ペットとの暮らしは、高齢者の生きがいや励みとなる一方で、飼い主の突然の入院などで、ペットが行き場をなくしてしまうケースも後を絶たない。こうした「飼育放棄」を防ぐことはできるのか、「もしも」に備えた取り組みも始まっている。

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■愛犬と涙の別れ…飼い主が「孤独死」のケースも

愛知県武豊町にある犬の保護団体「ドッグレスキューハグ」は、病気や介護施設への入居などが原因で、高齢者が飼えなくなったペットを引き取っている。

78歳の女性はミニチュアダックスフントと12年間一緒に暮らしてきたが、女性が介護施設へ入ることになり、「ドッグレスキューハグ」に託されることになった。

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78歳の女性:
「ごめんね、ごめんね」

女性スタッフ:
「大丈夫、大丈夫。安心してください」

すすり泣く女性…高齢者とペットとの別れは予期せぬタイミングで訪れる。こうした高齢者からペットを引き取るケースは増えているという。

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ドッグレスキューハグ 塚本恵代表:
「この子たちの場合は(飼い主が)施設に入る、入院。くうちゃんは(飼い主の)息子さんが連絡くれて、で、もう飼えないからって。狭い、座るしかないぐらいの子犬が入るぐらいのサークルが置いてあったそうなんですね。そこにいた」

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2025年5月1日時点で、施設で生活している23匹の犬のうち、およそ半数の11匹が、高齢の飼い主から保護され、中にはペットだけが取り残されたケースもあった。

2024年7月、愛知県南知多町にあるマンションの管理事務所から「住人が不在の部屋に犬がいる」と団体に連絡があった。

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塚本代表:
「おいでおいで、おいでおいで。出れるよ!」

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部屋の中に、メスのミニチュアダックスフントがいた。飼い主は孤独死し、犬だけが暗い部屋で生き続けていた。

■「飼育放棄」の約8割は高齢者 経済的な理由も

高齢者の飼育放棄は健康上の理由だけではない。経済的な事情でペットを手放さざるを得なくなったケースもある。

名古屋市内に住む60代の夫婦は、家が老朽化し住めなくなったが、修繕費が工面できず、賃貸アパートへ引っ越すことになった。

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メスのマルチーズを15年近く可愛がってきたが、転居先はペット禁止だ。

夫:
「本当は連れていきたかったんですけどね、いろんな事考えて、条件とか、とてもじゃないけど無理でしたね。仕方なく手放すしかないなと」

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妻:
「やっぱりずっといたので、楽しい思い出が多くて、思い出すと言葉にならないです。今までありがとうね。幸せになってね。みんなと仲良くね。」

夫:
「ごめんね本当にね。人間の勝手な理由でね。」

“家族水入らず”で過ごす、最後のひと時。

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妻:
「バイバイ。やだぁ…散々泣いたんだけど…寂しい…ごめんね」

引き取られたマルチーズも、飼い主を探すようにキョロキョロ周りを見ている。

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ドッグレスキューハグの代表、塚本恵さんは、こうした別れのシーンを何度となく目にしてきた。

塚本代表:
「今回の方は泣く泣く、仕方がなく経済的にという理由で手放しているので、飼い主さん側もつらいと思うんですよ。その気持ちを思うと、本当にこっちもつらくなる。本当、社会問題だから。本当に何とかしてほしいですね」

ペットを手放さざるを得ない高齢者は増えている。飼育放棄の実態を調べた東京都のデータでは、飼い主の約8割が高齢者だった。最も多い理由は飼い主の病気で55%、死亡が19%、経済的理由が17%となっている。

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名古屋市でも、2023年度に保護した21匹の犬のうち14匹が、病気や死亡により飼育放棄することになった飼い主から引き取っていた。

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名古屋市動物愛護センター 辻村美里さん:
「(病気・死亡などで飼えなくなった)飼い主さんからの引き取りは増えている。動物の問題として関わるんですけど、そもそもその方自身が孤立してしまっているというところがとても大きいと思っているので、福祉分野と動物の分野と、もっともっと連携していくのが今後必要なのかなと思っています」

■いつまでもペットと一緒に…「もしも」の備えも

「どんな時も愛犬と一緒にいたい」飼い主の思いにこたえようと、岐阜県笠松町の松波総合病院では、2025年4月から全国でも珍しい取り組みを始めた。

松波総合病院 松波英寿理事長:
「自分のペットと一緒に入院できる病棟。日本では初めての試みです」

笠松町と海津市の2つの病院が連携し、入院患者のペットを受け入れるという。患者はケージが設置された病室で、犬の世話をしながら治療を続けることができ、敷地内にはドッグランも整備されている。ペットがそばにいることで、患者も安心して治療に入れると、病院側は期待する。

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松波総合病院 松波英寿理事長:
「自分のペットと一緒にいると落ち着くというか、心が安らぐ。それがひいては早く治癒するとか、入院期間が短くなるとか、患者さんのためにペットがいるといいだろうという話。北海道から沖縄まで受け入れようと思っています」

さらに、もしもの場合に備え、ペットを託す先を用意しておく「ペット後見」の制度にも注目が集まっている。

岐阜市のNPO法人「人と動物の共生センター」は2017年、「ペット後見互助会」の運営を始めた。会員は月会費などの支払いに加え、終生飼育に必要な費用を互助会に託しておき、病気や死亡で世話ができなくなった際には、法人がペットを保護し、飼育先を探すなど最期まで見守る。

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「ペット後見互助会」会員の女性(69):
「できれば一緒にずっといたいんですけど、何が起こるかわからないし、孫の1人に犬と猫のアレルギーがあって、ちょっと娘の所は無理かなと。だんだん、足、腰なんですけど悪くなってきているし、いつ散歩に行けない状態になるかね。ふと『あぁそうや、よかった入っておいて』っていう風に思いますね」

獣医師でもある「人と動物の共生センター」の理事長・奥田順之さんは、2024年12月に東京支部を開設し、2025年秋には静岡と鳥取にも支部の開設を予定するなど、拠点を各地に広げています。

人と動物の共生センター 奥田順之理事長:
「これだけ高齢者の多い『超高齢社会』といわれる日本において、高齢の方がペットを飼いにくい状況というのは、社会的な損失になると思うんですね。むしろしっかりと飼っていただいて、そのフォローというか、もし何かあった時に次の飼い主につなぐ、そういった部分を社会全体で支えていく、そういう仕組みが求められているんじゃないかなと思いますね」

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万が一の事態に備え、ペットを守るためにどうすればいいのか。社会全体で考えなければならない。

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