クマによる被害を防ごうと、秋田・由利本荘市東由利で講習会が開かれた。注目されたのは身近な動物である「犬」の習性を活用した対策だ。地域住民が再生した栗林を守るため、犬の縄張り意識を利用してクマを寄せ付けない方法が紹介された。
栗の産地悩ますクマ被害
由利本荘市東由利では、特産の栗が2025年、クマによる深刻な被害を受けた。
実を食べられるだけでなく、木に傷が付けられたり、枯れてしまったりするケースも確認されている。
この地域では、かつて放置されていた栗林を地元の有志が再生し、栗拾いイベントを開催するなど、地域資源として活用を進めている。ブランド化への期待が高まる一方で、クマ被害は大きな課題となっている。
こうした状況を受け、「ひがしゆり栗の里づくり実行委員会」などが中心となり、クマ対策を学ぶ講習会を企画した。
犬でクマ対策 直接向き合わない追い払い
講師を務めたのは、広島市で縄文柴犬の研究に取り組む縄文柴犬研究センター理事の柳樂倫さんだ。
柳樂さんは、犬を直接クマに向かわせるのではなく、犬の存在そのものをクマに認識させることで接近を防ぐ方法を提案した。
柳樂さんは「クマを生活圏の中まで侵入させてしまうと、クマも『戦うしかない』と覚悟を決めてしまう。緩衝地帯にいる段階で『犬がいるからやめておこう』と思わせることで被害を未然に防げる」と説明した。
クマと人が遭遇する前の段階で、近寄らせない環境づくりが重要だという。
カギ握る“縄張り”の習性
講習会で紹介されたのが、犬の「縄張り意識」を活用した対策だ。
犬は散歩中に尿などでマーキングを行い、自分の縄張りを示す習性を持つ。
柳樂さんによると、このにおいがクマにとっては「犬がいる場所」と認識される要素になり、接近をためらう効果が期待できるという。
「朝と夕方に犬が縄張りを張るだけでも、クマは犬の存在を感じ取ってくれる」と話す柳樂さん。
さらに、犬にしっかり縄張り意識を持たせるためには、家の周囲を円を描くように散歩することが重要だと指摘した。
「飼い主が歩きやすいアスファルトの道を往復するだけでは、犬は十分に縄張りを張れていない。家の周辺を囲むように歩くことで、犬は自分の領域を認識しやすくなる」と話した。
地域住民も実感する効果
実際に、栗林の管理に携わる住民の中には、すでに犬を連れて作業を行っている人もいる。
ひがしゆり栗の里づくり実行委員会の木内雅美さんは「今年から栗林で作業するときは犬を連れている。犬がいると動物たちが近寄ってくることがない」と話す。
今回の講習会を通じて、その理由が犬のマーキングにある可能性を知ったという。
木内さんは「栗が落ちる時期になったとき、被害が出ないのではないかと期待している」と今後への手応えを語った。
栗林を未来につなぐために
講習会ではこのほか、犬が動きやすいリードのつなぎ方など実践的な内容も紹介された。
地域住民が手入れを続けてきた栗林を守るためには、クマを駆除するだけではなく、人の生活圏に近づけない仕組みづくりも欠かせない。
身近な存在である犬の力を生かした取り組みは、人とクマの共存を考える新たなヒントとして参加者の関心を集めていた。
(秋田テレビ)

