油の中で踊る黄金色の手羽先、低温でじっくりあぶられる笹かまぼこ――。鹿児島市の山形屋で6月11日、「東北6県 味と技展」が幕を開けた。初日から会場は大賑わいとなり、東北の食と工芸が鹿児島の街に活気をもたらしている。一方で、中東情勢の影響が生産現場に忍び寄るという、現実的な課題もあわせて浮かび上がってきた。
初出店9社を含む59社が集結、約900点が並ぶ
今回の催事には、初出店の9社を含む計59社が参加し、グルメや工芸品など約900点が会場に並んでいる。東北6県それぞれの個性あふれる品々が一堂に会するとあって、来場客は次々と足を止め、試食や購入を楽しんでいた。

「おいしそうなものがたくさんあってテンションが上がります」「(東北には)なかなか行く機会がないので、身近に感じられて行ってみたいなという気持ちになった」といった声が会場に響く。鹿児島にいながら東北の空気に触れられる場として、多くの来場客が足を運んでいる。

青森の朝市名物「しおてば」、宮城の笹かまぼこ…東北の味が次々と登場
会場でひときわ目を引くのが、青森県の朝市名物「しおてば」だ。油の中で踊る黄金色の手羽先が揚がった瞬間、香ばしい香りが周囲に広がる。提供する大安食堂(青森)の脇田貴子さんは「すごくジューシーな鶏なので皆さんに食べてほしい。皆さんのためにお値段も頑張って提供しています」と話す。

宮城からは、笹かまぼこ大漁旗の高橋友彦さんが本場の味を届けに来た。低温のコンロで中までじっくりとあぶられる笹かまぼこは、東北方面で水揚げされる高級魚「吉次」の身をふんだんに使った一品だ。「仙台本場の笹かまぼこをあぶりたてで提供したかった。焼き魚のような匂いもだんだんしてくるので、新鮮な魚を食べているような感じ」と高橋さんは語る。

山形県からは、かわいらしくて上品な「さくらんぼサンド」が登場した。山形県産のドライフルーツと米粉を使ったクッキーで、さくさくほろほろな食感とドライさくらんぼの甘酸っぱい味が魅力だ。のら農園(山形)の酒井正樹代表は「(鹿児島は地理的に)サクランボが遠い場所。映えスイーツが今はやっているので味もすっきりさせた」と開発の狙いを明かす。

忍び寄る中東情勢の影 包装資材の値上がりや調達困難が現実に
にぎわいの影で、生産現場には中東情勢に起因する問題が表れ始めている。
笹かまぼこ大漁旗の高橋さんは「資材、プラスチック製品、フィルムとかなかなか手に入りにくくなっているのが事実。原油が高くて漁に出る原油を調達できないと、今後が不透明なのが心配」と率直な不安を口にした。

のら農園の酒井代表も「包装資材の値上がりが20〜40%、(資材が)入らないことも起きているが、この催事に合わせて前もって準備していた」と語る。今回の催事への参加に向けて計画的に備えることで乗り切ったものの、先行きへの懸念は拭えない。

遠く東北の生産者たちが直面するコストと調達の問題は、鹿児島の食卓にとっても無縁ではない課題だ。
震災を乗り越えて進化した東北の食文化
来場客の中には、東北のものづくりの背景に思いを馳せる人もいた。「震災など大変なことがあった中で、おいしいものを研究して進化してきたことはすごいことと思う」という声は、会場全体に流れる温かな空気を言い表している。

東北の生産者たちが逆境の中で磨き続けてきた味と技が、鹿児島という遠い地でも確かに届いていることを、この言葉は示している。
「東北6県 味と技展」は6月17日(火)まで、鹿児島市の山形屋で開催されている。
【動画で見る▶東北の味と技が鹿児島に集結 鹿児島市・山形屋】
