シリーズでお伝えしている「熱海土石流から5年」。3回目の7月2日は“天災”ではなく“人災”とも言われる土石流災害の責任と、違法な盛り土を規制する動きについて考えます。
関連死を含めて28人が犠牲となった土石流災害。
土砂は標高390m地点から2km離れた海まで流れ下り、多くの人の命、ふるさとを奪いました。
この熱海市の土石流災害は他の自然災害とは違う面を持ちます。
兄を亡くした小川泉さん:
僕が思っていることは、これは自然災害ではなくて人災
娘を亡くした小磯洋子さん:
これははっきりした人災なので、苦しみとか悲しみとかは、これからも死ぬまで続くんだろうなと
被害者の会・加藤博太郎 弁護士:
遺族としては、今回盛り土を行ってきた行為はまさに大量殺人に匹敵する行為だった
甚大な被害を招く要因となったのは、土石流の起点に造成され、崩落した“違法な盛り土”だったからです。
遺族たちは土地の元所有者らに対して殺人容疑などで、熱海市長に対して業務上過失致死の疑いで刑事告訴し、捜査は現在も続けられています。
記者(2022年12月):
不適切な盛り土が原因の人災だと原告側が主張する熱海の土石流。きょうからその責任について司法の場で審理が始まります
遺族や被災者が損害賠償を求め起こした民事裁判も行われています。
カメラマン(2026年2月):
伊豆山上空です。源頭部付近には裁判官らが集まってきており、これから現地の確認が行われる模様です
裁判官による現地視察が行われた他、当事者に対する尋問も行われ、裁判は2026年9月に結審、2027年3月までに判決が言い渡される見通しです。
被害者側・加藤博太郎 弁護士:
多くの遺族が裁判の傍聴に来ていたが、真実、それぞれの言い分が生の声として見えてきた。そこが遺族にとって一つの進歩。心のわだかまりを解くきっかけになったのでは。もちろんそれぞれの方が私たちの望むような証言をしてくれているとは思っていないのですが
一方、違法盛り土を造成したとして責任を問われている元土地所有者の男性は、まもなく7月3日を迎えることについて。
元土地所有者:
自分なりに気持ちを整理しながら、被害に遭われた人に対して敬意の思いを持ちながら過ごしたい
起点となった土地は、県が不安定な土砂を取り除きました。
約11億円の費用を男性に求める裁判は静岡県が敗訴し、控訴しています。
元土地所有者:
(土砂を)入れた人はすべて棚上げ、入れていない人をターゲットにした裁判。判決も税金で支払えとなっている以上、県民は怒りますわな
今後も続く警察の捜査、裁判に向けては…。
元土地所有者:
何があっても自分なりに自分の論理を主張していくしかない
遺族・被災者の弁護士は裁判で自分達が望む判決を期待するのと合わせ、今後への思いを語ります。
被害者の会・加藤博太郎 弁護士:
どんな事件でも風化していくが、今回の事件というのは歴史の中で、人災の歴史の中で1ページにしていかないといけない
熱海市の土石流災害を“教訓”とするため、行政も動きました。
2022年、県は“全国で最も厳しい”とされる独自条例を施行した他、翌年に国も危険な盛り土を全国一律の基準で規制する法律を施行。
違反した個人には3年以下の拘禁刑または1000万円以下の罰金が、法人には最高3億円の罰金が科されます。
不適切な盛り土を早期に発見するため、県は「盛り土110番」を設置。
毎年100件近い情報が寄せられています。
ドローンを操作するのは富士市土地埋立対策室の担当者です。
富士市土地埋立対策室・増田圭佑 主幹:
中に入ると草とかもあって、見えないところがたくさんあるが、ドローンを使うと上空から見えるので、土砂が崩れている箇所がないか、そういった場所の確認ができる
県が公表している不適切な盛土 計149件のうち、富士市内には県内最多となる25件の不適切盛土が存在します。
盛土が崩れていないか?新たな土砂や廃棄物が投棄されていないか?月に10回以上、パトロールを続けています。
ただ、建物を作るという行為が社会からなくならない以上、残土処分や盛土そのものがなくなることはありません。
県が公表する不適切な盛り土の数も大幅に減っているとは言えません。
県も、AIを使ったポスターやチラシを新たに制作するなどして、危険な盛り土を無くすための工夫を凝らしています。
富士市土地埋立対策室・増田圭佑 主幹:
二度と熱海のようなことが起きてはならないことが大事。少しでも違反行為に見えることがあれば、「すぐ直しなさい。こうですよ。安全基準がある。守りなさい」と指導をするようにしている
土石流の発生から5年。
人災なのか、責任はどこにあるのか、捜査や裁判の進展が待たれます。
それと合わせ、二度と悲劇を繰り返さないため、行政、住民、社会が力を合わせた取り組みが必要です。
