6月は「小泉八雲月間」。
松江ゆかりの文豪、小泉八雲と妻・セツにスポットを当てたテレビドラマ「ばけばけ」の効果を観光に生かそうという取り組みです。
ドラマの終了から約3か月…その効果は意外なところにも及んでいました。
松江市内の書店では…。
櫃田優果記者:
書店の入り口近くに置いてあるこちらの本、タイトルは”思ひ出の記”。今、ドラマ効果で売り上げが好調なんです。
話題作が並ぶコーナーの一角に積まれている「思ひ出の記」。
小泉八雲の妻・セツが、八雲との結婚生活や自身の生い立ちを振り返った回想録です。
国内では1914年に出版された「伝記 小泉八雲」に短編として収録され、2003年に単独作品として出版されました。
その後は絶版となっていましたが、八雲の「怪談」出版120年に合わせ、2024年に新装版が刊行されました。
ドラマ「ばけばけ」の主題歌を担当した「ハンバートハンバート」も、この本から楽曲の着想を得たと明かしています。
出版したのは、松江市の「ハーベスト出版」。
ハーベスト出版編集担当・沖田知也さん:
ドラマが終わってからずっと変わらず全国からご注文いただいてまして、想像以上の反響でびっくりしてます。
「思ひ出の記」の編集担当・沖田知也さん。
今も注文が入り続け、発行部数は約2万2000部に。
歴代の最多発行部数は約1万部、社員20人ほどの小さな出版社にとっては異例の“ベストセラー”です。
社内には印刷室、追加注文に応えるため、印刷機が動いていました。
ハーベスト出版印刷製本課・谷口寧課長:
かなり忙しくて時間が…刷っても刷ってもでした。
ピーク時には、3日に1回増刷。
社員総出で対応に明け暮れたそうです。
ハーベスト出版装丁担当・宮廻由希子さん:
粘って粘って、結局5か月ぐらいかけて…調べたら2年前の5月から9月ぐらいにこの案に決まって。
表紙やカバーなどの「装丁」を担当した宮廻由希子さん。
採用されなかった表紙のデザイン案を見せてくれました。
「思ひ出の記」は著作権が消滅し、インターネット上で公開されています。
無料で読める作品をどうすれば読者が手に取りたくなるか…本の顔となる表紙デザインには頭を悩ませたそうです。
さらに、旧版にはなかった現代語訳や注釈を追加、若い世代も読みやすいよう工夫しました。
小泉八雲記念館・小泉凡館長:
ここまで買って読んでくださると思ってなかったので、驚きと、とても嬉しいです。
「想定外」の反響に驚くのは、小泉八雲記念館の館長、小泉凡さん。
小さな出版社に話を持ち掛けた理由を教えてくれました。
小泉八雲記念館・小泉凡館長:
(企画の)その時点ではまだ『ばけばけ』の放送は決まっていなかったんです。全く。そういうことがなくて、ただ小泉八雲記念館から話を持ち掛けてもなかなか出版には至らないと思うんですね。
出版を持ち掛けたのは「ドラマ」の放送が決定する前、セツの存在も広く知られているわけではありません。
ハーベスト出版・糸川和浩社長:
『これ本当に売れるのか…』というところがはっきり言って疑問に思ってましたので、この企画書は没にしようかという気持ちを正直持っていました。
二の足を踏みながらも話を受けたのには、地方の小さな出版社として「矜持」がありました。
ハーベスト出版・糸川和浩社長:
私たちがこうやって出版している本っていうのは、大手の出版社はなかなか出しづらい。そんなに売れないかもしれないっていうのが元々のスタートじゃないかなと思うんです。島根、山陰、この地域のものを全国に、あるいは世界に発信できたらいいなと思っております。
「思ひ出の記」の一件で思い出した大切なこと。
山陰の小さな出版社はこれからも、郷土に埋もれた価値ある本を世界に届けていきます。
