「もう一度、自分の足で歩いてほしい…」。病気やケガで歩けなくなった犬たちとその飼い主の願いを支えるため、犬専用のオーダーメイド車いすを作り続ける男性を取材しました。
■寝たきりだった愛犬が…“歩く喜び”届ける車いす
カラフルで、見ているだけで心が弾むデザイン。
田下さん:
「これが二輪車、ダックスフント用の車いすなんですけど、後ろ脚が悪いワンちゃん用のタイプです」
犬専用のオーダーメイド車いすを作ったのは、愛知県一宮市にある「犬の車椅子プラスワン」の田下国弘さんです。ケガや病気を抱えながらも、もう一度自分の脚で前へ進んでほしいという願いが込められています。

田下さん:
「うちのモットーとしては、飼い主さんも笑顔になることと、ワンちゃんも笑顔になることが、うちらの基本です」
この日、工房を訪れたのは19歳のチワワ、フューチャーちゃん。
飼い主:
「ちょっと転びながらも自力で歩いていたんですけど、急に歩けなくなっちゃって」
高齢によるヘルニアで、後ろ脚が不自由になりました。

田下さん:
「だいぶ腰が曲がっていますね。これだけ腰が曲がっていると、後ろ脚の方が長いんです。前脚より長くなっちゃうんです。顔は絶対に前に下がるんです。そういう車いすを作らなきゃいけないですね」
これまでに手掛けた車いすは1000台以上。犬種や不自由な部位、さらには年齢まで、経験をもとに体に合うサンプルを探していきます。
すると、フューチャーちゃんが自分の力で前へと動き始めました。

ベースのサンプルが決まったら、より動きやすくなるように、前脚と後ろ脚までの距離などを細かく採寸し、その犬だけの車いすを作り上げます。
飼い主:
「本当に久しぶりに自分の脚で立っている感じだと思うので、ちょっと感動してうるうるしています」
犬たちに再び歩く喜びをもたらしている田下さん。始まりは1匹の愛犬でした。
田下さん:
「二十何年前に、ミニチュアダックスフントのラフくんというワンちゃんがいたんですけど、13歳の時にヘルニアになりまして、(手術をして)半年たっても後ろ脚が動かなくて寝たきりになってしまったので、最後に何かしてあげたいと思って…」

「愛犬を何とかしてあげたい」何の知識もないところから、一台の車いすを作り上げました。寝たきりだったラフくんは、田下さんの車いすで再び歩き始め、その後7年以上生きました。
田下さん:
「その後、数年でワンちゃんが亡くなっちゃったら、今車いすを作っていないと思います。20歳半まで生きたので、いろんな車をどんどん作ってバージョンアップしていった」
■「飼い主との時間」1分、1秒でも長く
三重県津市にも、田下さんの車いすを愛用する犬がいます。
アメリカンコッカースパニエルの凛ちゃん(11歳)。動くことが大好きでしたが、3歳の時のケガで脊髄を損傷、後ろ脚に麻痺が残りました。

飼い主:
「(腰の調子が悪くて)“絶対安静”ができなかったんですよ。動けるようになったということで、ちょっと動いちゃったんですよね。それで脊髄を痛めてしまって」
「昔のように元気に走り回って欲しい」という飼い主の願いを、田下さんの車いすが叶えてくれました。
体の一部のように車いすを操り、元気に走りまわる凛ちゃん。また歩けるようになった喜びを、全身で表現してくれます。

飼い主:
「(一緒に散歩ができて)うれしいです。凛が好きなもの、興味があるものを見つけた時が、一緒にうれしい。目がキラキラしている姿を見るのが一番好きかな。表現してくれるので」

犬専用の車いすをつくる田下さん。何より大切にしているのは、早く届けてあげること。注文を受けてから、3日ほどで発送するよう心がけています。
田下さん:
「3週間とか1カ月かかるところもあるんです。その間に、ワンちゃんが死んじゃうんです。少しでもいいので、飼い主さんと触れ合う時間を少しでも長く、1分、1秒でも長くいてほしいですね」

犬たちにもう一度歩く喜びを、そして飼い主と過ごす時間を少しでも長く。一宮から届けられる一台一台に、田下さんの願いが込められています。

