なぜ郷愁に引かれるのか
――栗原さんの訪ねている場所は、にぎやかな観光地とはかなり趣が違う、鄙びた温泉街や、秘境駅やローカル線、山奥の鳥居とか廃墟だったりすることが多いですよね。なぜそういった場所に引かれるのでしょうか?
なぜ引かれているのかは、自分でもわからないんですよ。たぶん元々の性格的なものだと思います。
往時をしのべるところとか退廃的な場所とか、昔から続いている町並みとか、どういう営みがなされてきたのか想像するのが楽しいんですよね。昔はここもにぎやかだったんだろうなと想像すると、胸がぎゅっとするというか。
例えばFNNプライムオンラインの連載でもたくさん紹介してきた炭鉱の町なんかもそうですね。完全に無人になっているところも多かったりとかしますが、ここで人がいっぱい働いていて子供が走り回っていたんだろうなと思うと、こみ上げてくるものがある。
そういう心の揺れ動きを求めていますね。
――その心の動きは、「楽しい」「うれしい」といったものとはまた違いますよね。
喜怒哀楽でいうと、「怒」以外のパラメーターに振り切れば振り切るほど心がスッキリしたりすると思うんです。
喜怒哀楽の「楽」、つまり楽しいほうに振り切ると、人生が豊かになったり幸せを感じたりする人が多いのでしょうけれど、「哀」のほうに振り切った時に心が浄化されたり日々の悩みが消えていく人も多分いて、自分はそっち側の人間なのかなと。
旅の中で災害の爪痕を目の当たりして胸が苦しくなることもあるのですが、それも自分にとっては大切な体験だと思っています。
――最後に、今後、訪ねたいところは?
最近のマイブームでいうと、鄙びた木造の停留所ですね。
あとは一風変わった神社とか鳥居。一部が欠落していたりとか、半分埋まっていたりとか、そういう奇妙な鳥居ですね。
一度行ったところでも、光の当たり方が逆光だったり背景がちょっと違うなと思ったり、ベストなタイミングに合わせるのは難しい。日本には春夏秋冬ありますし、気に入ったところは最低でも4回は行きたいです。
だから、海外もいいなと思うんですが、行く暇がないんですよ。
郷愁を感じる場所というのはどんどん失われていて、今がギリギリ最後の灯の時代に突入していると思います。
その根幹には人口減少があるから、自分には何もできない。でも、そうしたもどかしさがあるからこそ、誘われるのかもしれません。
構成=プライムオンライン特集班

