高齢者による運転で事故が起こるニュースを見ると、「自分の親は大丈夫だろうか」「そろそろ免許返納かな」と考えたりするだろう。
だからと言って、車を取り上げるだけでは問題解決はしない。暮らしている地域によるが親にとって車は、買い物や通院、友人との交流など、生活を支えている大事な移動手段でもある。
NPO法人となりのかいごの代表・川内潤さんは、免許返納を迫る前に、「買い物は?」「通院はどうする?」など、免許を返納した後の親の生活を具体的にイメージしておくことが大事だと語る。
著書『介護前夜の教科書 親と自分の人生を壊さないための備え』(講談社)から、一部抜粋・再編集して紹介する。
家族が「早く返納して」と思っても
Q)親が免許返納に後ろ向き……家族はどう接するべき?
A)無理に取り上げる前に、安全確保と返納後の生活を一緒に考える
「アクセルとブレーキを間違えて……」。高齢者が起こす事故に触れるたび、親の運転が心配になる人は少なくないでしょう。
事故は本人だけでなく、歩行者や同乗者など、誰かの人生を一瞬で変えてしまうものです。だからこそ、「早く免許を返納してほしい」と家族が思うのは当然です。
しかし、運転免許返納問題は、高齢の親にとって単に移動手段を失うことではありません。
買い物や通院、友人との交流、趣味の外出など、これまで自分で保ってきた生活の自由を失うことでもあります。車がなければ暮らしそのものが成り立ちにくい地域もあるでしょう。
だからこそ、家族が一方的に「危ないから、もう運転しないで」と迫るだけでは、親は自分の生活を否定されたように感じ、かえって聞く耳を持てなくなってしまいます。
知人の父親のケース
私の知人の父親は、免許返納を渋っていましたが、不注意で軽い事故を起こしてしまったことから、ついに家族に車そのものを取り上げられてしまいました。
免許返納後、父親は落ち込みがちになり、家に引きこもるようになったそうです。その後、病気で亡くなりました。免許返納との因果関係はわかりませんが、知人は寂しそうにつぶやいていました。

