去年4月、府中町の公園で男性が殺害された事件で、強盗致死の罪に問われた19歳の男に対し、広島地裁は、求刑通り懲役18年の判決を言い渡しました。
【広島地裁・國分進 裁判長】
「主文、被告人を懲役18年に処する」
海田町の徳永孝志被告(19)は去年4月、当時16歳と18歳の男女と共謀し、府中町の公園で女の援助交際相手だった東京都の男性に暴行を加えて死なせた後、財布を奪った罪に問われていました。
裁判では、少年法が適用される徳永被告を刑事処分とするか保護処分とするかが争点となっていました。
3日の裁判で、広島地裁の國分進裁判長は「被害者に強度の暴行や金品が奪われることを甘受すべき落ち度なく、被告人らの動機や経緯は身勝手であり酌むべき点はない」と指摘。
本件の重大性や悪質性は高く、「保護処分が許されるような特段の事情があるとは言えない」として、徳永被告に検察の求刑通り懲役18年の判決を言い渡しました。
ーー刑事法犯罪学などがご専門の広島大学吉中信人教授に伺います。判決をどう受け止めますか?
【広島大学法学部長・吉中信人教授】
「過去の判例とかから考えると、ほぼ予想通りの判決と思う」
■事件の構図
ここからは、徳永被告の裁判を取材した向井記者に伝えてもらいます。
【向井記者】
事件の相関図です。
犯行に関与したのは当時18歳だった徳永被告と当時16歳の少年、当時18歳の女の3人です。
当時16歳の少年が女が援助交際していた東京都の男性から金を奪うことを計画。徳永被告は3万円の報酬と引き換えに犯行に参加しました。
犯行当日は女に男性を呼び出させて、少年と徳永被告で暴行を加え、男性は死亡しました。
その後、現金8万円余りが入った財布を盗んでその場から逃げたということです。
■裁判では
徳永被告は「強盗致死」の罪に問われていましたが、裁判の争点となっていたのは。
「刑事処分、保護処分どちらが相当か」です。
「強盗致死罪」は刑法上は「死刑または無期懲役」と非常に重たい刑が科されます。
ですが、被告は当時18歳で特定少年だったため少年法が適用され、被告の生い立ちや更生の可能性が大人よりも考慮されて刑が減軽される可能性もあります。
そのうえでこれまでの検察側と弁護側の主張を、被害結果、動機などポイントに分けて見ていきます。
まずは被害結果についてです。
検察側は、犯行様態は極めて悪質で、被害者が死亡していることから結果は重大と指摘。動機については自ら報酬を決めていて身勝手であるとしています。
そして、犯行への関与については誘われたとしているが、自身の利益のために主体的に関与したと主張。以上のことなどを踏まえ、保護処分にする事情はないとして懲役18年を求刑していました。
一方、弁護側は、被害者が死亡した結果について、犯行に加わったものの殺意はなく、死亡は予想外だった。動機については報酬を目的に犯行に加わったが、幼少期に虐待を経験していて、心理的な弱さから断ることができなかったと主張。
犯行への関与は従属的な立場だったとしています。
弁護側は刑事処分ではなく、育て直しによる更生が期待できるとして保護処分を求めていました。
最終弁論で被告人はおよそ3分間、被害者や遺族などへの反省を述べた上で、成長するために少年院に行きたいという旨の発言もしていました。
3日の判決で広島地裁は、結果については重大性や悪質性は高い、動機は身勝手であり、酌むべき点はない。関与については積極的に関与し、少年に従属していない。
こういったことなどから、保護処分が許されるような特段な事情があるとは言えないとして、刑事処分が妥当と判断しました。
その上で、特定少年であることから、無期懲役から酌量減軽した懲役18年の量刑が相当であると結論付けました。
ーー吉中さん、この刑事処分の判断、それから懲役18年という量刑についてはどうでしょうか。法律家の観点からどのようにご覧になりますか?
【広島大学法学部長・吉中信人教授】
「弁護側としては、育て直しということで保護処分を主張していたが、やはり結果の重大性、悪質性、従属的とはいえ重い処分という意味では、懲役18年というのは妥当なところだったのではないかと思う」
ーー向井さんは全ての裁判を取材をしていましたが、裁判を見ていて何か感じたことはありますか?
【向井記者】
私は初公判から全ての裁判を傍聴していたんですけれども、両親や専門家の証人尋問や被告人の様子などから、被告人を取り巻く複雑な家庭環境が少なからず犯行に影響しているのではないかと感じました。今回、未然に犯行を防ぐことができなかったのか、周囲で支える環境が重要だなというふうに感じました。
ーーそうですね。ただ、一方で招いてしまった結果というのは重大なものだった。吉中さん、改めてこの少年の犯罪という点に関してはどのようにお考えですか。
【広島大学法学部長・吉中信人教授】
「今おっしゃったように、やはり未然に防止するということが一番大切です。やはり子供たちが育つ環境を整備していかないといけない。だけど、刑務所に入ってからも、いろんな改善指導、いろんな形でのサポートを受けられるので、ぜひ、もう一回育て直してもらいたい」
ーーそして今回の判決を受けて、弁護側は何も喋らないというふうにコメントしているようです。また、今後、当時16歳の少年の裁判も予定されています。吉中さん、この裁判も注目をされるわけですね。
【広島大学法学部長・吉中信人教授】
「こちらの方が殺意がある、あるということになれば、今この本件(徳永被告)の場合は殺意が落ちているので、まだ(懲役)18年ということなんですが、16歳とはいえ主犯格であったということになると、こちらの方がより重い刑が予想されるところです」
ーーこの16歳の少年の裁判に関しては、7月14日に初公判が行われ、7月29日に判決が出されるという見込みですが、吉中さん、改めてこの年齢を問わず、やってはいけないことはダメなんだっていう部分の認識、これ世の中がどう少年たちに伝えていくかっていうところが改めて問われていますよね。
【広島大学法学部長・吉中信人教授】
「少年法の改正によって、ある程度もう18歳、19歳になればということを言ってきているが、それでもまだ社会全体がやってはいけないことを、しっかりと伝えていかないといけないと思う」
