東京電力福島第一原発事故による避難指示が解除された福島県浪江町では、復興の大きな“道しるべ”として畜産業の再開が進められている。震災前に95軒存在した畜産農家のうち、地元で事業を再開できたのは1軒にとどまるが、この春には後継者となる若い女性が帰郷し父とともに汗を流す。さらに町内には国内最大級の大型畜産施設も開所し、最先端技術を担う若者が集積しつつある。未来を切り拓く2人の女性酪農家の奮闘と、浪江町の新たな一歩を追った。
父の背中を追い故郷で酪農再開
東京電力福島第一原発事故の影響により、津島地区をはじめ町域の約8割がいまだ立ち入りを制限されている福島県浪江町。避難の長期化などから、震災前に95軒あった畜産農家のうち、故郷で営農を再開できたのは今野剛さん1人のみである。今野さんは避難先の本宮市で酪農を継続していたが、2023年に浪江町で「T. Union Dairy(T・ユニオンデーリィ)」を立ち上げ、再出発を果たした。
帰郷の決断を後押ししたのは、娘であるさくらさんの存在であった。北海道の大学で酪農を学んださくらさんは、「父の仕事をしている背中を見て、この職業をやりたいと思った」と語り、大学卒業後の2026年3月に浪江町へ戻った。
現在は親子で80頭の乳牛を飼育している。さくらさんは、「牛たちがしっかり餌を食べて元気に生活している姿を見ると、自分の努力が牛の健康状態に現れる。努力の成果を目で確認できる点にやりがいを感じている」と声を弾ませる。
国内最大級の牧場が開所し新風
浪江町の畜産復興に向けて、大きな“追い風”となる動きも生じている。2026年4月には、敷地面積が東京ドーム約5個分に相当する国内最大級の畜産施設「ShineCoastFarm(シャインコーストファーム)」が開所した。
同施設では2,000頭以上の乳牛を飼育する計画を掲げ、第一歩となる乳牛を受け入れた。搾乳作業を担当するのは、福島県酪農業協同組合から出向している福島県郡山市出身の橋本夏来さんである。
最先端ロボットで地域を支える
施設には一度に40頭を自動で対応できる回転型搾乳ロボットなど、最先端の機械が導入されている。橋本さんは農業用ロボットの企業に出向した経験を持ち、知識と技能をいかして現場を牽引している。「大型牧場の運営においてロボットの活用は不可欠であり、初期トラブルへの対応力を身につけてきた」と橋本さんは説明する。
施設では子牛への授乳も自動化されており、約40人いる従業員の8割は10代から20代の未経験者で構成されている。橋本さんには技術や知識を次世代へ伝える役割が期待されている。同施設は将来的に福島県全体の出荷量の約5分の1にあたる年間13,000トンの牛乳を出荷する計画だ。
橋本さんは「福島県に大規模な牧場があり、多くの牛乳が生産されていることを全国の人に知ってもらいたい」と意気込みを語る。
故郷へ戻った今野さくらさんと、先進施設で挑む橋本夏来さん。2人の若い力が、浪江町の未来を明るく照らしている。
(福島テレビ)

