「本当に眠れない日が続いてきましたので、こんな半年を過ごすことはおそらく一生今までもなかったし、これからもないだろうな」――そう胸の内を明かしたのは、HS3プロジェクトチームのトップ、有田誠プロジェクトマネージャだ。2025年12月の打ち上げ失敗から約半年。再起をかけたH3ロケット6号機が2026年6月12日午前9時53分、鹿児島県南種子町の種子島宇宙センターから打ち上げられ、見事成功を収めた。
「一直線に宇宙へ」――白煙なき3本の炎が空を切る
打ち上げの瞬間を現場記者は「今リフトオフしました。一直線に宇宙に向かって突き進んでいきます」という言葉で伝えた。

今回の6号機は、コスト削減を目的として補助ロケットを使わず、メインエンジンを従来の2基から3基に増やすという初めての形態で打ち上げられた。そのため、これまでの打ち上げで見られた飛行機雲のような白い煙は姿を消し、代わりにオレンジ色に近い光を放ちながら3本の炎が一直線に空へと伸びていく、これまでとは一味違う光景が広がった。
機体はその後も順調に飛行を続け、第2段機体と搭載した6つの小型衛星を予定の軌道に投入。打ち上げは成功した。
全国から200人余りが集結、歓声が沸き起こる
打ち上げを間近で見ようと、南種子町の恵美之江展望公園には県内外から200人余りが駆けつけた。宇宙へと飛び立つロケットを見上げた人々からは、次々と感動の声が上がった。
千葉から訪れた人は「音が大きかった」と目を丸くし、東京からの来場者は「すごかった」「音がバリバリってこういう音が宇宙まで行くんだとすごく伝わった」と興奮を隠しきれない様子だった。広島からやってきた人は「感動した。やった!」と声を弾ませた。

種子島という地域に全国の宇宙ファンや関係者が集まり、ともに成功の喜びを分かち合う光景は、日本の宇宙開発が多くの人々に支えられていることを改めて示すものだった。
JAXA内でも、第2段機体が軌道に投入できたというアナウンスを聞き、涙ぐむ職員の姿が見られた。半年にわたる苦闘がいかに重いものだったか、その涙が雄弁に物語っていた。
「失敗が二度とできない」――プレッシャーを背負い続けた半年
2025年12月、衛星を乗せる台座の破損によりH38号機が打ち上げに失敗してから、有田プロジェクトマネージャは眠れない夜を重ねてきた。開発当初から10年以上にわたってH3ロケットに携わり、2024年4月にプロジェクトチームのトップに着任した有田さんにとって、この半年は特別な重さを持つものだった。
再起をかけた打ち上げを前にした5月24日、有田さんは「今回ですね、緊張ですね。失敗が二度とできないという意味で緊張感がやはりとても大きい」と率直に語っていた。「緊張か楽しみか」と問われて「緊張」と即答した言葉には、日本の宇宙開発を背負う者としての覚悟がにじんでいた。
そして迎えた打ち上げ当日、成功が確認された瞬間、有田さんは隣にいたJAXAの岡田匡史理事と笑顔で抱きしめあい、喜びを分かち合った。
「きょうはおいしいお酒を飲みたい」――関係者が笑顔で語った喜び
打ち上げから約3時間後、午後1時から始まった記者会見。打ち上げに携わったJAXAと三菱重工の技術者も笑顔を浮かべ、それぞれの思いを言葉にした。
有田プロジェクトマネージャは「短いようで長かった半年だったが、本当にみんなの努力でここまで、それからたくさんの方々のご協力でここまでこれた。きょうはおいしいお酒を飲みたいと思っています」と穏やかな笑顔で語った。
三菱重工の北山治H3プロジェクトマネージャも「3つのエンジンのノズルの中の白く輝きながら上がっていく姿を直接見ることができて、エンジニア冥利に尽きるというか、感動している」と声を弾ませた。長年ロケットと向き合ってきたエンジニアたちの言葉には、技術者としての誇りと深い感慨が込められていた。
成功率75%に回復、そして次なる挑戦へ
今回の成功によって、H3ロケットは8機中6機の打ち上げに成功し、成功率は75%に回復した。
一方、宇宙開発をめぐっては打ち上げ成功数でアメリカが大きくリードしている現状もある。有田さんはそうした状況を踏まえながら、冷静かつ力強く展望を語った。「ライバルたちは色々どんどん前にいる人もいるし、失敗する人もいるし、いろんな環境の中でそれぞれが奮闘している。国策ロケットで終わることなく日本の産業を支える形になったらいい」。
日本の底力と技術力を信じ、10年以上かけて育て上げてきたロケットが再び宇宙へ羽ばたいた。「こんな半年を過ごすことはおそらく一生なかったし、これからもないだろうな」と振り返った有田さんの言葉が、今回の成功の重みをあらわしている。
日本の技術者たちの意地とプライドをかけて挑んだ今回のミッション。その成功は、単なる一つの達成にとどまらず、また新たな挑戦へのスタートラインとなった。
(動画で見る▶H3ロケット6号機打ち上げ成功 再起をかけた挑戦)
