が後ろ倒しになることに伴い、深部体温の低下のタイミングも後ろにずれてきます。

結果的に、いざ通常の生活リズムに戻った場合にも、深部体温が低下しないため、なかなか眠れないというだけでなく、朝起きられないといった心身の不調につながります。

例えば、在宅勤務で夜遅くまでメールチェックをしたり、朝ぎりぎりまで寝る習慣が定着すると、遅寝遅起き化を招くので注意が必要です。 

さらに、外出自粛・在宅勤務のため運動不足が進み、血行不良を実感されている方も多いのではないでしょうか。血行不良は入眠を促す体温調節を妨げる要因となります。

――では、3つめの「季節変化に伴う睡眠への影響」とは何?

睡眠時間の長さは、季節の移ろいに伴って変動します。

冬に向けて日照時間が減っていくと、それに反して睡眠時間は伸びる傾向にあります。これは、冬の間の活動量が減り、睡眠時間が伸びる“冬眠”に似た機能が人間にもあるためです。

秋は夏と冬の境目となり、睡眠時間が伸びてくる転換期のため、「日常的な眠さ」「疲れ・気怠さ」といった感覚が増します。

そのため、心身の不調を感じやすい時期になるのです。 
さらに今年は、コロナ禍におけるストレスや遅寝遅起き化の影響で睡眠の質が悪くなる傾向があり、睡眠不調に拍車がかかる可能性があるため、注意が必要です。
 

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冬に睡眠時間が延びる理由

――「冬は睡眠時間が延びる」。この理由を詳しく教えて

冬は日照時間が短くなることで、メラトニンの分泌時間が延び、これに伴い、睡眠時間も延長する可能性が推測されています。

こうした睡眠時間の季節性変化は、哺乳類における冬眠の名残とする説もあり、これが極端な表現をとるものが「冬季うつ病」(季節性うつ病の典型)と考えられています。

冬季うつ病では、気分の低下とともに活動量が減少し、睡眠時間の延長(過眠)や、食欲の増進も認められ、まさに冬ごもりする熊と類似のパターンを呈します。

これは、生物学的見地に立つと、食料も減り、極度な低温環境は恒温動物が活動する環境に適さないため、エネルギーを保存するための適応行動とも考えられます。

冬の睡眠時間の延長は、主に朝の目覚めの遅れと関連しており、遅起き傾向が強い人ほど睡眠時間は延長しやすいことも指摘されています。

――睡眠時間が延びれば睡眠の質は高くなるのでは?

睡眠の質の季節性変化に関しては詳細に調べられていませんが、先に述べたように、朝布団から出づらくなることから、だらだらと床の中で過ごす時間が延びると浅い睡眠が増え、睡眠の質は低下しやすい状況と言えます。

主観的な睡眠の質は、朝の目覚めの良さと関連する部分もあり、一般的には睡眠の質が低下したと感じやすくなると思います。

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コロナ禍の冬…睡眠の懸念点と対策

――本格的なコロナ禍の冬は今回が初めて。睡眠で懸念されること、気を付けるべきことは?

緊急事態宣言が発令し、在宅勤務、自宅待機が推奨された時期には、多くの方は睡眠時間(床上時間)の延長とともに、遅寝遅起き傾向が強まりました。

中国やヨーロッパの調査によると、睡眠の質の低下は、こうした床上時間の長さと遅寝遅起きが一因であることが示されております。

冬は、日照時間の減少とともに遅寝遅起きが強まりやすく、さらに新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、巣ごもり傾向が強くなると、先に示した睡眠パターンの季節性変化をさらに増強することになり、眠りの質が低下する可能性が高まります。

新型コロナウイルスの感染拡大により、人々の不安感は強まると思われ、こうした不安も睡眠の質を低下させる要因となることから、注意が必要と思われます。

――コロナ禍の冬に睡眠の質を上げるためにはどのような対策が必要? 

規則正しい生活を送ることが大事です。

特に、朝の起床時刻をできるだけ遅らせることなく、「起床と同時に朝日を十分に浴びること」が重要です。

朝の日光浴が、睡眠・覚醒パターンを遅寝遅起きにずれることを予防し、かつ日中のセロトニン利用率を高めることに役立ちます。

「日中もできるだけ明るい環境で過ごし、また適度な運動習慣を持つこと」も重要です。運動量が減少すると、その分睡眠必要量は減少し、睡眠時間が延びるのと対極に、睡眠は浅くなる(睡眠の質が低下する)傾向になります。

また、「新型コロナウイルスに関する情報収集も最小限とし、不必要に不安を高めすぎない工夫」も、睡眠の質を保つためには重要です。

個人で対策できる部分は十分に行い、個人で対策が立てられない部分は割り切ることが、不安をコントロールする現実的な方法です。

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スムーズな入眠を促すための“2つの習慣”とは?

「ウーマンウェルネス研究会」は、今回の調査結果と合わせて「スムーズな入眠を促すための”2つの習慣”」を紹介している。

1つは「おやすみ前に約40℃で目元を温めてリラックス」。

蒸しタオルやホットアイマスクなどで目元を温めてリラックスすることで、副交感神経活動が高まり、手や足の皮膚の温度が上がる。

すると、身体の熱が外に逃げる「放熱」が促進されるため、寝つきがスムーズになり、睡眠の質向上も期待できるという。人が快適に感じる40℃程度で目元を温めてみると、睡眠の質向上が期待できるようだ。

睡眠前に目元を温めるのがポイント(画像はイメージ)
睡眠前に目元を温めるのがポイント(画像はイメージ)

もう1つは「就寝1時間前に、炭酸入浴で血流を促して体温をコントロール」。

寝る1~2時間ほど前に、ぬるめのお風呂で体温を上げ、入浴後に体の熱を逃がすことで、寝つきもよくなる。

効率よく身体を温めるには、炭酸ガスの入浴剤を入れた40℃くらいのお湯に10分程度浸かる「炭酸入浴」がおすすめだという。

お湯に溶け込んだ炭酸が皮膚の血管を拡張して血流をよくするため、お湯の熱が効率的に身体に伝わり、短時間で身体を温めることができる。また全身の血行がよくなることで、疲労回復にもつながるようだ。

なお、熱すぎるお湯は交感神経を刺激してしまうため逆効果。40℃くらいの心地よいと感じるお湯にゆったり入ることで、リラックス効果も期待できるという。

炭酸ガスの入浴剤を入れたお湯に10分程度浸かるのもおすすめ(画像はイメージ)
炭酸ガスの入浴剤を入れたお湯に10分程度浸かるのもおすすめ(画像はイメージ)


コロナ禍で5人に1人が感じている「睡眠の質の低下」。感染拡大が収まらない現在、これを実感している方は、まずは規則正しい生活を送ることを心掛けてほしい。そして、スムーズな入眠を促すための2つの習慣も試してみてはいかがだろうか。

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プライムオンライン編集部
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