流産や死産を繰り返す「不育症」という疾患があります。
妊娠の大きな喜びの後に流産等を告げられるという、「喜び」と「絶望」を繰り返すことになり、当事者の女性の心身の負担は非常に大きいものです。
天国から地獄へ落とされるような経験を何度も繰り返すことになります。
「妊娠できるのに、なぜ産んであげられないのか」といった自責の念にかられる場合もあります。
岡山大学の研究チームが、「不育症」の専門外来を受診した女性を調査した結果、91%の女性が、不育症の知識を「早く知っておきたかった」と答えたことがわかりました。
不育症の認知度の低さが浮き彫りとなるかたちとなりました。
今回、阿部一也医師(板橋中央総合病院 医長)に「不育症」について詳しく伺いました。
不妊症との違い
Q.どういう症状、状態を不育症と診断しますか?
定義では、「流産あるいは死産が2回以上ある状態」とされております。
Q.不妊症との違いは何ですか?

「不妊症」は妊娠が成立(着床)しにくい状態を指すのに対し、「不育症」は妊娠は成立するものの、それを維持して無事に出産に至ることが難しい状態を指します。
Q.原因にはどのようなものがありますか?
最も多いのは、胎児の染色体異常(約41%)です。
他に、抗リン脂質抗体陽性(約10.7%)、甲状腺機能低下や糖尿病などの内分泌異常(約12%)、夫婦どちらかの染色体均衡型転座(約6%)、子宮形態異常(約3.2%)などがあります。
Q.女性の何%程度が該当しますか?
妊娠経験のある女性の約4.2%〜5.0%が該当するとされています。
習慣流産(流産3回以上)に限定すると、約0.88%〜1.1%となります。
「不育症専門外来」での受診を推奨
Q.どのような検査をしますか?
非妊娠時に血液検査や画像診断を行います。
具体的には血液検査で「抗リン脂質抗体検査」「内分泌・代謝検査」「夫婦の染色体検査」、画像診断による「子宮形態検査(超音波、子宮鏡、子宮卵管造影など)」、そして流産手術時の「絨毛染色体検査」があります。
Q.どのような治療をしますか?

原則、原因に応じた治療を行います。
抗リン脂質抗体症候群には低用量アスピリンやヘパリン自己注射などの抗凝固療法、内分泌異常には薬物治療や血糖コントロール、子宮形態異常には手術療法などを行います。
Q.不育症は通常の産婦人科で治療できますか?また、受診される女性は多いですか?
基本的な検査やアスピリン処方などは通常の産婦人科でも可能ですが、詳細な凝固系検査、ヘパリン自己注射指導、遺伝カウンセリング、胎児染色体検査などは対応していないことが多く、その場合は「不育症専門外来」での受診が強く推奨されます。
最近では受診者は増加していると思います。
適切な治療等で80%〜85%の女性が出産
Q.流産や死産を経る前に、自分が不育症だと知ることは可能ですか?
基本的には知るのは難しいと思います。
不育症は自覚症状がなく、流死産を繰り返すという事実があって、初めて検査が行われるためです。
ただし、膠原病などの持病がある場合や、血縁者に染色体転座の保因者がいる場合、ブライダルチェック等で子宮奇形や甲状腺異常が偶然見つかった場合には、事前にリスクを把握できることはあるようです。
Q.不育症の治療を経て、何割くらいの女性がその後、妊娠・出産に至りますか?

適切な治療や管理、サポートを受けることで、最終的に約80%〜85%の女性が無事に元気な赤ちゃんを出産できています。
原因不明であっても、次回妊娠での出産率は非常に高く、予後は決して悪くないとされます。
1人目を出産後に不育症になることも
Q.1人目を無事出産した後に、不育症になることはありますか?
あります。「続発性不育症」と呼びます。
加齢による卵子の染色体異常の増加、1人目出産後の体質変化(甲状腺異常や糖尿病の発症など)、あるいは1人目の時は、たまたまリスク因子の影響を受けずに出産できていたケースなどが考えられます。
Q.検査や治療は保険適用されますか?
基本的な血液検査、子宮形態検査、夫婦の染色体検査、抗リン脂質抗体の治療、2022年4月からは流産手術後の胎児染色体検査などは保険適用です。
また、保険適用外(自費)の検査についても、国や多くの自治体(例:東京都では上限5万円など)で助成金制度があります。

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