いま、夏の味覚を狙った犯罪が各地で相次いでいます。
モモ、ナシ、シャインマスカット。収穫期を迎えた旬のフルーツが農家から盗まれ、さらにSNS上では実在する農園の名を悪用した「ニセ農家」による詐欺被害も確認されています。
甘い香りの裏で、いま何が起きているのか。実態に迫りました。
■ 収穫直前のモモが消えた
大阪市内のカフェでは、旬のモモを使ったスイーツが連日売り切れとなるほどの人気を集めています。
しかし、流通現場では深刻な品薄が続いています。東果大阪株式会社の津田佳典さんは「異常な酷暑や集中豪雨で生産が非常に不安定な状況。盆の需要期と重なって、モモが全然足りない状態」と話します。
そのモモをめぐって、産地では悲鳴が上がっていました。
■農家を直撃する窃盗被害
和歌山県かつらぎ町の阪口農園では7月、2本の木から合わせておよそ200個のモモが盗まれました。収穫直前の実を一つひとつ丁寧に紙で包んだ状態のものが、全てなくなっていたといいます。
農園を営む阪口史朗さんは「何ひとつ実がついてなかった。唖然とした。1年かけて作った作物を持って行かれた。それは許せない」と憤ります。
被害はモモだけではありません。
栃木県の農家では5日、シャインマスカットおよそ400房が盗まれていたことが発覚しました。
福岡県では2年連続でナシが盗まれ、その数は1万1000個以上にのぼります。被害に遭った男性は、ナシの栽培を続ける気力をなくしてしまい、やめる決断をしています。
■ 「物理的に無理」農家が直面する防犯の限界
なぜ、フルーツ農家での被害が相次ぐのでしょうか。
自身の畑と知人の畑でバレンシアオレンジを盗まれた畑中裕介さんは「農作業をしながら、夜まで見回りするのは無理。こっちの畑に来ていて向こうの畑でとられても分からない。物理的に無理」と話します。
広大な農地を農家が個人で守ることには、構造的な限界があります。
犯罪ジャーナリストの多田文明さんは、盗んだフルーツを現金化しやすい現代の環境が被害を拡大させていると指摘します。
【犯罪ジャーナリスト多田文明さん】「盗んだものは以前、路上のワゴン販売で売られていたが、今はネットで売ることができるように変わってきた。犯罪者グループにとって非常に売りやすい状況になっている」
■ SNSに潜む”ニセ農家” 格安フルーツをうたった詐欺の手口
狙われるのは、農家だけではありません。
私たち買う側の購買意欲に付け込んだ、悪質な詐欺も横行しているのです。
SNS上には「フルーツがとれすぎて困っている」「売れずに困っている老舗農家を応援してほしい」などの投稿が多数見られます。モモやシャインマスカット、アボカドなどが市場価格の10分の1ほどの破格の値段で売られており、中には1個100円以下という投稿もあります。
しかし、これらの投稿の中には「ニセ農家」とみられるものが多数含まれています。
【大阪府警察本部 井上信輔警部】「ことし6月下旬ごろから被害が確認されるようになり、最高でおよそ265万円、平均では約100万円の被害が出ています」
大阪府警などによると、「ニセ農家」の投稿を見た人が「購入したい」と連絡すると、代金を振り込んでも商品が届かないこともあれば、システムトラブルなどを理由に更なるお金を要求されることもあるといいます。
■ 実在する農園の名を悪用
取材班は、SNS投稿に記載されていた和歌山県紀の川市の農園を直接訪ねました。
「1箱12個入り1000円」「1箱15個入り1500円」という投稿を見せると、農園を営む宮村貞好さんは笑い、「全然そんなことない。これはもう詐欺や」と即座に答えました。
農園の名が無断で悪用されていたのです。
宮村さんは「そんな安い値段では売ることはない。腹立つわな。私のところだけじゃなくて、”あら川の桃”はブランド品ですから」と憤慨します。
■悪質なSNS上の“ニセ農家” どんな人物なのか
横行する悪質なSNS上の“ニセ農家”。一体、どんな人物なのか?
同様の投稿を行う“ニセ農家”へ接触を試みたところ、返信がありました。
【“ニセ農家”とみられるアカウント】「突然のご連絡ありがとうございます。桃に関するご質問があれば何でもお聞きください」
安さの理由を尋ねると…。
【“ニセ農家”とみられるアカウント】「両親が丹念に育てたもので、中間業者を通さず直接お譲りしているため、価格を抑えられております。よろしくお願いいたします」
さらに、名前と住所を聞いたところ、山梨県に実在する農園の名前と住所を答えました。
しかし、その農園に確認すると…。
【名前を悪用された農園】「SNSを使ってネット注文などやっていないので、お客さまから電話いただいたりして、良いものを発送するように努力しています」
他人の名前を勝手に名乗る“ニセ農家”。
取材班は“ニセ農家”のアカウントに「詐欺ではないか」と尋ねると…既読はつかず、連絡は途絶えました。
■ 「安すぎる物には注意を」
多田さんは「(犯罪者が)お金をだまし取ろうとする時は、季節によってみんなが注目するものを題材にする。(フルーツは)季節ごとに色々あるため、非常に狙われやすい」と指摘します。
消費者の心理も悪用されているといいます。
【犯罪ジャーナリスト多田文明さん】「なるべく安く買いたいという心理をつかれている。あまりにも安いところからは買わないことが大切」
大阪府警の井上警部も「不自然に安い価格は詐欺を疑い、慎重に対応してほしい。個人情報は相手に渡っている可能性もある」と注意を呼びかけています。
(関西テレビ「newsランナー」2026年8月14日放送)
