福井県民にはなじみ深い「勝木書店」。人口減少やネット書店の台頭などで厳しい経営環境が続く中、2年連続で黒字を維持しています。その独自の戦略を取材しました。
県内6市で9店舗を構える勝木書店。このうち福井市にある二の宮本店は約1000坪のスペースに35万冊以上の書籍が並び、北陸最大級の品そろえを誇ります。
店長の越出陽裕さんは「大型店が多いので、一般書から専門書まで幅広く取りそろえている。 例えば数学の専門書は正直、回転はしないが、地域の文化拠点として多くの本を取りそろえるようにしている」と話します。
1950年に創業した勝木書店。業界に先駆けて広い駐車場を備えた郊外型店舗を増やしました。
石川県や関東など県外にも出店。店舗販売だけでなく学校や図書館などに書籍を納める「外商」も展開しています。
しかし、スマートフォンやネット書店の普及で現在、全国の書店数はピーク時の半分以下、1万店を割り込み、地方自治体の約3割で本屋がないなど、業界全体が厳しい環境に置かれています。
背景には、業界ならではの独特の理由も。
「書店業界には大きく2つルールがある。一つ目が再販制度で、同じ商品は全国どこでも同じ価格でしか売れない。もう一つが委託販売契約で、ほとんどの本が買い切りではなく卸業者に返せるが、返品には手数料が発生するため利益率は一般的な小売業の約半分といわれている」(越出店長)
再販制度や委託販売契約は、出版物の多様性を守ったり国民に教養を普及するための役割を担っているものの、このご時世、書店が利益を生み出し続けるためには工夫が求められています。
そうした中で勝木書店では、書店員が隠れた名作を選ぶ「カボスコレクション」を開催したり、本以外の雑貨、カプセルトイやトレーディングカードの販売も手がけたりして、新たな客層の開拓にも取り組んでいます。
そんな勝木書店が最も大切にする“思い”が、県民におなじみのレジ袋に小さく記されています。
“本との出逢いを大切にします”
「この言葉は会社の気持ち。本との出逢いもあるし、本当(ほんとう)という意味もあり、人と人の出逢いや本と人との出逢いを大切にしたいと考えている」(越出店長)
その思いは、本を紹介するための販促物=POPにも表現されています。おすすめしたい思いがあふれ出る“長文の手書きPOP”は、他の書店にはない独自のスタイルとなっています。
店員の樋口麻衣さんは「ここが面白かった、こんなところがおすすめ、と話すような感覚でPOPを書くので、どうしても長くなってしまう。著名な作家やベストセラーに注目が集まり、本当に面白い一冊が埋もれがち。 POPをつけて光を当てることで手に取ってもらうきっかけになれば」と話します。
実はこの長文手書きPOP、出版社の目に留まり文庫本のカバーに採用されるなど、業界内で、大きな反響を呼びました。
また、市内の高校の図書委員にも波及。樋口さん指導の下、高校生が作ったPOPを店頭に並べたところ、本の売上が伸びたといいます。
「普通のフェアを組むよりも桁違いの売り上げになっている。同世代の高校生が買うことも多いし、年配の人もじっくり見て選んでいる印象」(樋口さん)
人口減少や、ネット書店の台頭、書店業界ならではの慣習と向き合いながら、本との出逢いを軸に成長する勝木書店。
今後も北陸最大級の書店として進化を続けていきます。
