症状が改善しないまま繰り返された血液検査。治療費は20万円を超え、猫たちは日に日に衰弱していった。そんな状況を変えたのは、別の病院で診察を受けるという選択だった。
物言わぬ猫だからこそ考えたい、動物病院選びの難しさと重要性とは。
コラムニスト・峯田淳さんの著書『猫のいる人生』(新潮新書)から一部抜粋・再編集して紹介する。
猫を飼うと始まる「かかりつけ動物病院」との付き合い
猫を飼い始めるともれなくついてくるのが、動物病院とのお付き合い。
我が家のかかりつけのS動物病院はジュテが2011年にやってきてからの付き合いだから、すでに10年が経っていた。
ここにかかる前は2、3カ所ウロウロしたが、今ではよそに行く気がしないほど、よく面倒をみてくれる。
ジュテがやってきた頃はそもそも、動物病院のことなど眼中になかった。
近所にあることすら知らず、どこに連れて行けばいいか、まるで五里霧中の状態だった。
何かあると同じマンションの1階に住むCさんに教えてもらいながら、当初は病院を転々とした。
自宅マンションから近い2つの病院は人間が通院するような、清潔感がある真新しいクリニックだった。
しかし、どこか違和感があった。
マニュアル通りのようなスタッフの対応が、なんとなくなじめない。
それでも人間の場合は具合が悪いところを言って、対応してもらえば済むが、赤ん坊と同じく、しゃべることができない猫は、そういうわけにはいかない。
ところが、自宅から自転車で3、4分のS動物病院は、趣が異なっていた。
ドアを開けると目の前が受付のカウンターになっていて、入ると女性の先生がすぐに「どうしたんですか」と丁寧に声をかけてくれた。感じがいい。
その後、通い始めると、アットホームな対応で何でも相談できそうだと思った。
動物病院は最新の医療設備が揃っているかどうかよりは、まず動物に対して幼い子供に接するかのような丁寧さがあることが大切だと思う。
そういう意味では、小児科の病院選びと同じかもしれない。
動物病院選びで本当に大切なのは設備より“動物目線”
ただ、そんな動物本位の病院ばかりではないのが現実だ。
金儲け主義のブリーダーやらがいなくならないのを見れば、言わずもがなである。
病院もしかり。
動物の飼い主は一部の人にとっては金ヅル。
動物病院は獣医師免許を持ち、役所に一定の届け出をすれば開業できる。
儲かるから始める人もいるに違いない。
「食べては吐く」を繰り返した2匹の猫
猫&飼い主と病院とのトラブルを紹介しよう。悪い病院の例だ。
神奈川県に住む知り合いのYさんは、20年以上も猫を飼い続けている愛猫家。
今も2匹、飼っている。4歳オスの林檎と、3歳メスの桃だ。
ある時、林檎が食べたものを繰り返し吐くようになった。
食べては吐き、吐いても食べて、また吐く。Yさんはかかりつけの動物病院に連れていった。
先生はまず血液検査をやって、調べてくれたという。
検査結果が病院内で簡易的に出るケースもあれば、検査機関に送って1週間くらいしてから、結果を聞きに行くケースもある。
Yさんの場合は後者で、何日か後にまた来院するように言われたという。
その日は吐き気止めの薬を処方してもらって帰宅した。
しかし、林檎は薬を飲んでも、食べると吐き、辛そうにしている。
そして吐くのが桃にもうつって、2匹でゲーゲーし始めた。

