もちろん、幼児期の教育が犯罪を直接防ぐと断定できるわけではありません。しかし、衝動的な行動を抑える力や、自分の行動の先を見通して考える力は、思春期以降の様々な場面で重要になります。
研究者たちは、幼児期に培ったこうした力の違いが長い年月をかけて人生の選択に影響した可能性があると考えたのです。
例えばハイスコープカリキュラムでは毎日、「今日は何をするか考える」→「実際にやってみる」→「どうだったか振り返る」という「プラン(計画)・ドゥ(実行)・レビュー(振り返り)」の活動が行われます。
子どもは自分で遊びや活動を選び、自分なりの目標を立て、それを実行するのです。さらに活動後には振り返りも行います。
ナーサリースクールでは、そうした体系立てたカリキュラムはないものの、子どもの自発性を重んじる中で、自然と自分たちで計画したり振り返ったりする力が身に付いた可能性があります。
一方、ダイレクトインストラクションでは教師が決めた内容を子どもが学ぶ時間が中心になります。学習効果はありましたが、プラン・ドゥ・レビューをする力は育たなかったと見ることができるのです。
実行機能の大切さ
読者の中には、ハイスコープカリキュラムやナーサリースクールで培われた力は、「実行機能」に関連していると感じる人がいるかもしれません。
あらためて説明すると、実行機能とは、
<実行機能>
・抑制(脳の抑制する力):
目標達成と関係のない情報や衝動的な反応を抑制する
・ワーキングメモリ(脳の情報処理する力):
ある情報を処理しながら、必要な情報を保持する
・切り替え(脳の切り替える力):
思考や行動を柔軟に切り替える
といった能力の総称です。

