アメリカ・ボストンの大学で学ぶ学生5人が7月、秋田・大仙市を訪れ、農業体験や地域住民との交流を楽しんだ。きっかけをつくったのは、海外で秋田の食文化を発信する加藤瞳さん。異国の地で生まれた縁が、新たな“秋田ファン”を育んでいる。
ボストンから秋田へ 旅のきっかけは1人の女性
大仙市協和峰吉川地区の農家レストランを訪れたのは、アメリカ・ボストンの大学で学ぶ日本人学生5人。いずれも秋田を訪れるのは初めてだ。
彼らが海を越えて秋田を目指した理由は、峰吉川地区出身の加藤瞳さんにある。
加藤さんは都内の企業で働きながら秋田市で会社を立ち上げ、甘酒を中心に秋田の食や農業の魅力を国内外へ発信している。2024年からはアメリカで日本文化を紹介するイベントに参加し、2026年4月にはボストンでも甘酒を販売した。
「甘酒は砂糖が入っていないのにこんなに甘いんですか、という反応があった。現地の人から『甘酒が欲しい』という声も出てきた。認知度が少しずつ広まりつつあるのがうれしい反響だった」と話す加藤さん。
そんな加藤さんの活動が、学生たちの心を動かした。
「現場を見たい」 秋田への関心が生んだ来県
学生たちは、加藤さんがボストンで出展したイベントでボランティアスタッフとして活動していた。
越智貴裕さんは「毎年、瞳さんに会うために頑張る、というのがボランティアの学生チームにはある」と笑顔を見せる。
さらに、「秋田のコメを毎回実行委員会に提供してくれて、そういう姿を見て、それを作っている現場を見に行きたいと一番思った」と、秋田訪問の理由を語った。
安土泰蔵さんも「加藤さんは秋田県の素晴らしさをみんなに伝えたり誘ったりしているので、すごいなと思って尊敬している」と話し、「加藤さんがボストンまで来てくれたら、僕も秋田県まで行かない理由はないと思って。呼ばれたらもちろん来る」と加藤さんへの信頼は絶大だ。
海外での出会いが、秋田への強い関心へとつながっていた。
土に触れ作り手を知る 農業体験で実感した価値
学生たちは今回、峰吉川地区で農業を営む佐藤幸雄さんの協力のもと、野菜の収穫を体験した。
キュウリのハウスでは、複雑に伸びるツルに苦戦しながらも夢中になって収穫。普段は大都市ボストンで暮らす学生たちにとって、農業の現場は新鮮な驚きの連続だった。
また、秋田県が誇るブランド米「サキホコレ」の田んぼも見学。稲1束で茶碗約1杯分のコメになると聞くと、「感謝して食べなければ」と自然と声が上がった。
農産物が食卓に届くまでの過程を知ることで、食への意識も深まったようだ。
「真の日本の美しさ」 学生たちが見つけた秋田の魅力
体験を終えた学生たちは、それぞれが秋田で感じた魅力を口にした。
特大のズッキーニを収穫した廣瀬奏壱さんは「あんなに大きい野菜を見たのは人生で初めてなので、楽しくて感謝しかない」と振り返る。
そして、「外国人観光客がいないが、みんなミスしている。絶対ここが真の日本の美しさだと思った」と、観光地ではない地域の魅力を力強く語った。
田代舞さんは「人が温かくて、来る前まではコメと日本酒くらいしか知らなかったが、農業体験などができて本当に楽しかった」と笑顔を見せる。
小菅颯さんも「インバウンドで都会の方は混雑しているが、少し離れたところで一息つける日本のまた違った良さをみんなにも教えたい」と語った。
広がる“秋田ファン”の輪
学生たちの反応は、加藤さんにとって大きな励みとなった。
「秋田に来て『秋田が好きだ』と言ってくれたのが何よりうれしい。皆さんの反応を見て、より秋田県は魅力があるし、これを広めていくことに私も役に立ちたいと思った」と語る加藤さん。
海外で秋田の魅力を伝え続ける加藤さんの活動は、新たな秋田ファンを増やすだけでなく、生産者にも希望をもたらしている。
加藤さんは4月にボストンを訪れた際、現地の総領事にサキホコレを手渡した。自ら育てたコメがアメリカへ渡ったことを、地域の農家は誇らしく感じているという。
海外での挑戦から生まれた縁は、秋田と世界を結ぶ新たな架け橋となりつつある。
学生たちがボストンへ戻り、それぞれの言葉で秋田の魅力を伝えることで、“秋田ファン”の輪はさらに広がっていきそうだ。
(秋田テレビ)

