仲介会社「代理出産、“搾取”ではない」
日本では「タブー」とされている代理出産。ジョージアではどう受け止められているのか。
ロバキゼ医師は、「かつては、この国でも代理母であることを周囲に隠す女性が多かった」と振り返りつつ、現在は「社会全体での理解が進んできた」と強調した。
一方、国連総会に提出された報告書で代理出産が「女性の搾取」と批判されるなど、国際的にも懸念の声があることについては、こう強く否定した。
「代理母たちは自らの意思でこの仕事を選んで、契約を結び、その報酬で家族を支えている。もし代理母という選択肢がなければ、(売春など)別の手段で生活費を得なければならない女性もいるかもしれない」
同社で代理母になる条件は、出産経験のある健康な18~38歳だという。報酬は約2万8千ドル(約450万円)。これは平均年収が日本の1/3ほどのジョージアで、一般的な会社員の3〜4年分の収入に匹敵する大金だ。

ロバキゼ医師は、「以前は生活に困窮した女性が他に手段なく、代理母となるケースが多かった。しかし最近では、子どもの教育費や住宅ローンの返済など、より良い生活を目的に、代理母になる人が増えてきた」と説明。その上で、こう胸を張った。
「何よりも代理出産は、希望を失った夫婦に対して、人間ができる最大の奉仕です」
代理母が明かした「代理出産する理由」
仲介会社が強調した、代理出産の「希望」や「奉仕」といった側面。その見返りの報酬が、代理母の人生の選択肢を広げているのは事実だろう。
しかし、そのシステムを支える彼女たちは、どのような思いで協力しているのだろうか。
実際に、これまで日本人を含む4人の子どもを代理出産したという40代女性に話を聞くことができた。
代理母になった理由を尋ねると、女性は「自分の子どもの治療費が必要だったから」と即答した。受け取った報酬は計約5万ドル(約800万円)。がんを患った子どもの手術費や、自宅の購入資金に充てたという。

代理母は10か月以上、自らの子宮で依頼者夫婦の受精卵を育てる。
しかし出産後には、子どもは夫婦に引き渡され、ほとんどの場合で二度と会うことはない。わが子を手放すような辛さはないのだろうか。
尋ねると、女性は首を横に振った。
「最初から『自分の子どもではない』と思うようにしている」
「生まれた顔を見れば、自分と違う人種だと分かる。『自分の子どもではない』と認識できるから、特別な感情は一切ない」
代理母「搾取とは思えない」 命の危険も
代理出産が「女性の搾取」と批判されていることは、どう受け止めているのか。
女性は再び、首を振った。
「誰にも強制されたわけではないし、自分の意思で決めたもの。どうして搾取になるのでしょうか」

さらに言葉に力を込めた。
「私は誰にも神様にも恥ずべきことは一切していない」
一方で、出産の際に「二度、死を意識したことがある」とも打ち明けた。
「リスクはしょうがない。でも毎回怖さがある」
女性には実の娘がいるという。取材の終わりに、不意にこんな言葉を漏らした。
「でも私の娘には、代理母にはなってほしくないな」
「搾取ではない」と言い切った女性が、自分の娘には同じ道を望まない。その一言に、代理出産をめぐる現実の複雑さが凝縮されているように思えた。
母親と代理母、二つの言葉の間に
代理出産が盛んなジョージアでも、その是非をめぐる議論に終わりは見えていない。
代理母たちは「自分の意思で選んでいる」と語ったが、その根底には子どもの治療費など生活の現実が横たわる。一方で、子どもを望む夫婦にとっては、子宮移植などの代替医療が確立されていない今、代理出産が「血のつながった子ども」を授かる数少ない選択肢でもある。

「はじめまして、ママだよ」と涙を流した母親と、「娘には代理母になってほしくない」と漏らした代理母。代理出産を認める法律も禁じる法律もない日本で、二人の言葉の間にある現実にどう向き合うのか。その答えは、いまだ見えていない。

