8月末の記録的な大雨の影響で、全国でも有数のソバの産地である福井県は深刻な状況となっている。特に、福井では地域ごとに在来種がある珍しい産地でもあり、その存続が危ぶまれている。取材した農家では8月にまいた種も流され、頭を抱えている。
苗が育ってきた矢先…大雨で流される
まるで湖と化したソバ畑。坂井市丸岡町で農業法人を運営する大川勝利さんは「こんな被害はこれまでにない…初めて」と語る。
大川さんのソバ畑は約31ヘクタールあるが、そのほどんどが8月30日の大雨で冠水被害を受けた。8月中旬と下旬の2回に分けて種をまき、青々とした苗が順調に育ってきた矢先のことだった。
ソバは特に水に弱い作物とされる。小さい苗はほとんど流され、大きくなってきた苗は根元が黒くなって腐り始めている。
「水が引いた後は、暑い日が続き田んぼが高温になって苗がダメになった」(大川さん)
在来種の種ごと流される危機
福井県のソバの作付面積は全国6位。とりわけ、丸岡や大野、今庄など地域ごとに在来種を受け継いで栽培しているのは、全国でも福井だけだ。
“在来種ソバ王国”ともいわれる独特の産地を襲った、今回の大雨。
県によると、県内全体のソバの作付け面積の半分近くに迫る1400ヘクタールに被害が及んだという。
大川さんの畑も壊滅的な被害を受け、今年のソバの収穫は見込めず、被害額は約1500万円に上る。
さらに深刻なのは、丸岡産のソバの在来種が苗もろとも流され、種が手元からなくなったことだ。「奇跡的に製粉所のところにうちの種が保管してあったので、それを取りに行かせてもらった」という。
丸岡町では、同じように種が流れてしまった農家があるといい「在来種の種がない農家も出てくると思う。その農家には種を分けてあげたい」と大川さんは話す。
坂井市を担当する県職員は「この雨が続く限り畑の状況がよくならず、ソバの収量の見込みは全く立たない」と現状を語る。さらに「在来種の種がなくなることはないが、今後は入手先を含めて種の問題は出てくるだろう」とする。
大川さんは「いままでの中で一番の収入減少。どうしたらいいか…先のことは考えられない」と肩を落とす。
福井のソバ作りがいま、危機に立たされている。

