大地震の際、救急車は必要な11台に対して1台しかなく、10台足りない──災害時に何がどれだけ足りなくなるかを具体的な数字で突きつける、政府の新たな分析手法の概要が、関係者への取材でわかった。
「定量的弱部分析」と呼ばれ、防災庁が従来の被害想定の「次の一手」として導入を目指す。政府は29日に開く有識者検討会で、全国共通のガイドライン案の素案を初めて示す。
「何人が犠牲になるか」から「何が足りないか」へ
これまでの防災対策は、犠牲者、負傷者や関連死などの被害想定を出し、それを踏まえて対策を考えるのが一般的だった。だが、用意した対策が数のうえで足りているかどうかは、必ずしも検証されてこなかった。
新手法は、被害想定と対策づくりの間に、この分析を挟む。発災から救助、搬送、治療、避難生活までの流れを「対応フロー」として整理し、必要な人員や車両、病床などを項目ごとに「必要な量」と「いま用意できる量」で突き合わせ、その差を不足量として数値化する。この不足部分を「弱部」と呼ぶ。
素案は、モデルケースで具体的に示す。負傷者1200人を想定すると、緊急搬送に必要な人員48人に対し現状は22人であれば、26人が不足する。救急車は11台必要なところ1台しかなく、10台が不足。隣り合う市町村の負傷者が同じ病院に集中し、搬送見込み278人に対し、受け入れ可能な人数は260人にとどまり、病床が足りなくなる例も示された。いずれも手法を説明するための試算で、特定地域の実数ではない。
不足を「ものさし」に 対策の優先順位づけ
こうして判明する「弱部」には、耐震化や早めの避難の「自助」、負傷者搬送など地域の「共助」、医療チーム派遣や災害拠点病院の強化などの「公助」を組み合わせて対応する。
モデルケースでは、耐震化や早期避難で負傷者1200人・犠牲者21人を、300人・5人に抑え、さらに医療チーム投入や救急車の追加配備で不足を段階的に解消する流れを描く。自治体ごとの結果を消防本部や二次医療圏単位でつなぎ合わせ、広域での確認や応援計画づくりにつなげることも求めている。
政府はこの分析を、対策の優先順位づけや住民の自助・共助を促す共通の「ものさし」として活用したい考えだ。29日の会合では、救急・医療だけでなく避難生活や住宅再建も含めたガイドラインの素案を初めて示し、内容を詰める。
(フジテレビ災害対策チーム 百武弘一朗)

