地震や豪雨などの災害が相次ぐ中、自分自身の防災だけでなく、「離れて暮らす親が心配だ」という不安はなかなか拭えない。
これまで年間700件、累計4000件を超える介護相談に応じてきたNPO法人となりのかいごの代表・川内潤さんは「親の防災意識を高めることをゴールにしないでください」と話す。
長年、介護の視点から高齢者とその家族の関係を見守り続けてきた川内さんに解説してもらう。
防災意識を変えることをゴールにしないで
私が代表を務めるNPO法人「となりのかいご」では、民間企業から依頼を受けて、その企業で働いている従業者向けに介護セミナーや個別相談を行っています。そのなかで「親と防災」への関心が最近高まっていると感じます。
昨今、災害が多種多様になっているからか、「離れて暮らす親が心配です」といった内容の相談を受けることが増えています。
「築40年以上の実家が古くて、いつ崩れるかわからない」
「親に防災意識を持ってほしい」
「何度言っても備えてくれない…」
そんな不安や悩みを抱えている人は少なくありません。実際、私のもとにも「どうしたら親の防災意識を高められますか」という相談も寄せられています。
そのとき私は、少し違う視点でこうアドバイスしています。
「きっとそれは難しいので、親の防災意識を変えることをゴールにしないでください」
長年大切にしてきた価値観や生活習慣は、家族に言われたからといって簡単に変えられるものではありません。
こんなエピソードがあります。
災害支援で宮城・南三陸を訪れたときです。2011年の東日本大震災のとき、デイサービスが高台にあったことで助かった夫婦がいました。ただ、ライフラインの復旧までは時間がかかりそうだったため、ご夫婦のお子さんから「近くに引っ越さないか」と提案されたようです。しかし、そのご夫婦はこれまで海の世話になって生きてきたから、と離れることはなかったようです。
子どもには危険な場所に見えても、本人にとっては、長年の暮らしや大切なつながりがある場所なのです。
親のため?自分が安心できる?
子どもからすれば「危険なのだから引っ越してほしい」と考えるでしょう。ですが、その人にとって長年暮らしてきた環境には、子どもには測りきれない価値があります。

