福井県の美浜町と若狭町にまたがる三方五湖の一つ、久々子湖で9月、魚が大量死しているのが見つかった。死骸は川を伝って若狭湾の浜辺にまで打ち上げられた。原因とみられるのは「青潮」の発生で、背景には塩分濃度の上昇など湖全体に及ぶ異変が重なっていた。
「湖岸に魚の死骸が何千、何万」
9月10日、久々子湖で、魚が大量に死んでいるのが見つかった。その量、約8.5トン。
コノシロ、スズキ、クロダイ、ウナギなど種類はさまざまで、水中の酸素が少なくなる「青潮」が発生した影響とみられている。
付近の住民にとっても初めて目にする光景だったという。「もう、匂いがすごくて…その辺りに白い物がポコポコ浮いてるのが見えて。湖岸に魚の死体が、何千、何万…初めて見ましたね」
おびただしい数の死骸は川を伝って若狭湾まで流れ、浜辺にも打ち上げられた。浜で死骸を目撃した別の住民も「すごい臭いだと思い海へ見に行ったら、帯状に死骸が打ち上げられていた」と語る。
漁師がウナギやシジミの漁に不安抱く
今回の魚の大量死に不安を募らせているのは、地元の漁師たちだ。「久々子湖はシジミとウナギが主とした漁なので…ウナギも浮いていたし、シジミもどうなったか心配や」
久々子湖では近年、シジミの不漁が問題となっていた。その背景にあるとみられているのが、湖の塩分濃度の上昇だ。
このため、本来は海に生息するフジツボがウナギの伝統漁法「筒漁」の筒に大量に付着したり、湖の水を使った田んぼで稲が茶色く枯れる塩害が起きるなど、異変の兆候が報告されていた。
三方五湖は、塩分濃度が異なる5つの湖から構成されている。海水の日向湖、海水と淡水が混じる汽水の久々子湖・水月湖・菅湖、そして淡水の三方湖という構成だ。
今回の大量死が起きた久々子湖を含む汽水域と淡水の三方湖はつながっており、その三方湖でも塩分濃度の上昇が疑われている。

7月から湖の調査を続けている県嶺南振興局も、漁業者や農業者からの声をもとに調査に着手したと明かす。「ウナギ漁の筒にフジツボが付いて大変だという声や、塩害ではないかという声があった」と話す。
無酸素層から上がって来る硫化水素の臭い
さらに、水月湖では別の異変も報告されている。冬場の強風の時期に、硫黄のような硫化水素のような臭いがするという報告が、今年度は特に相次いでいるという。
水月湖の深部には硫化水素を含む無酸素状態の層が存在する。この水が風などの影響で水面近くまで上昇すると、「青潮」が発生することがある。今回、久々子湖で大量死が発見された前日の9日頃から、つながる水月湖周辺でも硫黄のような臭いが広範囲に広がり、少なからず魚の死骸が見つかっていた。
県内有数の観光名所でもある三方五湖は、地域住民の暮らしにも深く関わる場所だ。漁業、農業、そして観光——その多くが密接に結びついている。
県は年内いっぱい水質調査を続け、年度内に結果を公表する方針だ。

