福岡発の小型衛星が今、宇宙で活躍している。災害時の状況把握をはじめ、2026年2月には、防衛省から5年間で697億円の大型案件を受注するなど、独自の小型SAR衛星技術に高い期待が寄せられている。これまで未公開だった衛星の製造現場に潜入取材した。
年間20機の衛星が製造可能に
福岡市内のとあるビルの会議室。2026年8月6日、真剣な表情でモニター画面を見守るのは、福岡発の宇宙ベンチャー企業『QPS研究所』のメンバーだ。

視線の先にあるのは、ロケト打ち上げのライブ配信。

ニュージーランドの発射場から打ち上げられたロケットには、QPS研究所が開発した小型衛星、QPS-SAR13号機『ミクラーI』が搭載されていた。

ロケットは、打ち上げから50分後、衛星分離に成功した。

QPS研究所が、現在までに打ち上げた衛星の数は15機。

「ここは新しい開発拠点『QSIP』という場所で、広さ4500㎡、相当広いんですよ」と施設を案内するのは、大西俊輔社長。衛星開発の分野で世界をリードする集団を率いている。

案内された拠点は、衛星を開発から製造まで一貫して行う大規模な場所。
但し、企業秘密のため場所は非公開だ。今後の量産を見据えて製造設備だけでなく衛星の性能を確かめる設備も備えている。この施設を構えたことで年間20機の衛星の製造が可能になったという。
地球1周に要する時間は“たった90分”
この日は、次の衛星を発射場に送り出す準備が進んでいた。

作業スペースの一角にある衛星の『振動試験室』。

「ロケットに乗った時の振動に耐えられるか?それはこの試験で全部できます」と大西社長は話す。これまで外部に委託していた試験を自社で行えるようにしたことで、効率もアップした。
執務スペースのモニターに映された画面。モニタ―には、QPSが打ち上げた衛星が、現在、宇宙のどこにいるかを可視化した画面だ。

「今、全部たすと9機乗っているんじゃないかな」と大西社長は指さす。

「これは11号機の『ヤマツミ』が、ちょうど日本を通過したあとぐらい。速いですよね、これ。リアルタイムなので。こうやって移動してるのが実際ですけど、地球1周が90分なので、凄く速いんですよ」と大西社長は、衛星の動きを説明する。
夜間でも撮影可能な『SAR衛星』
QPSが開発しているのは、レーダーで地表を観測する『SAR衛星』。

電波を地表に照射し、その反射波を捉えて画像にする。その衛星で見ると、カメラとは全く違い、夜間でも雲に覆われていても観測できるのが大きな特徴だ。

「災害は、24時間365日起きるので、起きた時にすぐ撮れるとなると、やっぱりSARって強いんです。夜でも撮れるし。大雨とかは、悪天候時なので、そこで見るとなると、手段としては、やっぱりSARが凄く活躍できる。『いつでも現場を見たい』となれば、このSARを使って状況を把握するのは、凄く適したものだと思う」(『QPS研究所』大西社長)。
複数の衛星で同じ場所を定期的に撮影し観測することで、地表の小さな変化を即座に把握しやすくなる。災害時の被害把握に加え、様々な分野での活用が期待されている。
熊本地震も発災直後から観測中
大規模インフラ、電力、鉄道、道路といった“インフラ業者”が、QPSの衛星画像に興味を示しているという。「そういうものがあるっていうのを知って頂くと、少し安心感にも繋がってくるのかなと思うので、いついかなる時にどういった所で災害が起こるか分からないので、それに対して、しっかりと私たちの衛星の数を増やして対応できる体制を作りたい」と大西社長は目標を語る。
実際に今回の熊本地震では、QPSの衛星が、発災直後から観測を重ね、被災地の状況把握に活用されている。

この後、大西社長は、最も重要な衛星の製造現場を案内してくれた。埃などを取り除いたクリーンルームで、衛星を1つずつ組み立てている場所だ。

製造中の機体には、19号機を示す19という数字が記されていた。隣の部屋では、衛星の形が更に出来上がっていた。
「さっきから見ると、全然違うと思いますけど、本当にいろんなものが組み合わさって形作られていく。全部が動かないと衛星は動かな。動かないというか、ちゃんとしたスペックが出ないので、1個ずつ『ちゃんと付いてるよね』というのを確認しながら試験を進めている」(『QPS研究所』大西俊輔社長)。
目指すは衛星の『量産体制』確立
大西社長率いるQPSが目指しているのは、衛星を安定して作り続けられる『量産体制』の確立だ。
大西社長は、「ここからもっと、量産のための作業を標準化したり、品質をもっと高めていく必要があるので、それに向けて、まだまだやることは多いと思うが、ある程度の土台ができたと思うので、これをずっと継続して作り続けるということをやっていけば、自ずとしっかりとした、いい体制になるんじゃないか。宇宙業界で結構いろんなプレイヤーがいる中でも、このSAR衛星の中で、特に私たちは世界で戦える場所にいるので、これをしっかりやっていけば、絶対戦えて、かつ、いい事業になっていくと思う」と話す。
QPSは、2026年2月に防衛省と『衛星コンステレーションの整備・運用等事業』の中で、画像データ取得業務に関する委託契約を締結し、5年間で697億円の大型案件を受注した。

『軽量・低コスト・高精細』な小型SAR衛星で防災やインフラ、そして国防にも高い期待が寄せられているQPS。2028年5月末までに24機体制、最終的に36機による平均10分間隔の準リアルタイム観測サービスの実現を目指している。

福岡発の宇宙ビジネスは、世界を舞台に次のステージへ進もうとしている。
(テレビ西日本)

